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今年の夏オリンピックに出るよという方へ-二週間前-

今日は、五輪二週間前に意識しておけば良かったこと三つをお話しします。

まず一つ目は、不安をもっと吐き出せば良かったということです。どんな選手でも試合前には不安になることがあると思います。私も不安になりました。一方で、スポーツの現場で不安は弱気だと言われて、不安はよくないことだという認識を持つ方も多いのではないでしょうか。

ところが不安になってはいけないと思ったところで、不安のような感情は直接コントロールすることができません。感じようと思って感じるものではなく、感じてしまっているものだからです。その自然と感じている不安をよくないことだと抑圧して見ないふりをした場合、それは消滅するのではなく自分の無意識下に潜っていきます。

みなさんよくご存知だと思いますが、私たちの世界では隠したものは結局全部試合で出てしまいます。表の自分と裏に隠した自分、それ全てトータルで競技をしますから隠そうと思っても隠せません。不安ではないと思い込めば混むほど、不安になってはならないと言い聞かせれば聞かせるほど、裏側の自分に溜め込むことになります。そしてそれが試合の時歪な形で現れます。

ぜひ周辺の誰でもいいですし、文章でもいいですから不安であるということを言葉にして吐き出してください。人間不思議と吐くと流れてたまらないものです。不安とコントロールするのではなく不安な時に不安だと認め、それを流すということ。これを心がけておけばよかったなと思います。

もう一つは、とにかくざっくりと中央だけをみることが大事だったと思います。完璧に仕上げようという意識がそうさせるのかもしれませんが、試合前は細かいことが気になってしまいます。試合前の緊張状態やストレスがかかった状態では人間はトンネル効果という影響を受けます。トンネルの中に入ったように、集中はできるのですが周りが見えなくなり視野が狭くなります。

細部を気にしてさらに視野が狭くなった時に選手はバランスを崩します。囲碁の碁盤で局所の勝ち負けを気にしてたら全体のバランスが大きく崩れていたということがありますが、あれに似ています。最後が多少荒くても中央のバランスを取れていればそうそう崩れませんが、細部に気を取られて中央のバランスを失うと一気に崩れます。

意識をして自分と距離を取り、一番大事なことはなんだっけと問いかけてみることが大事だったと思います。実は抑えなければならないことはそんなに多くありません。抑えなくてもできるように準備をしてきているはずです。ですから、真ん中中の真ん中だけを抑えてあとは全体を眺めてバランスを取るということが大事だったと思います。

最後に、期待と応援を分けるということです。選手が試合前に頑張ってと言われプレッシャーだったとか、応援されて力が出たとか言いますが、あの違いは何でしょうか。私はそれを期待と応援という二つに分けていました。期待は、相手があなたにこうなって欲しいと望むこと。応援は、相手があなたにやりたいようにやることを望むこと。期待には期待する側への具体的な願望があります。応援には願望がありません。期待が何故プレッシャーになるかというと、期待に応えられなかった時失望があることを私たちは知っているからです。期待には少なからず相手をコントロールしようとする力が潜みます。

期待も願望も普段入り混じっています。ですが、この勝負どころでは応援をより多く想像するようにした方がいいと思います。応援には願望がないために、あなたは相手を察する必要がありません。あなたがあなたのやりたいようにやることが願われているわけですから、自分のやりたいようにやるだけでいいわけです。

応援は往々にして静かです。私も引退するまでこんなに応援があったとは知りませんでした。もっと早くに気づけばよかったと後悔しています。ありがたいことに、私たちは応援される機会が多くあります。勝負の際には、応援を具体的に頭でイメージして、それに感謝しながら自分らしくのびのびプレイすることが大事だったと思っています


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