野良のハナ

無計画に日本を出て十年、欧州4カ国で生息、スペインの島に漂着。集団や組織になじめずノラ…

野良のハナ

無計画に日本を出て十年、欧州4カ国で生息、スペインの島に漂着。集団や組織になじめずノラ犬のように生き、犬のケツばかり追っている人。強烈な認知の歪みの泥水の中ほふく前進中。要点を端的に話すことが壊滅的で、路上で全所持品を広げて裸で勝手に蚤の市状態の会話力で、人様を困らせています。

最近の記事

いかなるルールも例外あり、強烈な人を受け入れる寛容な世界

最近姿を見なくて、どうしているのかなと気になる人がいます。その人は名前も知らないおばさんなのですが、私たちが今の場所に住み始めて一年半くらいの間、頻繁に、近所のカフェテリアや、時々道で歩いている姿や、ベンチに腰かけている姿を見かけていました。 ふくよかな体型に白髪の短髪、70代くらいの女性で、おそらく地元の人だと思われます。赤いカーディガンに白いカットソー、ひざ下丈のキュロット、素足にサンダルで杖をついています。便宜上、おもちさんと読んでみます。 おもちさんは、私と相方が

    • 海で溺れかけたシェフの最高チーズケーキ

      島で一番おいしいチーズケーキを出す店があります。あくまで私たち(相方と私)の個人的な舌による「一番」です。 トーストと新鮮な野菜や卵、パンケーキなど、ブランチといった雰囲気のメニューで、テーブルは10もなく、シェフとウエイター2人でまかなうのにちょうど良さそうな規模です。 店内奥のガラス張りの作業スペースには、食材の入ったタッパーや瓶、調理器具が規律正しい工場のように並んでいます。店内を見渡せるオープンキッチンの壁は、お気に入りのフィギュアを棚に並べた完璧な趣味の部屋のよ

      • ワイルドでディープな自転車泥棒

        ベルリンに住んでいた5年間に、私は自転車を買おうと思ったことが一度もありませんでした。街は平地で道幅も比較的広いので、かなり自転車に乗っている人は多かったのですが、個人的には自転車を購入して所有する気になりませんでした。 その理由は3つ、1つ目は交通機関がわりと充実しているからなんとかなる、2つ目はそれまでスーツケースで引っ越しをしてきたので所有物を増やしたくなかった、3つ目はシンプルに自転車は盗られるから、でした。 相方の職場で、同僚が素敵な自転車を買い、通勤で乗ってき

        • 己が期待するように届くと思うなかれ

          郵便物や宅配がすんなり届くことは、私にとっては、生卵を割ったら卵黄が二つあって「わ〜双子だ!」と感動するよりも、はるかに大きな興奮です。 国によって物流事情は異なるものの、現在私が住んでおりますスペインへ日本から物を送ると、これは「物事は自分の思うようにはならない」ということを学ぶための修行なのかなと、思わずにはいられません。 自分は無力であり、力が及ばないことを受け入れ、あるがままを静観し、感情が揺さぶられないための精神的な訓練を、スペインの税関が居住者に親切心で提供し

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          活き活きと使われるののしりの言葉

          英語圏の映画やドラマで、よく「シット」とか「ファック」とか、怒りや苛立ちを表現する場面で耳にすることがあります。 テレビ番組だと「ピー」となっていて、あぁあんなにどこでも聞く言葉なのに、公共放送ではまずいんだなぁ、みんながよく使うからといって、それでも社会的に受け入れられる言葉では無いのだなぁ、と感慨深くピーを聞いたりします。 以前、アイルランド出身の女性と話していた時、何か彼女にとって不都合なことがあったばかりで、はらわた煮えたぎっている様子でした。 彼女は教職につい

          活き活きと使われるののしりの言葉

          日本人だから知ってるでしょ?偉大なる二次元の力

          なんでもない無名のアジア人が、時に日本代表の存在になることがあります。海外で生きていますと、初対面の人が、私が日本人だとわかると、自分が持っている日本関連ネタを、「日本人なら知ってるでしょ」と豪速球で投げてきます。 私はぼんやり生きており、何にも詳しくない人間でして、その日本関連ネタに反応する筋肉を持ち合わせていません。そのため、豪速球を受け損ない、だいたい小指を折ったり鼻血を出したりするのが常です。 これまでに、お経の意味、ミフネ、パソコンのキーボード、ヒロシマについて

          日本人だから知ってるでしょ?偉大なる二次元の力

          最も重要な法律 〜由々しき言い間違い〜

          間違うことで人は学ぶ、恥をかくことを恐れるな、と言われますよね。 私は外国語の読み書きはなんとなくできるけど喋れない、という典型的な日本人です。かつ、そもそも母国語でも喋るのがあまり得意でもなく、お世辞にも会話が上手な人間ではありません。 ただ外へふらふら1人で出かけるのは苦ではないので、バーやカフェの隅っこで黙ってビールを飲むという行為をよくしていました。 私が出かけるのは、客がいなくて、安くて、Wi-Fiがあるバーです。あまり繁盛していない店か、繁盛してはいるけど開

          最も重要な法律 〜由々しき言い間違い〜

          ツヤ髪のナスと粋なサハラのお兄さん

          レストランは料理がおいしくても、ウエイターさんが残念だと、割り切れない気持ちになります。口に入れて舌で感じる風味と取り込む栄養分は変わらないのだから、素晴らしい料理が味わえるならウエイターは関係ないじゃないか、とはならず、やはり自分は感情的な生き物なので、全体的な体験として記憶に残ってしまいます。 飲食店の店員さんには、心が氷点下になっているのかなという人もいれば、善意でがんばってるのだろうけど何か噛み合っていなくて、空回りしているような人もいます。もちろん、私の貧困な想像

