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The Art of Game Design

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美しいゲームデザインについて語ります。
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ゲームデザインを改善/批評するための時間構造モデル「ワンダールクス」

geekdrumsと申します。インタラクティブミュージックの連載でこのnoteをフォロー頂いている方が多いかと思いますが、実はそれと比べるとあまりバズってないゲームデザインの連載も書いていました。 たしかに本業はプログラマーだし専門は音楽なんですが、コミケで2度も「ゲームデザインの魔導書」という同人誌を頒布するなど、ゲームデザインの研究活動も同人レベルで行ってたりします。 この同人誌に執筆したのが、表題にあるゲームデザイン理論「ワンダルクス」です(魔導書という体裁のため、

ファイアーエムブレム風花雪月を300時間で3周してからが本番だった話

(↓のアカウントから記事を移転してきました) https://note.com/geekdrums_diary/n/n140420bfa00c 基本的にネタバレなしで、最後だけちょっとネタバレあり(手前で予告します)という構成にします。 公式サイトからわかる情報では (公式の情報も見ないでやりたいという人は注意) というわけで、作りからして興味を惹かれる構成になっています。 私はファイアーエムブレムは「覚醒」しかプレイしたことなくて、にわかの部類ですが、風花雪月はや

FE風花雪月の紋章xタロット本から読み解く、大アルカナの構造分析

(↓のアカウントから記事を移転してきました) https://note.com/geekdrums_diary/n/n3c40da521557 「ファイアーエムブレム風花雪月を300時間で3周してからが本番だった話」の派生で、長くなりすぎたのでアルカナ・タロット分析だけ別記事に分けたものです。 FE風花雪月をクリアした後にネットを探してたらここ最近読んだ文章の中でぶっちぎりで一番面白いブログ↓にたどり着き、タロットやアルカナの持つ面白さに触れるきっかけとなりました。 な

Outer Wildsで「宇宙の法則に触れた」感触がこの手に残っている

(↓のアカウントから記事を移転してきました) https://note.com/geekdrums_diary/n/n2967a31b2f51 本ブログは、Outer Wildsという傑作SFアドベンチャーゲーム(人によって「Portalに並ぶ」とか「Undertaleに並ぶ」とか「グノーシアに並ぶ」とか、とにかく人生で最も衝撃を受けたタイトルに比肩すると表現される)をクリアした私が、既にクリアして他の人の感想を漁ることしかできない所謂「Outer Wildsゾンビ」の方々

ゼルダの伝説 Tears of the Kingdomが取り戻した「アタリマエ」だった3Dゼルダの魅力

ゼルダの伝説 Tears of the Kingdomを、100時間かけてクリアした。その時の感動は忘れがたく、プレイヤーとしての満足感とともに、一人のゲームクリエイターとして、「こんなものを見せられて、俺はこの後いったい何を作ればいいんだ?」と、打ちのめされる感覚すら覚えた初めての体験だった。 まずこの記事ではネタバレはしない。ネタバレが含まれる批評については、別記事に分けたうえでそのリンクを貼るので、未クリアの方も安心して読み進めてほしい。 ただそうなると、絶賛部分が

【ネタバレ全開】ゼルダの伝説 Tears of the Kingdomをクリアした時の感動は、何だったのか

(注1)本記事では、ゼルダの伝説 Tears of the Kingdomのラストバトルを全てネタバレします。クリアした人だけ読んで下さい。まだクリアしてない人は、感動を奪いたくないので、引き返して下さい。 (注2)本記事は、以下のTotK批評記事のネタバレ部分のみ切り出した形式のものです。 両方お読み頂くと、より理解が深まると思います。 軽く↑の記事で説明した前提だけ共有しておくと、私は「BotW以前の3Dゼルダが大好きだった、BotWはちょっと自分の期待と違う方向に

Splatoonを通じて向き合う人間の弱さ

Splatoonを長らく(1,2合わせて3000時間以上)プレイしてきて、辿り着いた感覚があります。 それは、このゲームではSplatoonの知識や腕のみならず、人間としての強さが試されている、ということ。 Splatoonに限らず、格闘ゲームでもスポーツでも、よくできたゲームであれば同じことが言えるような気がします。 今回は色んなゲームや人生にも共通するかもしれない、人間の弱さについての教訓を、Splatoonをやっている方にもそうでない方にも共有したいと思い、筆を執

本気でゲーム依存に向き合う

香川県によるゲームの規制案について、あまりにもゲームを乱暴にまとめた議論が飛び交っているため、私なりに議論の根本的な前提について整理させてください。 ネット・ゲーム依存症対策条例案に関する状況整理先日(2020年01月09日)、香川県議会が条例素案としてネット・ゲームに対する規制を検討しているというニュースが世間を騒がせました。 条例素案については、コンテンツ文化研究会様が、「問題点が多く、緊急性も高い」として、入手された紙の資料を公開されています。(検索した範囲ではこの

「戦場のヴァルキュリア4」レビュー BLiTZが超越したジャンルの壁

戦場のヴァルキュリア4をクリアして、居ても立っても居られなくなったのでレビューを書きます。 戦ヴァル1の頃から既に完成していたと言われる秘伝の戦闘システム、「BLiTZ」(Battle of Live Tactical Zone systems)。 「戦略とアクション性を兼ね備えた」とか「アクションとシミュレーション、2つのゲーム性を同時に体験できる」とか、公式もゲーム誌のレビューもどこもかしこも「アクションとシミュレーションを足した感じだよ」くらいの言い方をしていますが

ゲームの「面白さ」とは「意識」と同じなのか?

CEDEC2018の次の講演がなかなか面白かった。 意識の統合情報理論 | CEDEC2018 https://2018.cedec.cesa.or.jp/session/detail/s5ae163a207655 このセッションを聞いて思いついたゲームの「面白さ」に関する仮説を提示してみる。大まかには以下のツイートで綴った内容となる。 「意識」とは何か「意識とは何か?」「脳と意識の関係は?」「AIに意識はあるのか?」 という哲学的な問いがあるわけだが、そういう話じゃ

「風ノ旅ビト」のアートは「想像が膨らまない」から美しい。

「風ノ旅ビト」のアートはなぜこんなにも美しいのでしょうか。 私は、アートの言葉ではうまく語れませんが、その理由をゲームデザインの観点から説明できると思っています。 それは「想像を膨らませていない」から。 え、逆じゃないの?世界について想像がふくらむデザインが良いんじゃないの?と思うかもしれませんが、その理由を解説します。 アニメーションなどと違って、ゲームでは「プレイヤーが何をすべきか、何ができるかを想像させないといけない」という話です。 ちなみに、なぜ2018年の