綿原 衣都

こんにちは、綿原 衣都(わたはら いと)です。 北海道に暮らす主婦です。精神疾患と…

綿原 衣都

こんにちは、綿原 衣都(わたはら いと)です。 北海道に暮らす主婦です。精神疾患と腎臓の病気と甲状腺の病気をもっています。でも、たいていはあかるく暮らしています。2024年3月に絵本を電子書籍で出版しました。毎日の暮らしのなかに、美しさを見いだせる、そんな精神でいたいです。

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絵本作家でもある、綿原衣都が自分の想いを書き綴ってゆく。だれにも普遍的なものの話や、身近な出来事、絵のこと、仕事のこと、普通に生きることについて、真正直に人生を生きている尊い人たちと、分かち合いたい。人生の意味を問うている人たちに言葉を届けたい。

  • 生きること、生活すること

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最近の記事

「今日の短歌」春がすみ、いま

10歳も年下の君 でもわたし 少女の心で慕うすずらん 春霞見えないあなたを感知する 見えなくていい光はこわい サボテンの葉の新芽のまぶしい日 ジャケットに縫う金色りぼん 鉛筆の線だけで描く人物の 表情決まらず涙も枯れる 風邪の日のティッシュペーパー無造作に 捨てられてゆくいのちそれだけ

    • 煩いごと

      春が進んできました。 札幌でも藤が咲き始めました。つつじ、ゆきやなぎ、たんぽぽ、どうだんつづじ、ライラックなどが咲いています。 花は昨年と同じように咲きます。 わたしの心はなんと変わってしまったことでしょう。 わたしは悩みなんかぜんぜんない、という平和なところで暮らしていたのです。 今のわたしは煩いごとでいっぱいです。 それも人には言えないような。 どこからこんな気持ちが降ってきたのでしょう。 わたしは――人を想う苦しさのなかにいます。 花がどんなにきれいに咲いても、わたしの

      • 「短歌」あなたは遠く

        初めての優しい恋に笑えない あなたは遠く手ものばせない 君と行く海でありたし波もまた 君の足もとわたしがすくう #今日の短歌

        • 「♯今日の短歌」ないしょばなし

          だれにさえ言わないでいる恋心 この世をはみだすこれはガラスだ 自分のこと知らなかった戸惑って 鏡を見るも深みは写らず 一日を2人だけで過ごしたい 君を真っ直ぐ見ていたいから 好意さえためらってしまう有夫恋 瞳を見るもすぐにうつむく あなたのいるこの部屋は特別で 笑顔は天まで飛ぶかのようだ ないしょの恋初めての感情 なにも変わらず日々は過ぎるが

        「今日の短歌」春がすみ、いま

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        記事

          果てしない流氷 2

          ガリガリッと、流氷を砕く音が聴こえます。 流氷はそのくらい厚いんだなと思いました。こんなにも広い氷の世界。この氷の下、どんな魚たちが息をしているのだろう。アザラシもいるのだろうか。 氷に閉ざされた世界で、なにを見、なにを思っているのだろうか。 ガリッ、とガリンコ号が、大きな流氷に乗りあげて、止まってしまいました。流氷はそのくらい硬いのです。何回か、氷を砕くために前後に動きました。 しばらく待っていると、やがてまた船は動き出しました。沖へ行くほどに、海は白くなっていきます。白

          果てしない流氷 2

          果てしない流氷 1

          流氷を見たら、なにか変わるかな、と思っていました。 テレビや写真でしか見たことのない白い世界。 北海道で暮らすことになるなんて、思ってもみなかったし、北の海に憧れる気持ちはあったけど、そんなに遠くへ行けるわけがないと思っていました。 流氷。氷の海。 どんなものなんだろう。 わたしは想像もつかずに、紋別へ行くバスに乗っていました。紋別は北海道の東のほう、オホーツク海に面しています。札幌からはバスで四時間四十分かかります。長い旅です。 夫が紋別で、流氷を割って進むガリンコ号に乗

          果てしない流氷 1

          「短歌」 含羞草(おじぎそう)咲く

          人のこと妬むことなく羨まず うなだれながら含羞草咲く 耳を撫で吹きすぎてゆく寒風に 温さを許さぬ この恋ありて 一日がひび割れることなく終わるとき 仮面を外すどこにもない自己 過ちは過ちのままありすぎて 今日のてのひら笑う線なし 病む日にも罪と生きつつ左手の 自傷の痕と愚かさを抱く いつかまた笑うだろうか歌うかな ランチボックス空のままある 椿色口紅塗って車道を見 覚悟を決めた終着はここ

          「短歌」 含羞草(おじぎそう)咲く

          海の愛ことば

          加賀にいた頃、よく海を見に行きました。 尼御前岬と塩屋海岸です。 どちらもわたしの家から20~25分くらい車で走れば着きました。 石川県は、南が加賀地方、真ん中に金沢、北が能登地方に分けられています。わたしは加賀市という、加賀地方でも南西の端、福井県との県境の町に暮らしていました。 尼御前は、崖から海を見下ろします。悠然としていて、吸いこまれそうな景色です。 わたしは朝陽が昇る頃行くのが好きで、あたりが赤く染まり、空はなおのこと赤い、そんな明け方の、濃淡にとんだ赤の混ざり具合

