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小説/ドラマ/商品レビュー

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記事一覧

あなたは本当に「正しい」のか/『正欲』

あなたは本当に「正しい」のか/『正欲』

朝井リョウ著『正欲』を読んでいます。

「共感」とか「分かる」とかいう言葉は、安易に使えないし使うべきではない、けれども、この小説を半ば辺りまで読んだ時点でわたしが一番近しく感じた登場人物は、桐生夏月です。

彼女とわたしの共通点は、自分の悩みを誰かに伝えたところで分かってもらえることはないという諦念と、その結果としての沈黙にあると思います。

例えば、自分が正しい形の循環に適した人間ではないこと

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生理用品の話をするよ②シンクロフィット考/男子の皆さんも寄ってって

生理用品の話をするよ②シンクロフィット考/男子の皆さんも寄ってって

シンクロフィットの話は以前、いたしました。

いたしましたがあれから1年、結構使いこんだので、もう少しだけ具体的にレビューを書こうかなと思います。

シンクロフィットの1番の難点は、ポジショニングです。

試行錯誤の結果、わたしは仕事(デスクワーク)のときは前寄りに、それ以外はやや後ろ寄りに装着しています。

それまで特に意識していなかったのですが、仕事中は割と前のめり気味で腰掛けているらしく、普

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『女たちの避難所』は日本版『カラーパープル』かも

『女たちの避難所』は日本版『カラーパープル』かも

なぜ『カラーパープル』を読んでみようと思ったのだったか。

映画化(…というか38年前に既に映画化されており、このほど全面リメイク版が放映された)のニュースを見て、あらすじに興味が湧いたからだったか。

なぜ『女たちの避難所』を読んでみようと思ったのだったか。

垣谷美雨作品を読んだことはなかったから、本屋さんか雑貨屋さんで平積みされているのを見かけたのだったか、たまたまニュースか誰かのレビューを

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寛容になりましょう、でいいのか/不適切にもほどがある!

寛容になりましょう、でいいのか/不適切にもほどがある!

如何ともしがたいモヤモヤを抱え、ときに我慢しきれずそれを放ちつつも、最終話まで何とか観たドラマ「不適切にもほどがある!」について。

…とは言えドラマ鑑賞中ずっと不愉快だったわけでもなく、人生の最終回が決まっていることの切なさに感じ入ったり、昭和/令和あるあるにクスリとなったり、令和にタイムスリップしていた主人公が元の時代に戻り、かつて昭和に生きていた頃には当たり前だった当時の常識に疑問を呈する場

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闘う女でありたい/『風よ あらしよ』

闘う女でありたい/『風よ あらしよ』

『風よ あらしよ』を読みました。

女性活動家、伊藤野枝の生涯を綴った小説で、基本的に野枝の視点から描かれていますが、時折語り手が周囲の人々に移ります。

家族やパートナー、
『青鞜』の面々、
同志や友人、
最終的に野枝を粛清した憲兵も
次々と、心の内を語ります。

こういう形式の小説、好き。

別の視点から同じ事柄を見つめると全く異なる話に結実するという発見と、この多種多様な人々の独白を1人の作

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ふてほどは多数派の物語、だからモヤモヤするのかも

ふてほどは多数派の物語、だからモヤモヤするのかも

不適切にもほどがある!(通称:ふてほど)というドラマについて、先日「中2男子には昭和がよく見えるのかもしれないけど、わたしは絶対戻りたくないし、まじで無理」という記事を書きました。

若い頃から、数々の宮藤官九郎作品で励まされてきたわたしは、このドラマに第1話からずっと大いなるモヤモヤを抱きながらも視聴し続けてしまい、でも夫以外の周りの人々は大体「クドカン面白い!」「最高!」論者で、わたしの感じた

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一生見てたい/作りたい女と食べたい女

一生見てたい/作りたい女と食べたい女

滋味深くやさしく、しみじみと美味しいものをいただくと、ああこれ、永遠に食べていたい、点滴のようなものでずっと口内に送り込んでいたい、と思うことがあります。

夜ドラ「作りたい女と食べたい女」はわたしにとってその、ドラマ版と言えます。

シーズン1では「仲良しのご近所さん」という間柄だったお2人が、どうもお互いに惹かれあっているらしいという展開を感じさせつつあるシーズン2、野本さんと春日さん双方のお