          ツヤ髪のナスと粋なサハラのお兄さん

          ポメさんの人生と平行線が交わる点

          最近は、ワイヤレスのイヤフォンを耳につけたまま通話をしている人が珍しくありませんから、そばで誰かが1人で喋っていても、まあ誰かと通話中かな、くらいに思って、あまり気にとめませんが、以前であれば、あれ?独り言かな、それともイマジナリーフレンドと会話中かな?と、意識を向けたものです。 先日、おや?これは、独り言かと思ってたけど、もしかして私に話しかけている?となったことがありました。 ある晩、近所の船長の店で、鉢植えと同化して私は中庭の端に座っていました。私はカフェやバーでは

          ポメさんの人生と平行線が交わる点

          融通のきくレジ精算というものが、この世にはある

          私はとっさの機転とか、不測の事態にパッと対応するということが不得手な人間でして、もし私がアクション映画の主人公だったら、最初の爆発とかアクシデントですぐに死んでしまうので、物語は10分くらいで終わってしまいます。そんな映画、つまらなすぎて、きっと観客が返金を求めてチケット売り場に殺到しますね。 世界というものは、もっとフレキシブルで、適当で、しなやかなのだと、私は最近になり学んでいます。 アジアンスーパーマーケットに豆腐を買いに行きました。中国系の店でよく見られるように、

          融通のきくレジ精算というものが、この世にはある

          アーティスト桃太郎と仲間たち、カエルの背中革命

          アーティストという人たちと話をすると、世間の常識や一般的な安定とかけ離れた生活をしていて、いろんな生き方があるのだな、と興味深くききます。 世の中には、どうやって成り立っているのかよくわからない商売や、どうやってそこまで到達するのかよくわからない職業があると思います。スズメの交尾は見たことがなくても(見たことありますか?)、スズメの繁栄が成立しているように、プロセスがわからなくてもいろんなことが事実としてあるわけです。 私は職業アーティストの知り合いがいなかったもので、そ

          アーティスト桃太郎と仲間たち、カエルの背中革命

          日本人だから知ってるでしょ?あの街って今大丈夫なの

          たびたび、日本について聞かれて、なんて言ったらいいのだろうと、私は考えてしまうことがあります。 外国の方が投げてくる日本に関する質問ボールは、通常ぼんやり生きていると予想しないような方向から飛んできたりするので、だいたいデッドボール。私は横腹で受け、拾い損ねて、あたふたと四つん這いで玉を追いかけます。 よくあるのは、出身地にまつわる小話についてです。 出会った人にどこ出身?と聞かれて、私は「日本です」と答えるわけですが、しばしば、一歩踏み込んで「日本のどこ?」と聞かれま

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          壁の脱腸と気にしすぎのポリス

          私が住んでいるアパートの階下の部屋に、エアコンの取り付け工事をするため業者がやってきました。階下の住人は、工事に立ち会いません。 なぜなら、彼らはイギリス人で、このアパートには年に2〜3度来る程度、普段は住んでいないからです。我々は賃貸で常時くらしていますが、彼らにとってはホリデーハウス、つまり別荘であり、年間の9割以上はただの無人の空間として鎮座しています。 エアコンの取り付け工事は、騒音は正直うっとうしいですが、それはいろいろお互い様でしょうから受け流します。すぐ吠え

          壁の脱腸と気にしすぎのポリス

          チップどろんこ相撲

          日本には飲食店でチップ文化がないので、アメリカみたいに最低15とか20%はチップをあげないといけないというプレッシャーにおののく必要がないですから、利用者としては気がラクだと思っています。 逆に、チップ文化の人たちからしたら、日本でとっても素敵なサービスをしてくれたウエイターさんに、チップをあげたくなっちゃう衝動は一体どう処理したらいいの、この満足感この感謝はどう表現したらいいの、となるのではと想像します。 私がただ今おりますスペインでは、チップ圧力は強くなく、みんな小銭

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          犬撫でアジア人のトゥルーマン・ショー

          知らない人から、「前に会ったことがある」と言われるのは、ひやっとするものです。自分にとっては見覚えがない人なのに、相手は自分を知っている、とても奇妙なミステリー小説のような展開です。いつどこで、どんな場面で会ったのか、子どもの乳歯のように抜け落ち、記憶から失われています。 異国の地で生きていると、どうせ誰も私のことなんて知らないし、気にもとめてないし、と、後先考えずに行動することがあるのですが、実際には人は思った以上に他人のことを記憶しているもので。 私は、完全に初対面だ

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          アーティストという人:汗ばむ陽気の日に、クールにジャケットを着続ける画家

          私はあまり自分を信じることができない人間なので、アーティストという人たちに会うと、自分を信じていてすごいなと、いつも感服してしまいます。 安定や低リスクを求める場合、通常人々は企業など何かしらの集団に属して働くことを選択するのが一般的ですが、アーティストたちは、始めは生活していけるかわからないリスクをとって、自分が創造するアートを信じて活動しているのですよね。 当然ながら、「自分としては全然良いと思わないし、やりたくないんだけど」と言いながら専業でアーティスト活動し続ける

          アーティストという人:汗ばむ陽気の日に、クールにジャケットを着続ける画家