織部
看取り人をまとめました! 随時更新しています!
半竜の心臓をこちらにまとめていきます! あらすじ 白竜の王と人間の女性との間に生まれた少女。棲家としている雪山で父竜と平穏に暮らしていたが、突如、現れた暗黒竜の群れに父竜を殺され、少女は手足の自由を奪われて虐げられていた。絶望の日々の中、神鳴と共に勇者一行が現れて・・。 数奇な運命を歩む半竜の少女の話し
明〜ジャノメ姫と金色の黒狼〜をまとめました!
あらすじ 宗介は、末期癌患者が最後を迎える場所、ホスピスのベッドに横たわり、いずれ訪れるであろう最後の時が来るのを待っていた。 後悔はない。そして訪れる人もいない。そんな中、彼が唯一の心残りは心の底で今も疼く若かりし頃の思い出、そして最愛の人のこと。 そんな時、彼の元に1人の少年が訪れる。 「僕は、看取り人です。貴方と最後の時を過ごすために参りました」 これは看取り人と宗介の最後の数時間の語らいの話し。 本編 19,991 19,992 宗介は、白い天井の節
ウグイスの平なお腹から盛大な音がラッパのように響き渡る。 ウグイスは、珍しく恥ずかしそうに頬を赤く染めてお腹を押さえる。 それに続くようにオモチのお腹から、外にいるアズキから、音こそ鳴らないが家精も言いづらそうにお腹を押さえている。 「あっ……」 アケは、思わず声を上げて窓の外を見る。 いつの間にか太陽が森の木々の背よりも高く上がっていた。 「ごめんなさい……私のせいで」 アケは、肩を萎めて謝る。 「大丈夫大丈夫……」 ウグイスは、笑いながら言うがお腹の虫は鳴り
「気がついたら白蛇の国は瓦礫の山と化してました」 崩れ去った城下。 半壊した白い城。 泣き叫ぶ声。 倒れ、血を流し、命を失ったたくさんの人々。 そして眠るように倒れる巨大な白蛇。 「すまなかった」 白蛇は、声を絞り出し、泣くように言葉を紡ぐ。 「気づいてやれなくて……すまなかった」 そして白蛇は深い眠りについた。 「そこからは皆様のご存知の通りです」 巨人を解放し、白蛇の国を半壊させた挙句、それを止めた白蛇を深い眠りにつかせた罪でアケは半壊した城の座敷牢に閉じ
ナギが出ていって二年が過ぎた。 それまでの間、アケは空虚に生きていた。 いや、空虚に生きることしか出来なかった。 それだけがアケに出来ることだから。 いつまでも自室とした部屋のベッドの端に座り、汗を掻いて気持ち悪くなり過ぎてようやく風呂に入り、汚さない程度に排泄し、お腹が空き過ぎたら食材をそのまま食べた。 ただただ生きる為だけに。 ただただ死なないようにする為に。 料理なんてほとんどすることがなくなった。 別に好きで料理をしていた訳ではない。 作って喜んで
「ナギのおかげで私は生きる目的を持つことが出来ました」 七歳のアケにとって三歳のナギを育てていくのは大変などと言うものではなかった。 同世代の子どもとすらほとんど関わったことがなかったのにいきなり三歳の弟のような存在が出来て戸惑わないはずはない。 食事にしつけ、勉強に具合が悪くなった時の対処。 本をいくら読んでも足りない。 アケは、悪戦苦闘しながらナギの育てていった。 それでも何もなく、ただただ屋敷の中で息をしていただけのアケにとってナギの育てるのはこの上なく充実
「迫害と言っても虐待をされていた訳ではありません」 そう言ってアケは着物の袖を捲る。 現れたのは傷ひとつない色白の白くて細い、綺麗な腕だ。 「お父上様もお母上様も国の民たちも私に暴力を振るうことはありませんでした……大きくなってからもその……性的なことをされることもありませんでした」 そう告げるアケの声は弱々しい。 ひょっとしてされなかっただけでそれに近しいことはあったのではないか……? ウグイスは、そっとアケの肩を抱いた。 アケは、きゅっと唇を萎めながらも話しを
「その時のことを私は覚えてません」 アケは、クロモジ茶の入った湯呑みを握りしめる。 「気がついたら座敷牢のような所にいて顔にはこの白い布が巻かれていました。それなのに景色はやけに鮮明に見えて……そして……そして……」 アケは、蛇の目と唇をぎゅっと萎める。 「私は、お父上様と、お母上様、国に住むみんなから迫害されました」 アケの口から漏れた喉が裂けるような声にウグイス達の顔が青ざめる。 化け物。 両目を失い、白蛇の目を譲り受けたアケは両親にそう蔑まれ、嫌われた。
アケが彼らに誘拐されたのに特に大きな理由はなかったと誰かから聞いた。 何故その人物を"誰か"と表現したのに大きな意味はない。 単にアケの側にやってくる人間達が自分たちの名前を告げることがなかったからだ。 だから、その教えてくれた人物が国の重要人物なのか?治療した医師なのか?それとも世話しに来た給仕だったのか等は特に重要ではない。 重要なのはその誰かが告げた理由だ。 その"誰か"はこう言った。 彼らがアケを誘拐した理由。 それはその時に彼女がまだ三、四歳の幼児で
