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紫のふわふわ妖精 色のある風景

ある日、要請が入りました。一緒に暮らす男性を追い出してほしいと。
結衣は依頼者のもとに赴き、観察することにしました。

彼女の持つ色は、真紅。カリカリイライラしています。
一方、彼のまとうオーラは蒼。海のように凪いでいます。
対照的なふたりには、これしかない。

***

結衣はバッグから専用マシンをひっぱり出し、スイッチを入れました。
同じように目を丸くしているふたりには説明すらせず、結衣は集中モードです。
割り箸を差し入れ、くるくると器用にまっしろな雲を巻きつけます。
持ちきれないほど大きくなった、まあるいそれをひとつ、ふたりに差し出しました。

受け取ったのは、彼。迷いもなく、彼女に譲ろうとします。
戸惑った彼女は「一緒に食べよ?」と言いました。
ふたり同時にふわりとした綿に唇をつけたとき、それは起こりました。

***

結衣の作った綿菓子の色が変化し、やさしい紫色に染め上がったのです。
青みがかった紫。
結衣のにらんだとおり、彼の気持ちのほうが強いようです。

調査報告を聞いた彼女は、泣きだしました。
立ち退き妖精は、取り下げになりました。

(おわり)

三羽 烏さんの企画「色のある風景」に参加いたします お世話になります

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