ぼろこ

言葉と絵と音楽が好きです。2人の娘を育てています。

ぼろこ

言葉と絵と音楽が好きです。2人の娘を育てています。

最近の記事

これは手紙

文語調、いわゆる「である調」で文章を書こうとすると、どうもうまくいきません。文体がどうであれ、書こうとすることは同じはずなのに、慣れない靴を履いて歩いているように、言葉がつんのめってしまいます。 それはいったいなぜなのだろう、そもそも私がnoteで書いているこれは、いったい何なのだろうと、考え出したら止まらなくなりました。まず、小説や詩ではない。かといって、エッセイや随筆でもないし、評論やレビューでもない。日記というほど日々のことをつづっているわけでもない。自分で自分の書い

    • 何もかも忘れることがあの人の最期にくれた優しさだった

      休日に一家で、小高い山にある公園へ行きました。過疎地域なので、土日でも大抵の公園はさほど混んでいません。その日も自分たちのほかに、2組ほど幼い子を連れた家族連れがいただけでした。 この公園にある遊具は幼児向けのものが多く、娘たちは物足りなさそうでしたが、今回の目的は遊具ではなく、塔に上ることでした。長女が幼い頃にみんなで上った白い塔のことを、夫がふいに思い出し、それが夢か現実かよく分からないというので、一緒にいろいろ思い出をたどった結果、それはあの公園にあるあの塔ではないか、

      • 音楽スノードーム

        長女のスマホデビューがきっかけで、1年前にSpotifyのファミリープランを契約しました。長女と夫は、サブスクの特性をうまく使ってどんどん好みのアーティストを新規開拓しているようですが、私は契約して1年たった今も結局、CD時代と同じアーティストの曲ばかり聴いています。 私にとって好きな音楽は、スノードームに似ています。音楽が流れ出すと、心の底に沈殿していた感情が、スノードームの雪のように舞い上がって、また新しい感情として降り注ぐのです。その感覚が好きで、私は音楽を聴いていま

        • 私の好きな絵本

          下書きで書き溜めていた、絵本の紹介です。うちにある絵本の中から選んだ、私の好きな絵本です。思い付くままに書いていったので、順番にあまり意味はありません。 大人になってからも私が絵本を好きな一番の理由は、ユーモアあふれる絵と言葉を同時にたっぷり味わえるからです。つらい状況でも自分の心を守って生きていくために、ユーモアは欠かせないものだと思っていて、だから私は絵本に、どちらかというと道徳心よりもユーモアを求めます。 それからもう一つ、私は大人になってから絵本を朗読する楽しさを知り

        これは手紙

          唯一残った子育て方針

          人生は思いどおりにいかないことだらけだということを私が本格的に思い知ったのは、大人になり自立してからでした。とくに子育てが始まってからは、びっくりするほど落とし穴だらけで、思いどおりにいったことのほうが少ないくらいです。失敗を繰り返しながら育てていく過程で、思い描いていたいくつもの理想的な子育て方針を諦め、独り善がりな「こうあってほしい」を捨て、気付けば上の子は中学2年生、その横顔からは、親の思いどおりになどなってたまるか、という気概すら感じます。 そんななかで、まだ諦めな

          唯一残った子育て方針

          note

          noteで、好きな文章を書く人たちの新着記事を読むのが、日々の楽しみのひとつになっています。ここには本当にたくさんの文章があり、好みの文章を見つけるたび、思考の深さや表現力の豊かさ、巧みな構成に圧倒されるばかりで、なんだか読めば読むほどに、自分が書きたいようなことは、自分が書かなくても、自分以外の誰かが上手に書いてくれているのだから、自分はこのまま読む専門になるのもいいなあ、と思えてくるほどです。しかし、それではやっぱり何か物足りない、私もみんなみたいに何か書きたい、と揺れな

          仕事

          年末から繁忙期でずっと忙しかった日々が、少し落ち着いてきた。在宅で文字起こしの仕事を始めて、今年で12年目になる。会議や講演会やインタビュー、番組、裁判用資料など、さまざまな音声を打ち込んで文字にする仕事だ。 打ち込みながら、分からない単語が出てくるたび検索し、打ち終わったら最初から聞き直して聞き間違えや聞き落としを確認し、最後は全部読み直して、誤字脱字、表記の揺れなどの確認をする。地味な作業の繰り返しで、長時間作業していると、目も肩も腰もガチガチになる。特に音質のひどいとき

          太宰治とまふまふ

          中学生のころ『人間失格』を読み、ああこれは私のことだ、と打ち震えて以来、太宰治は私の一番好きな文豪だ。この人だけは私の暗い部分を分かってくれる……そんな甘く苦しい幻想を抱かせてくれる巧みな文体が大好きで、読むたび恋する気持ちになる。 20代前半のころ、太宰治を好きと言うと、訳知り顔で「そういうのに傾倒しがちな年頃だよね」というようなことを言う人がいて、何となく嫌な気持ちになったものだが、アラフォーの今でもちゃんと変わらず大好きだということを、声を大にして言いたい。 そして、今

