福山隆|元陸将|軍事評論家

陸上自衛隊元陸将。1947年長崎県生まれ。防衛大学校卒業後、陸上自衛隊入隊。1990年…

福山隆|元陸将|軍事評論家

陸上自衛隊元陸将。1947年長崎県生まれ。防衛大学校卒業後、陸上自衛隊入隊。1990年外務省出向、大韓民国防衛駐在官。1995年第32普通科連隊長として地下鉄サリン事件の除染作業を指揮。西部方面総監部幕僚長・陸将で2005年に退官し、 ハーバード大学アジアセンター上級研究員を歴任

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ハーバード見聞録(1)

まえがき――『ハーバード見聞録』の由来(23年1月17日) l まえがきのまえがき 以下連載するエッセイは、十数年前自衛隊を定年退職した、還暦に近い老人の、二年間にわたるアメリカ・ハーバード大学アジアセンターの上級客員として滞在した間の文字通り「見聞録」である。十数年の時間は経っているが、アメリカの実像を見る上ではいささかも陳腐化していないと自負する次第である。  私は、2005年3月、陸上自衛隊西部方面総監部・幕僚長(熊本県健軍駐屯地)を最後に定年退官した。陸上幕僚監

    • ハーバード見聞録(72)

      「ハーバード見聞録」のいわれ  「ハーバード見聞録」は、自衛隊退官直後の2005年から07年までの間のハーバード大学アジアセンター上級客員研究員時代に書いたものである。 鏡の国のアリス――日本左翼の親米化現象(5月28日の稿) 『不思議な国のアリス』(ルイス・キャロル著、角川文庫)の続編に『鏡の国のアリス』(ルイス・キャロル著、角川文庫)がある。主人公アリスが、鏡を通り抜けて「鏡の国」の部屋に飛び込むと、もとの部屋から見えたものとはとことん違っていた。テーブルの上の本の中

      • ハーバード見聞録(71)

        「ハーバード見聞録」のいわれ 「ハーバード見聞録」は、自衛隊退官直後の2005年から07年までの間のハーバード大学アジアセンター上級客員研究員時代に書いたものである。 散るぞ悲しき(5月21日の稿) 『散るぞ悲しき』(梯久美子著)を原案としてクリント・イーストウッド監督が硫黄島における日米の激闘の様相を映画化されつつある。 「硫黄島プロジェクト二部作」のうち、アメリカ軍側の視点から描いた『父親達の星条旗』は06年10月24日に公開され、栗林中将を中心に日本軍側から描いた

        • ハーバード見聞録(70)

          「ハーバード見聞録」のいわれ 「ハーバード見聞録」は、自衛隊退官直後の2005年から07年までの間のハーバード大学アジアセンター上級客員研究員時代に書いたものである。 「マハンの海軍戦略」についての論考を9回に分けて紹介する。 「マハンの海軍戦略」第9回: むすび(5月14日) ●アメリカ海軍のその後の発展 アメリカが独立して、1世紀余で国土の拡張を果たし、太平洋に視線を向け始めた頃に、マハンは「海上権力史論」を著した。彼は既に19世紀末の時点で、アメリカの未来――今日

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        ハーバード見聞録(1)

          ハーバード見聞録(69)

          「ハーバード見聞録」のいわれ 「ハーバード見聞録」は自衛隊退官直後の2005年から07年までの間のハーバード大学アジアセンター上級客員研究員時代に書いたものである。 「マハンの海軍戦略」についての論考を9回に分けて紹介する。 「マハンの海軍戦略」第8回: ルーズベルトはマハンの海軍戦略を如何に政策として実現したか(5月7日) ●米海軍力の強化  前述の「マハンの戦略理論の第1・4・7条」では、「大海軍の建設」が提示されている。ルーズベルト政権下においては、世界第二位の海

          ハーバード見聞録(69)

          ハーバード見聞録(68)

          「ハーバード見聞録」のいわれ 「ハーバード見聞録」は、自衛隊退官直後の2005年から07年までの間のハーバード大学アジアセンター上級客員研究員時代に書いたものである。 「マハンの海軍戦略」についての論考を9回に分けて紹介する。 「マハンの海軍戦略」第7回: ルーズベルトとマハンの関係(4/30) マハンの重要著書の出版年次とルーズベルトの海軍次官・大統領職在任期間との関係は次の通り。 1890年 マハン:「海上権力史論」出版 1902年 マハン:「仏国革命時代海上権力

          ハーバード見聞録(68)

          ハーバード見聞録(67)

          「ハーバード見聞録」のいわれ 「ハーバード見聞録」は自衛隊退官直後の2005年から07年までの間のハーバード大学アジアセンター上級客員研究員時代に書いたものである。 「マハンの海軍戦略」についての論考を9回に分けて紹介する。 「マハンの海軍戦略」第6回: マハンの海軍戦略を採用しアメリカの国策にした男――セオドア・ルーズベルト大統領(4/23) マハンの海軍戦略がいくらアメリカにとって、価値あるものであっても、国策として採用されなければ、「単なる戦略理論」として終わり、

          ハーバード見聞録(67)

          ハーバード見聞録(66)

          「ハーバード見聞録」のいわれ 「ハーバード見聞録」は自衛隊退官直後の2005年から07年までの間のハーバード大学アジアセンター上級客員研究員時代に書いたものである。 「マハンの海軍戦略」についての論考を9回に分けて紹介する。 5 マハンの海軍戦略――白頭鷲の巣立ち後の雄飛を指南したマハン提督とその戦略理論(4月16日) ●マハン提督の人物像 『マハン海軍戦略』(中央公論社)の監修者の戸髙一成氏は同書の「解説」の中でマハンの人となりの一端を次のように書いている。 また、元

