雑記(咲かない桜を眺めていても)

退院の日取りが決まった。部屋を移動した。上がっていく気温に春の不穏さが忍び足で迫ってくる気配を感じる。やっとスマートフォンやパソコンを自由に使えるようになった。ありとあらゆる思慕が募って躁状態になって、なんだかふわふわふわふわしている。自分にできる範囲の夢しか見られないのなら、一生何も見えないままだと思う。
詩を一篇書き、ゲラを直し、いろいろと応募して、閉鎖病棟でできる範囲で精力的に頑張っているはず。息をするのも本当はつらいけれど、息をしていることを忘れるように生きていればいいだけだった。
できるだけ正確に気持ちを表現しようとすると、どうにも独りよがりになってしまって困る。いろんなものを諦めた。死ぬことも生きることも諦めた。死ぬよりつらいことは、この世にはたくさんある。

夜、ホールでだらだらと入れ代わり立ち代わり現れる入院患者の人たちと話していると、話題は基本的に病気の話か、看護師の誰それが優しいだの可愛いだのとかいう低俗な話か、何が食べたいとか、芸能人の話とか、そういうのを延々と聞かされることになる。本当に気が滅入るが、ベッドに居るのも同じくらい気が滅入る。WiFiの調子は常に悪い。なんだかずっと苛々しながら過ごしている気がする。

朝方、母親からLINEがあって、その内容を受けて、眦に涙が滲み、眩暈がして、胸が痛んで、足が震えた。私がすべて悪いのに、怖かった。自殺しようとしたときのどうしようもない感じが再びやってきて、私をファナティックな想像の中に放り込んでいる気がした。私の犯した罪で、私が苦しむ。それだけならいいのに、私の罪を母が勝手に背負おうとして苦しむのが、どうしても分からなくて、それが本当に苦しかった。私は人を傷つけないように、ただそう思って生きてきたはずなのに。
もう終わりにしたい。もうこんなことは終わりにしたい。ただ怖いんだ。

桜は、咲かない。
本当はもう咲いているのかもしれないけれど、私の心の中ではずっと、桜が咲かない。
胸が痛い。

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