もういちど

夜、光がなければ降る雪はみえない
ぼくたちは
そんな風にして
消えたり現れたりしながら 魂の境界を 
この世界の
途切れがちな波長に そっと
合わせていた

夜、とんがった耳は孤独の
冷たい靴音を聞き分ける
ぼくたちがひとりだった頃
ついに得ることのできなかった
こうふく
という名の衣装
それがまだ はるかに点る街灯の下で
ひらひらと揺れているような気がして

夜、道は続くけれど
ぼくたちが
辿り着けなかった場所にばかり
灯油の匂いが残っている
止んだのかと思って 手を
翻すたびに ほら
雪の結晶が
ぼくたちには見えない時空を通って
記憶のなかを清めてゆく

夜、だれもいない街並み
浅く降り積もる雪に
いくつかの足跡
ぼくたちには夢があった
光がなければ
夢はみれなかった
そんな風にして ぼくたちは
窓から窓へ
光を探して歩いていった
いつか
生きていたことが幻に変わるとき
この世界をもういちど
見つけ出すことができるように

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