吾亦紅

写真と、息子(二歳♂)が描いた絵を載せることが多いです。最近は、描いてくれないけど。

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雨の日のクセ

昨日から降り続けた雨が、朝になって止みました。 雨の日は、リビングの窓から半透明の日差しが差し込みます。まるで水晶の中にいるかのような、静謐な光です。 外へ出ました。雲間から光が漏れて、少しずつ晴れ始めているものの、肌には湿り気が付きまといます。 わたしはイエローモンキーというバンドが好きで、雨が降るとよく「エヴリデイ」を口ずさみます。 とはいっても、毎回ではありません。今日は、無意識に歌っている自分に気づいてビックリしてしまいました。久しぶりだったのです。 わたしの

    • 人生に三島由紀夫が現れたとき

      わたしの人生に三島由紀夫が現れたのは確か、小学校高学年くらいだったように思う。 当時わたしははやみねかおるさんの『名探偵夢水清志郎シリーズ』と『怪盗クイーンシリーズ』が大好きであった。本を開いて布団にねそべりながら読みふけり、お腹がよじれるほど笑らわせてもらったものだ。だが、既刊本を全て読み終えると他にもう読むものがなくなって手持ち無沙汰になった。 この二つの作品は「青い鳥文庫」という児童向けのレーベルから刊行されていたので、次第にわたしは同じ青い鳥文庫の他作品に手を出す

      • 三歳児の問い

        「どうして時間は経っちゃうの?」 最近の息子はそんなことを聞いてくる。 どうやら時の流れが解せないらしい。 ことの発端は、近所にある老朽化した一軒家を息子が目に止めたことから始まる。「どうしてあのお家は壊れているの?」 わたしは答えに詰まったけれど、難しく考えずとも、人と人との会話のように、気軽に話せばいいやとこう答えた。 「時間が経っちゃったからだよ」 その答えに納得がいったのかいってないのか、多分いってないだろうけれど、彼はなにか壊れたものを発見するたびに、どう

        • ディフェンス

          ナボコフの『ディフェンス』を読みました。 面白かった〜。 まず前書きの切れ味が最高で、さすがナボコフだな……(笑)と笑ってしまった。 『ディフェンス』はチェスの物語ですが、じつのところわたしは、チェスについては殆ど何も知りません。 実力といえば、iPhoneのチェスゲームアプリにおいて、相手がレベル1の敵であっても引き分けになってしまうほどの最弱プレイヤーです。 さて、いささか興奮しながら本編を読み終えて、若島正さんの解説を読みました。(ナボコフ愛に溢れているなと思いな

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        • 好きな記事
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          目が眩むほどに

          わたしは山が好きだ。夏になるとしょっちゅう行く。特に川が好きで、川のせせらぎを聞いて、虫の鳴き声を聞いて、緑の木漏れ日を眺めたりしていると、芯から安心するというか、わたしはきっと山から生まれたんだろうとさえ思う。この世に生まれてはや数十年、気づいたこと、わたしのこの存在は山の一部であるということ。小指の爪。あるいは垢。落ちた髪の毛の先っちょ。それがわたしです。 ワーズワスというイギリス人の詩を読んでいる。最近は本が読めなくて、音楽も聴けなくて、文字アレルギーが出てすこぶる不

          目が眩むほどに

          『ロリータ』を読んだので

          ウラジーミル・ナボコフの『ロリータ』を読んで胸が震えたので、もう少しだけちゃんとした理解を得たいと思い、再読しました。その感想です。   『ロリータ』とは   『ロリータ』という小説は、本作の主人公(どうやら罪人っぽい)が記した手記という形式をとっています。言うなら、「クレイジーなおじさんの、めっちゃ長い独り言」です。その内容は主に、とある少女とのありし日々を中心に展開されていきます。 おじさんことハンバート・ハンバートは、博識でありながら、心臓に持病があり、また精神を

          『ロリータ』を読んだので

          夜桜を見に

          子どもの入園式も(なんとか無事に)終わり、慣れない環境に戸惑いながらも、ゆっくりと平穏な日々が戻ってきています。 河川敷近くの公園へ夜桜を見に行きました。 屋台がいくつか出ていて、祭りは大いな賑わいを見せていました。桜は見事な美しさです。ベンチに座る人、草地に座り込む人、中にはレジャーシートを広げて、折り畳みテーブルを持参している人も。 わたしは園内をぶらりぶらりしながら、三島由紀夫の文体でこの情景の描写を読んでみたいなと思いました。きっと綺麗でしょうね。 息子は、屋

          夜桜を見に

          シカゴ詩集

          いつも子どもを寝かしつけてから家事をしたり内職をしたり本を読んだりするのだが、昨日は疲れていたのか、寝かしつけと共に自分も寝入ってしまった。 長く寝たせいか、優しい夢を見た。 夢の中のわたしは、まだ子どもである。手をひく母もかなり若い。場所はおそらく地元だろうと推測する。日が射すと風景が霞む、平凡な住宅街。わたしの記憶の中の地元が、忠実に再現されていた。 まだ若年のわたしに、何故ふるさとへの感傷があるのかと言えば、たった九年間しかそこに住んでいなかったからだ。高校進学と