          太宰治とまふまふ

          東京が大好きだった

          何かを少し書きかけては諦めて、下書きばかりがたまってしまった。日々のことを書こうとしても、これといって書きたいことが浮かんでこないのは、自分の日常に誇りを持ち慈しむことが、うまくできていないからだろう。だから、今日の出来事や思いを文章にしたいという欲求がなかなか湧いてこなくて、辛うじて浮かぶ今日一日の感想は、「まあ、ふつう」という具合。 東京に住んでいた頃は、自分の日常の中にいくらでも書きたいことがあって、日々しゃかりきにブログを書いた。大学時代から10年間、いちばん元気い

          東京が大好きだった

          だれかへ宛てた歌

          さらけ出す覚悟を君がしたならば長く愛する準備をしよう 落ち着けよ泣かれちゃったら軽薄に笑い飛ばして許したくなる 大丈夫じつはそれほど好きだったわけじゃないから嫌いもしない ふたりとも夢の中では若いまま目も合わせずにじゃれ合っている うやむやなままでいましょう誰だって生まれながらの悪人じゃない 背を向けて時間をかけて洗濯をたたむあいだに謝りなさい

          だれかへ宛てた歌

          娘たちの選ぶ絵本ベスト5

          先日絵本の話をここに書いたら、ますます本棚の絵本たちが愛しく思えてきて、娘たちに、「本棚にある絵本の中で、現時点の特別好きな絵本ベスト5を挙げるとしたらどれ?」と聞いてみました。ふたりは「急に何?」と言いながらも、楽しそうに選んでくれて、その結果がとても興味深かったので、ここに記録します。 長女『太陽へとぶ矢』ジェラルド・マクダーモット 長女は小さいころからこの絵本がやけに好きで、結構大きい子向けの内容に思えたので、なぜこの絵本が彼女にとって特別なのか当時はとても不思議で

          娘たちの選ぶ絵本ベスト5

          こういう人間

          自分の目の前にいる人を、いい人だと思い込みたがってしまう、全力で信頼したがってしまうところがある。スーパーのレジですら、それが発動してしまうから、ちょっとそっけない対応を取られただけで、大きなショックを受ける。そして、攻撃的な気持ちになる。もちろん本当に攻撃はしないけれども、心のなかで毒つく。勝手に期待しておいて、いい迷惑だ。 よくいわれるように、「いい人」というのは自分にとって都合のいい人でしかないわけで、実際、みんなそれぞれ事情を抱えて生きていて、都合のいい人でいられる

          こういう人間

          今、楽しく見ているドラマたち

          ピントのぼやけた私の心を生き生きと元気にしてくれる力の源、それはドラマ。楽しみなドラマがあるだけで、一週間が一段の五線譜となり、一日一日が音符になって、日々をすべらかに奏でるのです。 今、日本のドラマで楽しく見ているのは、『光る君へ』、『不適切にもほどがある』、『Eye Love You』の3本です。 始まる前から楽しみにしていた『光る君へ』は、期待以上のわくわくどきどきをくれています。オープニングから麗しい物語の世界に入り込んで、毎週あっという間に終わってしまいます。こ

          今、楽しく見ているドラマたち

          絵本とCDどうしよう問題

          本棚に並ぶたくさんの絵本を、気付けばちっとも読まなくなった。 娘たちが小さいころは、それを口実にして、古本屋を巡ってはどっさり絵本を買って帰った。最高に楽しい買い物だった。絵と文字と声を同時に味わえる絵本には、生きる力がみなぎっている。いい声をつくって、心を込めて朗読すると、心がふくふく満ち足りてくる。本棚に絵本のある風景が大好きで、絵本が増えるごとに幸せだった。 小さいころは、毎晩寝かしつけに絵本を読み聞かせていた。子どものためというよりも、ほとんど私の自己満足だ。寝る前

          絵本とCDどうしよう問題

          大切にされないなら大切にしない

          この人、私のことそれほど大切じゃないんだな、と、気付いてしまう瞬間があって、そういうとき、胸の奥が、ずんと痛む。もう私は若くないけれど、その痛みの強さと重たさは、少女の頃と変わらない。むしろ、若い頃ほど跳ね返す力がないぶん、悲しみが長く尾を引く。 自分を大切に思われていないという実感は、生きる力を著しく削ぐ。私にとってとても深刻な痛みだ。そういうことが続くと、誰かを大切に思うのが怖くなるし、自分自身のことも、大切に思えなくなる。だからいつの頃からか、私は自分の心を守るために

          大切にされないなら大切にしない

          おかあさんといっしょ

           幼いころからの習慣で、子どもたちの朝にはEテレが欠かせない。10分刻みで移り変わる番組を時計代わりにしながら準備して、『みいつけた!』のオープニングとともに次女が出発し、エンディングの流れ始めるころ長女が出発する。  子どもたちを送り出してから、自分の朝食を準備して、ほっと腰を下ろすと、付けっぱなしのテレビでは『おかあさんといっしょ』が始まっている。NHK朝ドラの時間まで、それをぼんやり眺めながら朝食を食べるのが、私のお決まりパターンだ。子どもはとっくに対象年齢を過ぎてしま

          おかあさんといっしょ