巨人。 それはこの世界に最初に誕生した生命であり、父であり、母である神に最も近い存在。 天を突く巨体。 大地を砕く膂力。 海を裂く叫び。 この世の理を全て支配しえる魔力。 尽きることのない命。 そして自分たちより後に生まれた種が存在することを許さない理不尽と残虐さ。 巨人達は、自分たち以外の種を滅ぼさんと世界を蹂躙し、父であり母である神に戦いを挑んだ。 そして……。 彼らは、悉く冥府の国へと堕とされた。 二度と現世に戻れぬように……。 そして世界から
「こんなものしかなくて……」 アケは、申し訳なさそうに言って炊けたばかりの白米を残り少ない塩を塗して握ったおにぎりと釜戸に残った火で沸かしたクロモジ茶をテーブルに座るウグイス、オモチ、そして家精の前に置いた。 「無理しなくていいよ……ジャノメ」 ウグイスが心配げにアケを見る。 「そうですよ。お嬢様」 家精も美しい顔を歪めてアケを労る。 「一番お疲れなのはお嬢様なのですから」 しかし、アケは、首を横に振る。 「こんな程度……無理ではありません。それに……」 蛇の目が小
アケは、口元を手で覆う。 「何をしていると聞いている」 男は、激る黄金の双眸で武士達を睨む。 「答えぬか……狼藉者ども」 そのあまりの迫力と殺気にアズキを取り囲んでいた武士達は怯み、鉄砲を持った武士達は銃口をアケから男に変える。 「撃て……」 浅黒の武士は、締め上げられ、血反吐を吐きながらも部下達に命令する。 「あの男を……撃て」 しかし、鉄砲を持った武士達は躊躇する。 男から放たれる言いしれぬ恐怖に身体が竦み、動けない。 浅黒の武士は、唇を噛み、部下達を睨みつ
アケは、アズキに駆け寄ろうとする。 しかし、それよりも早く武士達が浅黒の武士の後ろから飛び出し、アズキを囲んで刀を抜いて倒れるアズキの喉元と胴体に突きつける。 アケは、足を止める。 「アズキ……」 アケは、声を震わせ、呼びかける。 「ぷぎい」 アズキの口から弱々しい鳴き声が漏れる。 目が開いてアケをじっと見る。 アケは、胸元を押さえ、安堵する。 「焦りましたよ」 浅黒の武士は、ふうっと息を吐く。 その顔には脂汗の玉が幾つも浮かんでます。 「まったく反応出来ま
不穏な空気を感じ、アズキが目を覚ます。 巨体をゆっくりと起こし、アケに近寄る。 岩のように大きく、背中を燃やした異形の猪に武士達の顔に戦慄が走り、腰の刀に手をかけ、今にも斬りかかろうする。 「やめろ」 浅黒の武士が左手を伸ばしそれを制する。 「お前達では勝てん」 「アズキ……やめて」 アケも顔だけをアズキに向ける。 アズキは、武士達を牽制するように睨みつけたままアケの言うことを聞いて動きを止める。 「お嬢様……」 ジャノメ食堂の出入り口にマンチェアを纏った家精が
翌朝、アケはいつもよりも早く起きた。 ベッドから起きて窓を見ると月はまだ薄く空にあり、遠くの東の空は橙色に燃え上がっている。 あと、少しで日が登る。 一日がまた始まる。 アケは、身なりを整え、寝巻きから茜色の着物に着替え部屋を出てそのまま食堂に向かう。 出入り口となっている大窓と小窓を開けて空気を入れ替え、外にある水道で布巾を固く絞ってテーブルを拭き、床を箒で掃く。 この後はいつもなら草原で寝そべっているアズキの背中の火を借りてお湯を沸かしてクロモジ茶を飲むのだ
「へっ?」 「無ければ作ればいいんだよ!そのなんだっけ………⁉︎」 「香辛料ですか?」 「そうっ!」 ウグイスは、びしっと人差し指を立てて叫ぶ。 アケは、思わずビクッと身体を震わす。 「香辛料みたいに作ればいいんだよ!」 「いや、香辛料はオモチがちゃんと材料を見つけてくれたから……」 「だったらオモチ!」 ウグイスに呼ばれてオモチは、ピンッと耳を立てる。 「今すぐ海水の代わりになりそうなものを探してきて!」 オモチの表情は変わらない。 しかし、赤い目に激しく動揺が走
絶対に美味いに決まっている。 鼻腔の奥で弾けるような匂いがウグイスの、オモチの、アズキの、そして屋敷の中にいる家精の食欲と胃袋を叩きつける。 アケは、そんな四人の様子を見て頬を緩めながら白い深皿に炊き上がった白飯を盛っていく。 「ジャ……ジャノメ〜」 ウグイスが緑色の目を輝かせ、ペタンコなお腹を両手で押さえながら訊いてくる。 「この匂いって……何て言うの?こんな痺れるような匂い……初めて……」 ウグイスは、香りに惚れ込むように頬を赤く染めて訊いてくる。 その後ろで