          海の愛ことば

          「短歌」海と想いと

          海は泣く悲しみの記憶揺り返し 無数の死体ここに眠れば 波しぶき白いレースの綾模様 まとって歩けばこの海になる 濃い青の海を見ながら泣いていた そんな日もある深い生には 強い風揺れる葉音の音に似て ひとりを楽しむわたしを笑う いつか見た鯨は今はどこの海 また会えたならともに笑おう 光さす海流に乗りどこへ行く 今日も昨日も時のない魚

          「短歌」海と想いと

          「短歌」いとしいコタ

          わたしはコタという黒ねこを飼っていました。 コタは2007年8月30日にうちに来て、2016年9月5日に、原因不明の病のため、この世を去りました。 コタはとてもいい子で、「コタ」と呼ぶと「にゃん」と返事をし、わたしが泣くと、膝にあがって、じっとしていました。 賢くて、明るくて、人見知りをしないコタ。 コタにはたしかに「にゃん徳」がありました。 そのコタを偲んで、書いた歌です。 答などわかるはずない向こう岸 手も届かないコタのいる場所 コタのいるあの彼方には白い雲 溶かして

          「短歌」いとしいコタ

          「短歌」春のなかに

          春のなか 手をつないでいく二人見て わたしの君はどうしているか 遅くとも花はまた咲く札幌の 街にも薄着のスカート増えて 精神をあかるく染める夢をみた 鈴鳴るような星見える夜 安らかな寝顔ひとつがあればいい 夕べの諍い 影をなくして やまないで あなたの傘で歩きたい 歩幅は合わない けれどふたりで 揺らぐのは心ではない見えるもの 我の笑顔や君のため息

          「短歌」春のなかに

          生きていく目標

          21歳のとき、わたしは生きていく目標をたてました。 当時は高校中退のアルバイト、という地盤のぐらぐらした、頼るなにもない(学歴がない、資格がない、職歴もない、もちろん独身)状態でしたが、出した答は「霊的な成長」でした。 霊的、つまり魂的に成長したい、と思ったわけです。 こんなことを考えていたから、周囲からは浮きまくっていました。 わたしもこのとき、現実的な目標をたてて、資格のひとつでも取っておいたら、その後の人生はずっと楽だっただろうと思います。 楽だったかもしれないけれど

          生きていく目標

          童話 「聖夜」

          美月と瑞樹はおたがいに一目惚れでした。出会った瞬間に恋におちました。 星ひとつない真っ暗な夜でも、2人はその気持ち故に、おたがいの白い整った顔を見分けることができたのです。 美月は瑞樹をこの世のどんな男性よりも、雄々しく立派だと思いました。 瑞樹は時折、赤く熟したりんごをくれました。それは、とても甘くて瑞々しく、美月の喉を潤してくれました。 瑞樹は美月をこの世のどんな女性より、美しくて愛らしいと思っていました。美月は時折、太陽がくれたのだという、壺に入ったはちみつをくれま

          童話 「聖夜」

          「短歌」夜の恋

          ここ数日で書いた短歌です。   別れるは決まっていたこと縁はない いっしょに歩くと そっと下がって 10年後あなたといないきっとそう 道は分かたれ 夕暮れふたつ 野心など持ったことない夢もない あなたといると未来が分かれる 君がいま育てる花壇を見てみたい この真昼に強い花咲け あなたへの気持ちは開かずの間に仕舞う 忘れた頃に笑んであげる

          「短歌」夜の恋

          おしゃれという矜持

          わたしは、よくおしゃれだと言われます。 わたしの年からいうと驚くかもしれませんが、お嬢さんぽい服が好きです。 このあいだ、友人とコンサートに出かけたときは、オレンジのレースのついたブラウスにオレンジのカーディガン、真っ白なロングスカートでした。 こんな感じでレースが大好きで、きれいなスカートが好きです。 いつも新しい服ではなく、何年も着ている服もたくさんあります。 なぜ、いつもおしゃれをしているのかといえば、わたしらしくありたいからです。 よれたシャツに ぼろぼろのジーンズを

          おしゃれという矜持

          質のよさがわかりますか

          この頃、わたしがなんとなく感じているのは、ものの質というものと、評価は正当に釣り合ってはいないということだ。 質というものは、語るのが難しい。 価格が高ければ、質がいいということは多くは当たっているのだが、必ずそうだというわけではない。同時に価格の安いものがすべて粗悪品ということもない。 世の中は雑多なものであふれているから、ほんとうに質のよいものを見つけるのは難しい。 わたしも貧乏なので、安いものばかり買うけれど、布巾はアフタヌーンティで買うとか、メリハリはつけている。(そ

          質のよさがわかりますか