          ハーバード見聞録(66)

          ハーバード見聞録(65)

          「ハーバード見聞録」のいわれ 「ハーバード見聞録」は、自衛隊退官直後の2005年から07年までの間のハーバード大学アジアセンター上級客員研究員時代に書いたものである。 「マハンの海軍戦略」についての論考を9回に分けて紹介する。 白頭鷲(米国)の雛の誕生と成長――その巨体の構築と西進の大義(マニフェストデスチニー)の創出(4月9日) イギリスが新大陸に植民地の建設に着手し、1607年にはジェームズタウンと命名した植民地への移住に始まり、1620年にはピルグリムファーザーズ(

          ハーバード見聞録(65)

          ハーバード見聞録(64)

          「ハーバード見聞録」のいわれ  「ハーバード見聞録」は、自衛隊退官直後の2005年から07年までの間のハーバード大学アジアセンター上級客員研究員時代に書いたものである。 「マハンの海軍戦略」についての論考を9回に分けて紹介する。 第3回:アメリカの「西への衝動」――太平洋に向けた3段跳び(ホップ・ステップ・ジャンプ) 東京外国語大学の荒このみ教授(当時)の「西への衝動」(NTT出版)という著書がある。荒教授は「ラシュモア山」に登り、岩山に彫られた巨大な歴代大統領顔を眺めな

          ハーバード見聞録(64)

          ハーバード見聞録(63)

          「ハーバード見聞録」のいわれ 「ハーバード見聞録」は、自衛隊退官直後の2005年から07年までの間のハーバード大学アジアセンター上級客員研究員時代に書いたものである。 「マハンの海軍戦略」についての論考――筆者の『マハン論』――を9回に分けて紹介する。 「マハンの海軍戦略」第2回:アメリカの地政学(3月26日) アメリカの地政学 マハンの海軍戦略は、米国の地政学に根差すものだと思う。すなわち、米国の地政学を理解すれば、マハンの海軍戦略は分かりやすい。 図に示すように、

          ハーバード見聞録(63)

          ハーバード見聞録(62)

          「ハーバード見聞録」のいわれ  「ハーバード見聞録」は、自衛隊退官直後の2005年から07年までの間のハーバード大学アジアセンター上級客員研究員時代に書いたものである。 今週から「マハンの海軍戦略」についての論考を9回に分けて紹介するものである。 「マハンの海軍戦略」第1回:はじめに(3月19日) 1.はじめに 2006年夏、「マハン海軍戦略」(アルフレッド・T・マハン著、井伊順彦訳、中央公論社)を読んだ。アメリカで安全保障や戦略に関わる論文や講義・セミナー等を見聞す

          ハーバード見聞録(62)

          ハーバード見聞録(61)

          「ハーバード見聞録」のいわれ 「ハーバード見聞録」は自衛隊退官直後の2005年から07年までの間のハーバード大学アジアセンター上級客員研究員時代に書いたものである。  以下の稿は、ロバート・ロス教授の論文『平和の地政学、21世紀の東アジア』の「抄訳」を7回に分けて紹介するものである。今週はその第7回目(最終回)で「結び」の部分の抄訳を掲載する。 第7回「結び」(3月12日) 結び 地域の安定には、地勢及び勢力構造の他にも、様々な要素が影響を及ぼす。民主主義、相互依存及

          ハーバード見聞録(61)

          ハーバード見聞録(60)

          「ハーバード見聞録」のいわれ 「ハーバード見聞録」は、自衛隊退官直後の2005年から07年までの間のハーバード大学アジアセンター上級客員研究員時代に書いたものである。  以下の稿は、ロバート・ロス教授の論文『平和の地政学、21世紀の東アジア』の「要旨と若干の所見」に引き続き、「抄訳」を7回に分けて紹介するものである。今週はその第6回目で「第6節 米国撤退の意義」の抄訳を掲載する。 第6節 米国撤退の意義 朝鮮半島及び台湾を巡る米中の軋轢は典型的な超大国の争いに過ぎない。

          ハーバード見聞録(60)

          ハーバード見聞録(59)

          「ハーバード見聞録」のいわれ 「ハーバード見聞録」は、自衛隊退官直後の2005年から07年までの間のハーバード大学アジアセンター上級客員研究員時代に書いたものである。  以下の稿は、ロバート・ロス教授の論文『平和の地政学、21世紀の東アジア』の「要旨と若干の所見」に引き続き、「抄訳」を7回に分けて紹介するものである。今週はその第5回目で「第5節 発火点となる可能性:スプラトリー諸島、朝鮮、台湾」の抄訳を掲載する。 第5節 発火点になる可能性:スプラトリー諸島、朝鮮、台湾(

          ハーバード見聞録(59)

          ハーバード見聞録(58)

          「ハーバード見聞録」のいわれ 「ハーバード見聞録」は、自衛隊退官直後の2005年から07年までの間のハーバード大学アジアセンター上級客員研究員時代に書いたものである。 以下の稿は、ロバート・ロス教授の論文『平和の地政学、21世紀の東アジア』の「要旨と若干の所見」に引き続き、「抄訳」を7回に分けて紹介するものである。今週はその第4回目で「第4節 東アジア二極構造の平和と安定」の抄訳を掲載する。 第4回―「第4節 東アジア二極構造の平和と安定」(2月20日 米国と中国は、東

          ハーバード見聞録(58)