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治らない風邪とアート島

冬の旅から帰ってきた後も、それがあまりにも濃密な時間で、あまりにも書きたいことにあふれていたために逆にだんまりしてしまいましたが、今回の四国旅行も同じ状態でございます…。丸六日間、とことん高松と徳島と過ごしました。

私は旅の計画を事前に立てることがあまり好きではなく、思い立ったときに勢いで宿やチケットをとってしまいます。というか、思い立ったときに行けないならもうそれはただのこなすべき仕事ぢゃん拘束ぢゃん…という気すらします。今回の四国旅行も、「そういえばどっか行けないのかな」と直前に思い立って調べてみたら意外と安く航空券がとれちゃったというドタバタっぷりでした。

それにしても、旅から帰ってしばらくの間「帰ってこれない」ことって今回がはじめて。留学から帰ってきたときは慣れ親しんだ家も他人の家の様で、ワンサイズ小さなジオラマの世界に投げ込まれたように感じたものですが、そういう激しい離人感が数日続きました。そして、こんなに旅先で愉しかった、思い出が沢山できたことも四国以外にございませんね…。本当に、本当に優しい場所でしたね。


四国への憧れのきっかけはやっぱりお遍路…そして作家の内澤旬子さんが小豆島へ移住されたことをエッセイに書かれてたことがきっかけでした。うろ覚えの意訳ですが、「気難しい自分からしても小豆島の人はオープンで優しく、心穏やかに過ごせる」というようなニュアンスのことを書かれていたのが印象的。しかし、船での移動に馴染みのない私にとって香川の島々は調べれば調べるほど遠き世界のようで、実際に足を運べる日が来るとは思ってもみなかった。行ってしまえば航空券であっさり、一時間…。まったく遠からずや四国…。


この記事も「風邪」なんかではじめているけれど、実は、遥か遠い旅先にまで行ってようやく「しこたま体調が悪かった」ことを実感させられたというか…それまで原因不明の睡眠障害が続いていたので、愉しいはずの日中もどうしても体が怠かったのですよね。思えば初日の直島では、過呼吸気味の苦しさが夕方まで持続したものでした。(良くも悪くも麻痺しているので、多少調子が悪くてもフルで愉しく動けちゃうんですけど…)それが、今ではそんな旅のはじまりのことなんて、すっかり忘れちゃいそう!


四国はアートが非常に盛んなところで(有名な草間彌生さんのかぼちゃがあったりする)、空間全体を利用した大規模な作品が多く、展示室で静かに絵を眺めるのとはまた違ったダイナミックな体験があるんですよね。山中千尋さんが「現代アートが大好き!」となにかにとてもとても熱く書いていたような気がするのだけど、もしかしてこんな体験のことを言っていたのかしら~とちょっと思った。

島を巡っては瀬戸内海の穏やかな絶景、アートに出会うことは、いつの間にか強い心の回復、エンパワーメントを促してくれたようです。アートって、こんなに直接的に、力強く人の心に働きかけるんだなと実感しました。贅沢なことに地中美術館も豊島美術館も前評判もロクに知らずに運よく予約がとれて行けたのですが、どちらも、本当に私にとっても特別な場所になりました。


これから四国には繰り返し帰るだろうから、こうなったら夢のお遍路も叶えようか、と色々調べていて、順番も無視した「区切り打ち」で、少しずつ旅しながら巡ろうかとも思っています。旅の計画なんて立てるの大嫌いだけど、こうなったら仕方ない…。夏の松山行きのチケットをとりました。天下のJALなのにLCC並みの値段でとれたわ…航空券は早くとらないと駄目ね…。

ああ、麗しの四国。次はどんな旅が待っているのでしょう。こんな言い方が許されるのであれば、情けなく性懲りもなく転んでこさえてしまった傷が、作らなくて良かったはずの傷が、大口をあけて血を流している、どうしても止まらない。こんな情けない心でも、また置いてくれるだろうか。「焼き鳥、今日はねぎまも阿波尾鶏ですけん!」「芸術祭には必ず帰って来てくださいね」。なにひとつこちらから聞かなくても、誰にでも親切を惜しまない人々。


たくさん絆創膏をいただいてきた割に、私はやっぱり帰って来てからもしつこい風邪をひき続けているのでした。大師様、お遍路にて健康になりとう存じます。(笑)あとモテモテにしてください…。

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