雨の日の送り迎えをするより、雨の日を楽しむことを教えられる親になりたい。
夫の趣味で、GW前半は夫と子供が出るトレイルランニングの応援に行ってきた。そう、アップダウンのある山の中を走るスポーツである。
夫はミドルのコース(20km)、息子はキッズ向け3kmのレースを走った。
ちなみに夫と子供は去年も一昨年もこのレースに参加したが、私はお金を払って苦しいことをやりたい人の気持ちはいまだにわからない。
こんなことを書くときっと「旦那さんもお子さんも運動神経が良くて、運動お好きなんでしょうね」とか思われそうなものだけれど、夫も私もはっきり言って子どもの頃は運動音痴。夫に至っては太っていていじめられたそうな。だからもともと体を動かすのはあまり好きだったわけではない。
よく大人になってからここまで運動好きになったものだ、と時々感動する。
そんなわけで、運動神経には恵まれているとは言い難い我が家が、なぜ家族で運動するのかについて。
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もちろん運動することは生涯の健康習慣に大きく影響するし、今は研究が進んで身体を動かすことで頭が良くなることだってわかっている。
そして今も昔もスポーツ系の習い事はいつだって大人気だ。
正直言って、私はスポーツを通じて人間性を伸ばそうとかチームワークを学ぼうとかが大の苦手。
あんまり自分の運動能力が高くないので、どちらかというといつもチームの足を引っ張ることになるから居たたまれない気持ちになることが多くて、何かを学ぶどころではない。
運動神経に恵まれないので、どうやったって好き→得意→結果が出るという正のフィードバックが働く循環には入れない。苦手→不得意→ますます体を動かすことが苦手になるの負のスパイラルに落ち込むことが多かった。
ただ不思議なもので、大人になると昔動けたけれど運動を止めたことで動けなくなった人もいれば、すごく運動が得意ではなくても少しずつ続けることで『体を動かすことって楽しいんだ』ということに気づく人も出てくる。私は後者のパターンで、少しでもできるようになるのは楽しい、と途中から思うようになった。
子どもにはせめて運動することが好きになってほしいな、と思っている。
チームスポーツができたりすると、海外に行ったときに言語ができなくても友だちができるきっかけだってできる。私の周りで海外で言語の壁が立ちはだかったときに救いになったと聞くのはスポーツと音楽(オーケストラ的なもの)である。
言葉がいらなくても人とつながる方法があるのは、生きることを少し楽にしてくれるような気がする。
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私の母はとても子供思いで、雨が降ったときはよく駅まで車で送り迎えをしてくれた。田舎に住んでいたので車社会が当たり前、そのせいもあったかもしれない。
女の子だから夜遅いと危ないとか、防犯上の理由もあったと思う。それはとても大切なことで、親に感謝している。
ただそのせいもあってか、私は雨の日に歩くことを好きになるまでとても時間がかかった。なんで雨の中、私が歩かなくちゃいけないの!と雨が降ることにも悪態をつくような、そんなわがままな娘に育った。
それは今になればそうなっちゃうのも仕方ないよね、と思う部分もある。
でも一方で、何かをすごく頑張ろうと思ったとき、夢中になって何かをやり続けたいとき、しんどさの壁というものを乗り越えるのが苦手になったんじゃないかなと思うときがある。体力のなさを差っ引いても。
しんどさを乗り越えるためには体力があるから何とかなるという部分がバカにできないことに大人になって気が付いた。
何かを積極的に楽しむためには、意外と体力とか寝れば回復する力が必要である。
体力があれば多少精神的な波があったって乗り越えられることや、しんどい局面であと一歩がんばれることもある。何かを成し遂げるためには結局タフじゃないといけない。メンタルのタフさも必要だけれど、体力的なタフさがそれを補ってくれる部分はけっこう大きい。
しんどさや痛みを感じにくい人にとても憧れるけれど、残念なことに私は痛みを感じやすい人である。
そしてこの性質はばっちり息子に遺伝している。
だから楽しくてやっているうちにタフになるという経験を、こどものうちにたくさんしてほしいなと思っている。
そんなこんなで、息子の習い事は常に楽しさが優先。
楽しくなくて我慢してがんばる習慣が身についても、楽しくてやっている人には勝てない。どこかでどんどんしんどくなってしまうから。
楽しくてちょっとくらいしんどくても、楽しいから続けられて、結果的にタフになっている、そんな風に育ってほしい。
雨の日だって、積極的に楽しめるようになってほしい。
今年のレースはどうだったかというと、夫は途中でまさかのコースアウトしたそうで予定より30分遅れて帰ってきたし、息子は途中で歩いたらしく(「いや、2週目のあの坂マジでやばいから」と言っていた)大して順位は上がらなかった。
だけど、ゴールした時の息子の足取りはとっても軽く、まるで飛び跳ねるような感じでバンザイしてゴールした。がんばったね~と声をかけたら「うん、楽しかった~!」と。自分のこどもとは思えない感想。
夫のゴールの時は、息子と二人でゴール近くで待っていたら「ちょっと来て、これ一回やりたい!」と夫に言われ、まさかの三人で走ってゴールイン。なんだか思ってみない展開に、私は戸惑って笑ってしまった。
あんなに走るの嫌いだったのに、一緒に笑顔でゴールしちゃったじゃないか。
待っている間はとっても退屈だったけれど、家族でいい時間を過ごしたような気がした。
なんだかんだで私も雨の日は送り迎えしちゃうんだろう。でも、いつか息子が雨の日も風の日も積極的に楽しめる男の子になってくれたらいいな、と思った一日だった。
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