          シカゴ詩集

          ありがたき人々

          春休みである。三歳になったチビを連れて遊びに出かけた。自然豊かな公園で、川が流れていた。夏には水遊びができそうだと思った。 昨日の深夜に『ロリータ』を読み終えて、ほんといい作品だったとしみじみとした余韻に浸っていた。 そんなわたしの心をよそに、日常は流れていく。息子にジュースを買い、自分にお茶を買う。いちごミルクを手に持ち、これを川辺で飲みたいとチビが言うので、土手から降りる場所を探していたところ、散歩中のおじいさんと出会った。川面に近い場所を尋ねたら、答えと同時になんと

          ありがたき人々

          白木蓮を撮る女

          自宅の横に狭い車道が通っていて、その通りを挟んだ向かいに小学校が建っています。正門の近くに白木蓮の木があって、知らないうちに綺麗な花を咲かせていました。 わたしは腕を伸ばしてスマホで写真を撮っていて、するとその後ろを近所のレンタカー屋の従業員さんが通って行きました。よほど物珍しかったのか、何度も振り返ってこちらを見ていました。そんなに奇妙かな? わたしの姿? 運動不足なので、夕飯食べたあとちょくちょく走るようになりました。真っ暗な土手から眺める街の明かりが綺麗です。 最

          白木蓮を撮る女

          プチ家出の参考例

          些細なことが積み重なって、家出をした。頭中の理性を総動員して、何とかその場は堪えたけれど、旦那から「ブチギレた顔をしているよ。なにかあったの?」と聞かれた。この場合の「なにかあったの?」は、なんというか、形式的なもの。旦那は薄々気づいているだろう。わたしもこれまで、散々言ってきたことであるので、今更言わなかった。ただ夕飯の支度して、一晩泊まる準備をして、財布を持って家を出た。 駅前の陸橋では、三組くらいのミュージシャンがギターを弾きながら歌っていた。彼らのお友達と思しき人た

          プチ家出の参考例

          ヘッセ愛

          今日はすこしばかり辛いことがあって、って、記事を書くたび、似たようなことを言っている気がしますが。 そんな日はヘッセを読みます。新潮文庫の『ヘッセ詩集』です。ヘッセの言葉はほんとに素晴らしい。ヘッセの言葉が素晴らしいのか、ヘッセそのものが素晴らしいのか、分かりません。ですがわたしは、ヘッセの言葉なら書物に収められているものも、収められていないものも聞きたいし、読みたいです。 この友だちって、いわゆるわたしたち読者のことと解釈してもいいのでしょうか。まあ、好きに解釈することに

          ヘッセ愛

          所用(野暮用?)があって、関西に行きました。海がありました。ひさしぶりに関西弁を聞きました。わたしは関東に住んでいて、わたしの周りで関西弁を喋るのは夫と息子(三歳)だけなのですが、ふたりともしょせんエセ関西弁なんですよね。今回は純粋な関西弁を聞きました。ことばが同じだと、心理的な距離の近さを感じます。だからか、自分の心身の置き方?というか、バランスみたいなのが不安定になってしまって、すこししんどかったです。関東では、他者と(心の)距離を置いて会話をするのが当たり前になっていて

          数学者の朝

          たしかに本を探しているはずなのに、現に本屋さんにはこんなにも本が溢れ返っているのに、なぜか読みたい本に出逢えない。 そんなときに出会った詩集が『数学者の朝』でした。作者はキム・ソヨン。帯には、「語りえない物語のために」。 装丁は、表紙が全面銀色で、白い花を啄む青いトカゲ(ヤモリ?)の絵が描かれています。とても印象的で思わず手に取ってみました。レジに持って行ったら、一冊2000円ちょっとしてびっくりしてしまいましたが。 詩集は第一部から第五部+解説+訳者あとがきによって成り立

          数学者の朝

          ギルガメシュ叙事詩

          立春を過ぎたとはいえ、ずいぶん暖かい気がします。わたしは春が苦手です。ぬるい大海にぽんとひとり放り込まれた気持ちになるといいますか。とりつく島もなく溺れるしかない心境に陥ります。でも、桜は好きですし、殆どすべての草花が好きなので、とくべつ嫌いな季節というわけではありません。花の匂いが立ち込め、彩りを楽しませてくれる季節は、やっぱり春が一番です。 ですが、このように心身のバランスが崩れたときは、ありとあらゆる言葉が受け付けなくなったりします。文字を介した言葉も、声を介した言葉

          ギルガメシュ叙事詩

          継続の先にある世界

          dir en greyのリーダー薫のインタビュー記事を読んでいた。彼の文章を読んでいると、dir en greyの活動が26年も続いているのはひとえにこの人の考えが根幹としてあったからなのだな、ということがよく分かった。 続けることを目標とすることは大切である。家庭もそうだ。最初こそ夫婦はふたりきりで仲良くやっていけるものの、年月が経てば色んな問題が浮き彫りになって、ときには安寧からは程遠い状態に陥ることもある。 バンドも同じではなかろうか。メンバーの性格や、方向性の違い

          継続の先にある世界