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Gが飛び出る金曜日


週の終わりの金曜日。

日曜日に販売イベントがあり
ディスプレイや値札を一新する予定だったので
販売担当の私はワタワタしていた。

 
新ディスプレイを実際に販売で試すのはリーダーだ。

「値札を手書きからパソコン打ちに変更して作ってほしい。」と私に言ったのはリーダーだし

「新しいディスプレイのやり方を利用者に教えてほしい。」と言ったのもリーダーだ。

「今度の販売物を真咲さんに用意してもらいたい。真咲さんが売れそうと思うものを準備しておいて。」(基本的には販売に実際に行く人がイベント内容に合わせて用意するのだが)と言ったのもリーダーだ。

尊敬しているリーダーに信頼され任されたようで嬉しかった。

 
利用者が帰ってから準備仕上げをしていると
同僚が私の元にやってきた。

「これなんでしょう?」

見ると、トイレットペーパーに汚れがあった。
泥?虫の糞?

トイレットペーパー複数がやられていた。

 
二人で首を傾げていると
トイレットペーパーの袋からピョンッとゴキブリが飛び出した。同僚が手に持っていた袋からだ。
大きい。至近距離だ。

ギャァアアアア!

私と同僚は逃げた。
叫びながら逃げた。

 
新施設長を呼びに言ったら
前施設長と二人で来た。

前施設長は冷静に「今はどこにいるの?」と言い
手袋を着用した。

前施設長は女性だが
ゴキブリはじめ虫や爬虫類に強い。

 
二人で叫んで見失ったことを詫びると
前施設長は販売準備物の近くを探し出した。

 
するとまたもやピョンッと上に飛び上がった。
奴だった。

ギャァアアアア!

叫んだのは今度は私一人だった。

 
「見てられないなら他の部屋で仕事してなさい。」

前施設長は私を嗜めた。

 
新施設長がスプレーで殺した後
前施設長がそれを包み
同僚と前施設長で掃除していた。

後は任せて大丈夫だろう。

 
私は素直に別室に行った。
どうせ私はすぐ騒いで退治もできない役立たずですよ、と内心卑屈になりながら。

 
ゴキブリをそのままゴミボックスに入れておくのは嫌だよね、と前施設長が言った。
うちの職場はある程度ゴミがたまったらゴミステーションに行くのだが
ちょうどその日ゴミを置いてきたばかりだった。

 
前施設長が色々言うので
新施設長は自分が持ち帰って処分すると言った。

汚れたトイレットペーパーや消毒時や拭いた時に使った古雑巾とヤツをまとめ
それを新施設長が処分することになった。

 
かわいそうに。
金曜日にそれをわざわざ持ち帰るなんて。

そう思ったが
私が名乗り出たくはない。

 
前の職場では施設長命令で退治することもあったけど
男性利用者や職員が退治してくれたなぁ…と昔を懐かしんだ。

 
再び販売準備をしていると
リーダーが送迎から戻ってきたので一部始終話した。

「え?持ち帰るの?わざわざ?」

リーダーはズバッと言った。
さすがだ。

 
「真咲さん、ゴキブリで叫んで前施設長に怒られたの?」と聞かれ

「いや、嗜められただけですよ。それで軽く落ち込んでいるだけです。」と素直に答えた。

 
「ゴキブリが怖くなくなるためにはゴキブリを知ることだよ。」

リーダーはそう言い、ゴキブリについての雑学を話し出した。
リーダーとそんな話をしていると、フフッと笑えてきた。

 
素直に弱音を吐き出せて、笑える。

リーダーに対して私がどれだけ心を許しているか
改めて再確認した。

 
販売準備をして、職場を出た。
せっかくの金曜日がゴキブリのせいで散々だったけど
明日と明後日は休みだ。

休みを満喫しよう。

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