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ザワザワと揺れる木々の音。
「昔の彼氏に似ているの」
僕の瞳を真っ直ぐに見つめながら、頬を両手でそっと包み込む。
「面倒はことは嫌いでしょ。」わたしもそうなのと言って、
キスしそうな唇をとがらせて笑ってみせた。
「お願い、ただ温もりを感じていたいだけだから…」
僕の背中に手を回す肩は思っていた以上に華奢で、
凛とした立ち姿に強さえ感じていたのに
あなたはこんなにもかよわい人。
俯いたままのあなたは、何を考え黙っているの?
あなたの強さを僕にも下さい。#ショートストーリ#青春
父さんが、午前中のデイーサービスから、送迎バス揺られて帰ってきた。
一息入れると「綾乃ちゃんにあったよ、いい子だね。」と今日あった出来事を話してくれた。僕は、綾乃さんと父さんが何をどう話したのか分からなかったけれど「うん、いい子だよ」とだけ応えた。
病気で倒れてから、父さんはすっかり老けてしまった。
それも仕方がない、生死の淵を彷徨っていたのだから。
「ねぇ、綾乃ちゃんって昴の彼女?」と母さん
偶然。#ショートストーリー#青春
溝の口から乗り換えの電車は、銀色の車体に赤いラインが入った電車。
6号車一番目のドアの左側がいつもの定位置で、わたしがドアを背にして話しかけると、昴くんは手すりにつかまってわたしの他愛のない話に相槌を打って応えてくれる。
間近に迫る中間テストの話や先生や同級生の話題。そして、今度行ってみたいお店に誘うついでに「昴くんの家にも行ってもいい?」と聞いてみた。
「えっ、ごめん、イヤ、って言うか、ダメっ…