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one point

キャップにバッチをつけている。
黒いキャップに小さな赤いバッチである。

僕はそれがなんのマークなのか、気になっているが、そればかりチラチラみていると不審に思われてしまうから確認できない。
赤いバッチは何かのキャラクターのようである。
赤いキャラクターで思い浮かぶものがない。
アカレンジャーぐらいしか。
じゃあ、アカレンジャーなんじゃないの。
そうかもしれない。
黒いキャップにアカレンジャー、好きなのだろう。
さぞかし、アカレンジャーが好きなのだろう。
しかし、いささか主張が過ぎる気がする。

ここは葬儀会場である。
黒いキャップをかぶってくる、というのも褒められたものではない。
最近は自由な風潮だから、違いを認め合おうなんて言ってるぐらいだから、多少は目を瞑ってくれる。
けれど、葬式の時に黒いキャップはいただけない。
芸能人ならまだ、わかる。アーチストならわかる。
そういう風に自分を表現してきた人たちなのだから、葬式だって妥協しないはずだ。

彼はそうなのか、知らない。
そうかもしれない。
けれど説明がない。誰も彼のことを知らない。
だから、どうしてここにいて、座っていて、故人の知人なのだろうか、と考えているけれど、いや、接点がない。
年の差、キャラクター、結びつかない。

黒いキャップだけなら、まだ、許せるとして、さらにアカレンジャーである。

青天の霹靂とはこのことか。

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