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アカデミー賞オリジナル脚本賞について雑感

先日第96回アカデミー賞が終わりました。壇上で色々と物議を醸す事象が発生したわけですが、自分は脚本のことしか分からないので、オリジナル脚本賞についての感想を記述しておこうと思います。

去年受賞した『Everything Everywhere All at Onceの時にもちょっと思ったんですが、ここにきて近年のオリジナル脚本賞のレベル落ちてないか?という疑いがますます強くなってきました。以下、受賞作と候補作(『Maestro』は見ていないので除外)の短評です。


受賞作『Anatomy of a Fall

雪山のコテージという設定と前半のサスペンス調に期待が高まりましたが、会話と回想でgdgd。とにかくストーリーが長過ぎてしつこい。これ2時間内で話がまとめられるんじゃないですか?見てる最中(もう早く終わってくれ)と思いました。脚本の構成は冗長だし発想の斬新さも無い、展開も「100億回見たよこのパターン」なので、何がオリジナルと評価されたのか知りたいです…。

ノミネート作品

The Holdovers

学校の問題児と歴史の先生が、学内でクリスマス休暇を共に過ごす話。問題児の生徒と先生、学校のカフェテリアマネージャーと主要登場人物のキャラは立ってて非常に魅力的なんですが、テーマがちょっと取っ散らかっているんですね。ネタバレは避けますが、家族愛なのか落伍者の再生物語なのか、ストーリーの焦点がブレててどっちつかずのままで終わってしまいました。ほのぼのテイストに色々重いエピソードを詰め込んで、収束が付かなくなってしまったような印象。

May December

 https://en.wikipedia.org/wiki/Mary_Kay_Letourneauこの事件を基にしたストーリーと言われています。そのせいかストーリーの歯切れが悪く、やたらセリフが意味深の割に、肝心なことは結局何も言ってないに等しい内容になってます。音楽で誤魔化してる演出も良くないです。ナタリー・ポートマンとジュリアン・モーアの演技は良いんですけどね。

Past Lives

アメリカで生活している韓国人女性のもとに、韓国で一緒に育った幼馴染が訪ねてきて24時間共に過ごす話。脚本の構成、テーマの掘り下げは候補作の中では一番バランスがよくまとまっています。ただ内容が小粒で私小説っぽく、脚本というよりは結構雰囲気で持ってる映画かな~と思います。ちなみにストーリーは、監督さんの個人的体験に基づくものだそうです。


全体的に言えることは「脚本の上手さ」をあまり感じないんですよね。懐古趣味ですが、ビリー・ワイルダーの『アパートの鍵貸します』やウッディ・アレンの『アニーホール』みたいに、「すごい!自分もこんなストーリーが書きたい!」と映画ファン皆が憧れを抱くような、そういうレベルが出てきて欲しいです…。
今は誰がいいかと言えば、私の好みではないんですがThree Billboards Outside Ebbing, MissouriThe Banshees of Inisherinのマーティン・マクドナー監督は、技術的に優れていて才能に長けた書き手だと思います。

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