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「同じくらい性格の悪い」という友愛

「同じくらい性格の悪い」という友愛

毎日のnote更新をやめてから、以前ほどは頻繁にnoteを開かなくなりました。
おかげ様で読書量が増え、それはそれで楽しい日々を送っております。

以前、ゼクシィのCMで「結婚しなくても幸せになれるこの時代に、私は、あなたと結婚したいのです」って、ありましたよね。

あれ、よかった。
ララってなった。心が、ララって。

noteがあっても楽しい
少し距離が出来ても、それはそれで楽しい

それが、理

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中2男子には昭和、いいのかも(だがわたしは無理)/不適切にもほどがある!

中2男子には昭和、いいのかも(だがわたしは無理)/不適切にもほどがある!

違和感。

このドラマを見ながら、あ、そういうことなの?そういう方向性なの?令和のコンプライアンスめんどくさい、昭和礼賛的な感じなの?

あー…

と思いました。

家でも学校でも公共交通機関でも
ところ構わず四六時中タバコをスパスパ吸い
セクハラやパワハラが横行し
(というかハラスメントという概念が無く)
抗議すると「愛のムチ」という言い逃れが通り
声を上げる側が煙たがられ疎まれ潰される

わた

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共に暮らすには1分間の努力が要るのかも/いっぱしの女

共に暮らすには1分間の努力が要るのかも/いっぱしの女

氷室冴子著『いっぱしの女』を読みました。

このエッセイがすごいのは、初出は1992年なのに、今読んでもほとんど引っ掛かりがない、どころか共感する部分があり過ぎるところです。
読みながら何度も、あれ?となって刊行年を確認しました。

時代の隔たり故の考え方や発想や思い込みに
ギョっとしてしまうことが、無い。

(差別語は登場するけど、排他意識は感じない)

以前も書きましたが
それはとても、稀有な

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M-1の流れは絶えずして

M-1の流れは絶えずして

いやーとんでもないもの見た。

※あとから配信で見る人もいるらしいと聞いたので念の為、決勝のネタバレは基本的に無しで感想を書こうと思います。ポンピーン。

M-1グランプリ決勝って、ネタとネタの間の引き伸ばしが冗長に感じられるイメージがあったので、年賀状でも書きながらのんびり見ようかなと思っていたのです。

実際、例年ですと
3時間、長いなー
このコンビ、あんまり面白くないなー
とか思いながら

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美鳥を見つけた4人、だったのかも

美鳥を見つけた4人、だったのかも

ドラマ「いちばんすきな花」についてのグルグル思考が、止まりません。

このドラマを見た人の感想って
二極化しそうだなと思います。

なんか被害者ぶっててめんどくさ
繊細かよ笑
と思う人と

わかるーわかり過ぎるー
ありがとう泣
と思う人に。

note以外のSNSしてないし
友だちも1人しかいないし
ドラマを録画して見る以外
ほとんどテレビも見ないし

だから世論というものを
わたしは知る由もない

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「生理のおじさん」を見たら、なんかちょっと泣けてきた

「生理のおじさん」を見たら、なんかちょっと泣けてきた

「生理のおじさんとその娘」という、そのタイトルからして既に気になっていたのに見逃したドラマが、再放送されていたので見ました。

さすが再放送の鬼、NHK。
迂闊なわたしは、いつも助かっています。

途中、登場人物たちが急にラップバトルをする場面が出てきて、いやいや無理だろ、急に韻踏めないだろ、言葉紡げないだろと思いました。

この場面に自分も居合わせたらと想像し、にわかに胃が痛み手に汗が滲むほど緊

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サイゼと向き合う、ということ

サイゼと向き合う、ということ

みんな大好きサイゼリヤ。

サイゼリヤだったかサイゼリアだったか忘れて、検索してああそうだったと納得するも、また次の機会にはサイゼリヤだったかサイゼリアだったか分からなくなるサイゼ。
(正解はサイゼリ「ヤ」)

物価高の昨今、¥1,000あればフルコースいただける、お財布に優しいサイゼ。

意外とプリンとかティラミスとかアイスもちゃんとおいしい、サイゼ。

そんなサイゼには今日も、老若男女が詰めか

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