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Loyle Carner 『hugo: reimagined (live from The Royal Albert Hall)』(2024)

Loyle Carner 『hugo: reimagined (live from The Royal Albert Hall)』(2024)

10/10
★★★★★★★★★★
2022年の3rdフル『hugo』は、kwes.とのタッグを軸に、サウスロンドンシーンを代表するミュージシャンを多数招いて作り上げた、オルタナティヴヒップホップ・ジャズラップの傑作であった。自身のルーツや父親への複雑な思い、不条理な社会構造についての歌詞もいちいち表現が芯を食っており、アーティストとして一皮も二皮も向けた力作にして、全てのピースがはまった大傑作であ

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Wojtek The Bear 『Shaking Hands With The NME』(2024)

Wojtek The Bear 『Shaking Hands With The NME』(2024)

7/10
★★★★★★★☆☆☆
2016年に結成されたグラスゴーのソフトポップバンド、3枚目のアルバム。

晴れた日曜日に木立の中を自転車で駆け抜けるような、その後シャワーを浴びてソファーで休んでいる時にレコードで流したくるような、とても爽快で心地よい音楽。

プリセットまんまっぽいシンプルなリヴァーヴをかけたクリーンなギターとアコギの刻み、メジャー7thの洒脱な響き、ヴァイオリンの上品な雰囲気、

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One Step Closer 『All You Embrace』(2024)

One Step Closer 『All You Embrace』(2024)

8/10
★★★★★★★★☆☆
やっとリリースされたセカンドアルバム。メロディックハードコア、エモコアに分類されるペンシルヴァニアのバンドで、Have Heart (中心人物Patrick FlynnはFiddleheadの結成者)やTurnstileのサポートを務めたところから私は知った。

2021年のデビュー作『This Place You Know』は10曲28分のいかにもなメロディックハ

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Jordan Rakei 『The Loop』(2024)

Jordan Rakei 『The Loop』(2024)

8/10
★★★★★★★★☆☆
これまでの彼の作品には、直接的な気持ちよさの前に一枚カーテン/フィルターがかけられているような、頭でっかちで今一つ肉体性に訴えてこない感覚があった。特に前作『What We Call Life』(2021)はそれが強く、細かいシンセを積み重ねたサウンドは技巧的ではあったが、せっかくのスムースなボーカルが阻害されているような感じがあった。何が彼の良さなんだっけ。よく分

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Adrianne Lenker 『Bright Future』(2024)

Adrianne Lenker 『Bright Future』(2024)

8/10
★★★★★★★★☆☆

またしても完璧な作品。2020年のソロ『songs』『instrumentals』、2022年のバンド作『Dragon New Warm Mountain I Believe In You』、そして本作と、完全にゾーンに入った圧巻の作品が続く。

『songs』は悲しみと絶望のコレクションだったが、本作は逆に「リラックスした雰囲気の中で何も追求しないことを追求した

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Lo Moon 『I Wish You Way More Than Luck』(2024)

Lo Moon 『I Wish You Way More Than Luck』(2024)

7/10
★★★★★★★☆☆☆
Talk TalkやPeter Gabrielに影響を受けた丁寧で上品なインディアートロック。この手のバンドは2024年も一定数いてどのバンドも知的なサウンドを作っているが、その中でもこのバンドの完成度の高さはデビュー作の時点から圧倒的に抜きん出ている。

音は1st, 2ndとほとんど変わらない。主張は強くないが多彩な音色を使い分けるドラム/打ち込みと基本に忠実な

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MGMT 『Loss Of Life』 (2024)

MGMT 『Loss Of Life』 (2024)

6/10
★★★★★★☆☆☆☆

5th。普通なら使わない変なエフェクトや脈略のない音や奇抜なミックスバランスを駆使して独特のサイケデリアを産むのはThe Flaming Lipsなどから受け継いだUSインディロックのアイデンティティ。それは1stからずっと続いているので今更変わりようもない。彼らに取ってはこれが当たり前で、変える変えないの話ではないんだと思う。

それでもさすがに大人になったとい

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Real Estate 『Daniel』 (2024)

Real Estate 『Daniel』 (2024)

9/10
★★★★★★★★★☆

春の風は迎える者への駆け足ではないし、拒む者への面当てでもない。自ら来て、自ら往く、自然の意だ。物憂げに俯く者の心うちなど遠慮無しに通り過ぎ、春の街へと吹き込む。草原を走る春の水は幅を変えながら春の海へと流れ込む。私たちがいてもいなくても、春の風は変わらず海を越え世界を意のままに吹き渡る。いつまでも。

本作が珠玉のギターポップであることは論を待たないが、何より歌

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The Pineapple Thief 『It Leads To This』 (2024)

The Pineapple Thief 『It Leads To This』 (2024)

7/10
★★★★★★★☆☆☆

Porcupine Treeと並びイギリスのネオ・プログレッシヴロックを20年以上リードしてきたThe Pineapple Thiefの14枚目のアルバム。

プログレの枠に括られてはいるが、8作目の『Someone Here Is Missing』(2010)以降はどれも10曲前後で約45分とタイトかつシンプルに仕上げられている。高度な演奏技術と高いメロディセン

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Bill Ryder-Jones 『Iechyd Da』(2024)

Bill Ryder-Jones 『Iechyd Da』(2024)

6/10
★★★★★★☆☆☆☆

Pavement的というよりはGorkey’s的なスラッカーロックの捻りの中で寂しい歌心を見せていた『West Kirby County Primary』(2015)。クリーントーンギターとディストーションギターのダイナミックな交差に荘厳なチェロを織り交ぜたスロウコア路線の名作『Yawn』(2018)。前二作ではどちらもインディロック的なサウンドを中心に据え、その

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