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おいしいコーヒーの真実

おいしいコーヒーの真実

スターバックスの第1号店というだけあって、米シアトルにあるその店はずいぶん繁盛している。新人店長は目を輝かせながら自社の理念を語っている。
「まだ道半ば、未来は明るい。」

同じころ、その「スタバ」で飲まれているコーヒーの原産地では、ひどくやせ細った子供が、お腹をすかせて泣いている。この地域では人々が深刻な飢餓状態にある。

彼らが必要最低限を満たされた生活を送るには、生産したコーヒー豆に、現状(

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わたしのクリスマス・ムービー

わたしのクリスマス・ムービー

7、8年前だろうか。12月のある日、クリスマス映画でも見ようかとレンタルビデオ屋へ行った。有名なものはほとんど借りられてしまっていて、この映画だけが、棚にぽつんと残っていた。『NOEL(ノエル)』というタイトルはクリスマスそのものだというのに、なんだかかわいそうになった。ちょっとふしぎな縁を感じて借りて帰った。それがこの映画との出会いだった。

わたしは当時、恋人にひどいふられ方をして、どうしよう

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サクラさん  (映画『めがね』)

サクラさん (映画『めがね』)

「ああ。サクラさんは、桜か。」
昨日の昼下がり、洗濯物を干しながら気がついた。『めがね』のサクラさんは、春の桜だ。

サクラさんは、毎年春に島へやってきては、そっといなくなる。もたいまさこさん演じる、不思議な佇まいの中年女性なのだが、「なんだかこの感覚には心当たりがあるな」と、そんなふうに思わせる人物だ。

彼女が島にやってきた日は豪華なお弁当でもって歓迎され、毎日のように宴がひらかれる。サクラさ

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『生きる』

『生きる』

黒澤明監督の『生きる』を観た。
このところ自分の深い深いところで燻っていた感情に、意味を与えてもらった気がする。
けれどそれらは、「日常」に戻ればまた見失ってしまうものだ。映画の最後、いつもと何ら変わりなく役所仕事をこなす同僚たちのように。
気付いたからといって、自ずから人生が変わってくれるわけじゃない。

「あの公園で、死ぬ間際に主人公がうたった歌。あんな歌をいつかわたしは歌えるのか。」

そう

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うそ

うそ

黒澤明監督の『羅生門』を観た。

人間は弱いからうそをつく。わたしも弱いからうそをつく。
本当のことを「本当に本当のまま」言う人間などいるのだろうか。

事実とはおそらく、人を媒介する以上、ありのまま保存されることはない。映像や紙面はさることながら、人の言葉だって、都合よく切り取られたり色付けされたりして伝えられ、それを見聞きした者を媒介して、また違うモノへと作り替えられていく。幾度も伝達と編集を

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