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人間よりラクに移住できるカモ一家/『FLY!/フライ!』

 東宝東和の試写会で『FLY!/フライ!』を見た。『ミニオンズ』で有名なイルミネーションの完全オリジナルストーリーの新作だ。

 “渡り”をしたことがないカモ一家が、カリブ海のジャマイカ目指して約3000kmの旅に出る。カモが勇気と冒険心を持って“渡る”姿を強調して『FLY!/フライ!』という邦題にしたのだと思う。しかし原題は『MIGRATION(移住)』。世界中で起きている移民排斥問題を想起させる。

 ところがカモには国境も居住権の問題も移住先での差別も言語習得のハードルもない。移動の危険のみが(劇中で)問題とされている。人間のMIGRATIONより断然ラクなのでは? と思ってしまった。移動さえしてしまえばあとは楽園でハッピー、という移住観は現実との齟齬が大きすぎる。『FLY!/フライ!』という邦題もそれを見えなくしてしまっている。

 くわえて、どこに行っても英語が通じるのが、アニメ的ご都合主義だとわかりつつも、植民地主義的で気持ち悪いなと思った。

 劇中、食材にされるために丁寧に育てられている鳥たちが直面する圧倒的な暴力や搾取が描かれていて、そういうのはダメだとストーリーを通して語っている。けれど、それを劇場で買ったチキンを食べながら鑑賞するのも皮肉な話だよね……と思った。資本主義に乗っかって資本主義を批判する、的な。

 とはいえ自由を目指して飛ぶ鳥たちの冒険や、ジャマイカの極彩色の映像美は楽しめる。家族の絆、父と息子の確執と和解、母と娘の逞しさ、というステレオタイプな家族物語に感動できる人にはお勧めできるかもしれない。

 ちなみに試写は吹替版だった。父ガモのマック役を演じた堺雅人はまさにピッタリだったと思う。字幕を目で追わなくて済む吹替版もいいものだなと思った。

 3月15日(金)ロードショー。

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