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復興シンドローム【2016/12/01~】㉔

バイト先の近場で工事が始まった。
あぁ、コンビニができるらしいよ。向こうは24時間らしい。

被災地の殿様商売ももう終わりか。

売り上げにはもちろん影響が出るだろうし、深夜の客は向こうに行くだろうね……とは言ってみても、そんなに夜更かしするほど若い住民はいないだろうけどね。

最近どんな話題も自虐を一つ挟むようになった。

事務所でそんな話をしていると、オーナーが入ってきた。
「近場にコンビニができるんだってな。うちと2件になるわけだ」

「向こうは24時間らしいですね」
自分がとっさにそう言うと、オーナーが苦笑しながら話を続ける。
「24時間やったところで人件費がかさむだけだよ。どうせ作業員しかいないんだし。ジジババはさっさと寝るよ」

うちのコンビニは20時に閉まる。結構早めだ。でも、この地域はそれで十分だそうだ。土曜日まで復興関係の仕事があるので、週6日で作業員は夜更かしできないわけだ。だとするなら、夜は20時閉店で十分なのは頷ける。しかし、朝ラッシュは少し緩和されるだろう。それは聞こえばいいが、売り上げが1/2になるかもしれない。

事務所で20分ほど話し、ボクは帰路についた。アパートに着くと、夕方の仕事まで、しっかり仮眠をとる。カーテンの隙間から太陽の光が入ってくる。窓の外からは人々の生活音が心地よく耳に入ってくる。

徐々に震災前に戻っているのか、新しい風景に変わりつつあるのかそれは全く分からない。原発から20キロ以内のバイト先でも日々変化が起こっている原発から25キロ先のこの地域でも日々何かが変わっているに違いない。でも、それがいいことなのか、悪いことなのか誰も判断できないでいる。コンビニごときの話題でも、すべて復興関連のことに拡大解釈して物事を俯瞰してみるクセがボクたちには染みついていた。

しかし、それは少し好ましくはない習慣で、どうしても物事を悲観的に見てしまうってことだ。福島全体、日本全体から小さな地域のコンビニ出店の話を見たときにポジティブにとらえるのか、ネガティブにとらえるのか。

言いにくい本音はこれだ。
復興が進む⇒今の支援や賠償が縮小されるかもしれない【不安】
復興が進まない⇒今のままの支援や賠償が続く【安心】

復興地域に住む人々はきっとこう考えている人が多いはずだ。
だって、思いっきり飴を国から貰い続けているんだから。

飼いならされ、口を塞がれ、福島に足枷を付けられているボクらはきっと健全な感情ではいられない原因が、札ビラで頬をひっぱたかれる快感を多かれ少なかれみんな味わってきていることにある。

もちろん福岡さんも、コンビニができることには反対らしい。今の生活を続けたいから。

彼は正直にぼくにこう言っていた。

福島県のどこかに住んでいます。 震災後、幾多の出会いと別れを繰り返しながら何とか生きています。最近、震災直後のことを文字として残しておこうと考えました。あのとき決して報道されることのなかった真実の出来事を。 愛読書《about a boy》