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書評

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ヨミタイモノ、ココニアリマス。
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記事一覧

間宮改衣『ここはすべての夜明けまえ』

間宮改衣『ここはすべての夜明けまえ』を読む。 不死の身体を手に入れた「わたし」が、ひとり…

既視の海
7日前
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早川義夫『海の見える風景』

「一年前、妻が癌になって初めて、そばにいてやりたいと思いました。しい子は3月28日に亡くな…

既視の海
2週間前
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アントワーヌ・コンパニョン『寝るまえ5分のモンテーニュ 「エセー」入門』

アントワーヌ・コンパニョン『寝るまえ5分のモンテーニュ 「エセー」入門』を読み終える。も…

既視の海
3週間前
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言語は人生を変えるのか。物語も人生を変えるのか。

ある詩集をもとめて、独立系書店をさまよっていた。書名とたたずまいに惹かれて手に取ったのが…

既視の海
4週間前
18

四元康祐『偽詩人の世にも奇妙な栄光』

書けない苦しみ。溢れ出る驚き。 のちに偽詩人と呼ばれた吉本昭洋は、いずれも味わった。詩人…

既視の海
3か月前
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アゴタ・クリストフ『文盲 アゴタ・クリストフ自伝』

『悪童日記』三部作を読み、著者アゴタ・クリストフが、母語ではないフランス語で書くことの意…

既視の海
5か月前
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アゴタ・クリストフ『第三の嘘』

少し感傷的になりながら、アゴタ・クリストフ『第三の嘘』を読む。『悪童日記』『ふたりの証拠』に続く三部作の完結編である。 アゴタ・クリストフの母国であるハンガリーを思わせる国のはずれが舞台となり、第二次世界大戦の戦火を双子の少年たちが生き抜いた『悪童日記』。その双子の一人が成長した青年リュカが、亡き母親に似た女性を慕いつつ、血のつながらない不具の少年に情愛をかける『ふたりの証拠』。 そして、ベルリンの壁が崩壊し、西側と東側で行き来ができるようになった時代を思わせる『第三の嘘

アゴタ・クリストフ『ふたりの証拠』

いてもたってもいられず、アゴタ・クリストフ『ふたりの証拠』を読む。『悪童日記』の続編であ…

既視の海
5か月前
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アゴタ・クリストフ『悪童日記』

読む本は、いつもゆくりなし。 先日来、「いま読書中」「一番の偏愛本かもしれない」という声…

既視の海
5か月前
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Luis Poirot “NERUDA: Retratar la Ausencia”(パブロ・ネルーダ写真集)

1971年、ノーベル文学賞の受賞記念としてパブロ・ネルーダの自宅で開かれた夕食会。そこに招か…

既視の海
6か月前
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ロベルト・アンプエロ『ネルーダ事件』

「ネルーダ週間」も終盤にさしかかる。映画を観たり、詩集を読んだりしながら、参考文献を紐解…

既視の海
6か月前
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『松本竣介 線と言葉』を読む。尾形亀之助詩集『美しい街』の挿画で知る。『運河風景』『並木道』に圧倒される。自分の眼で観たい。「戦争を描いても裸婦を描いても林檎を描いても画家の目が、厳然として永遠なものにつながってゐるか否かゞ大切だ」という言葉は文章や詩でも通じる。次は評伝を読む。

既視の海
7か月前
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惣田紗希『山風にのって歌がきこえる 大槻三好と松枝のこと』を読む。昭和初期、歌人の男と女が愛し合い、結婚。子をもうけるが妻は逝く。その軌跡を詠んだ2人の生活歌に端正なイラストが添えてある。「束ねるにまだちと早い濡髪を 暫し吹かせる川風 のよさ」柄にもなく、読み終えて少し 泣く。

既視の海
7か月前
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小説・辻邦生、銅版画・山本容子『花のレクイエム』を読む。毎月一つの花を主題にした文学と銅版画の交歓。死が分かつ切なさを書いた短篇が多い一方で、銅版画は抑えられた色彩でも華やかさがにじむ。打ち合わせなしで臨むがゆえ起こる共鳴とずれのいずれも心地よい。お気に入りは五月のクレマチス。