前編ではこども基本法がなぜ必要なのか?について解説しました。
後編では『こども基本法』の具体的な内容や、こども基本法が成立することで、どのような変化があるのか?について解説していきます。
園長コマツ
とある私立認可保育所の園長です。 子どもや保護者、職員みんなが活き活きと暮らせる保育園へ向けて悩みながら改革中。 自分の取り組みや学びをNoteを通して発信します。 プライベートでは二児の父。 好物はハンバーグ。
こども基本法の内容
こども基本法の内容について解説していきます。こども基本法は二十条で形成されています。大まかな流れはこのようになっています。
ポイントを解説します。こども基本法マラソン、スタートです✨
第一条 目的
文章だと、少し読みづらさがあるかもしれません。要約すると「全てのこどもが権利を守られながら、幸福な生活が送れるよう、基本的な考え方や国がやるべきことを明確にし、こども施策を推進していきますよ」ということです。
改めて「こどもの権利条約にのっとること」や「こどもの権利擁護をはかること」が法律として明記されています。私たち大人は、法的にも「こどもの権利」に、ちゃんと向き合わなければいけないわけですね。
第二条「こども」の定義
第二条では「こども」や「こども施策」についての定義がされています。
こども基本法上のこどもは「18歳以上」ではありません。「心身の発達の過程にある者」と定義されています。
「こどもに関する施策」と「一体的に講ずべき施策」とは?
こども基本法におけるこども施策は大まかに2つの施策に分けられることになります。それが「こどもに関する施策」と「一体的に講ずべき施策」です。「こどもに関する施策」については以下の3項目が当てはまります。
こどもが生まれ、育ち、親になり…生涯を健やかに過ごせるような支援のことを指します。「一体に講ずべき施策」とは以下のようなものが当てはまります。
「一体的に講ずべき施策」とはダイレクトにこどもに関わるものではありませんが、教育・医療・雇用など間接的に関わる施策です。
こどもが健やかに育つには環境を整えることが大切ですからね。
第三条 基本理念
基本の理念についてです。このままだと少し読みにくいので、ポイントを整理します。
①~④に関してはこどもの権利条約の基本原則が盛り込まれている所がポイントです。
このポイント6つが守られるような社会にしていきたいですね✨
第四~七条責務等
第四~七条は責務等が記載されています。
国から、地方公共団体、事業主、個人…と要するに「全ての人がこの法律を守らなければいけません」という事が記載されています。
第八条年次報告
第八条には国に年次報告の義務が課せられていることが記載されています。
少子化対策、こどもの貧困対策など…このように法律で報告を義務化することで取り組みを積極的におこなっていかなければならない根拠となります。
基本法が成立することの重要さはこのようなところにありますね。
第九条こども大綱
第九条はこども大綱について触れられています。
日本ではこれまでに、こどもにまつわる施策として、以下の大綱を作成してきました。
少子化社会対策大綱
子ども・若者育成支援推進大綱
子供の貧困対策に関する大綱
こども関連の諸問題をそれぞれバラバラに施策をしてきました。しかし、これらの問題は社会の構造と複雑に絡んでおり、単体の問題を解決するのは困難です。こどもにまつわる問題をちゃんと整理し、1つにまとめたものが「こども大綱」となります。
こども大綱は令和5年12月22日に公表されています。国として、子ども政策の方向性を示した重要な指針ですね。
こども大綱(こども家庭庁PDF)
第十条都道府県こども計画、市町村こども計画
第十条は、こども大綱に沿って都道府県や市区町村はこども施策について計画するように、という旨の文章が記載されています。ここでの注意点はあくまで「努めるものとする」ということなので、努力義務ということです。
ここで折り返し地点です!残りも頑張っていきましょう✨
第十一条こどもの意見反映
第十一条ではこどもの意見反映について記載がありました。ここで言う「国」は行政だけではなく、司法や立法も含まれているそうです。こどもに関わる施策を取り扱う際は「こどもの視点」を考慮されるようになります。このことは「こどもの権利条約」第十二条にも記載されています。
ここでのポイントは2つです。
こどもの意見をどうやって聴く?
こどもの意見をなんでも反映させる?
そもそも子どもの意見をどうやって聴いていけばよいのでしょうか?現在では以下のような例が挙げられています。
「こどもの意見」って…どうやって聴く?
具体的にどのような措置の場合意見を聞くのか?頻度は?どの程度反映するのか?など意見を聴いたうえで施策へ反映するかどうかは、その施策によっても異なります。
また、こどもは発達の途上であることから、意見をいうことが難しい場合もあります。ファシリテーターやサポーターのような役割の人がうまく場づくりをしながら、意見を聴いていく必要があります。
こどもの意見はなんでも反映させるべき?
こどもの意見を政策に取り入れることに疑問を持つ人もいるかもしれません。先ほども記載した、「こどもの権利条約」に関して意見表明についてはこのように記載されています。
権利というものは「自己決定能力」と「自己責任」がワンセットになっています。「自己決定」をする代わりに「自己責任」が伴うのです。しかし、こどもには責任を果たす能力はありません。「自律した大人」への発展途上だからです。
だからこそ、こどもには「発展途上という特性」を考慮した権利が必要になります。そこで、「意見を表明する自由」はあれども大人は「年齢及び成熟度に従って相応に考慮」しなければいけない、というわけです。こどもの意見を全て取り入れる、というわけではなく、意見を聴き、そのことは「こども基本法案」にも明記されています。
こどもの意見を積極的に聴いていきたいですね✨
第十二条総合的かつ一体的な提供のための体制整備
第十二条では「こどもの施策は総合的かつ、一体的におこなうようにしてください」という旨が記載されています。なぜ、わざわざこのような事が記載されているのでしょうか?
それは子ども政策には「3つの壁」というものがあるから、とされています。
この壁を取っ払い、総合的にすすめるよう、法律で明記することは大切なことだと思います。
第十三条、第十四条関係者相互の有機的な連携の確保等
第十三条・第十四条ではこども施策の円滑な実施をするために、各関係機関が連携を取ってくださいねという旨が書かれています。こどもの問題を解決しようとした際に、医療機関や教育機関だけで解決しようとしても、無理が生じる可能性があります。
こどもの目線に寄り添った、子育て支援団体や民間団体など巻き込んで問題解決を図ったほうが良いケースもあります。そのため、各関係機関が連携を取り合うよう、法律で定めることが大切なのです。
協議会の設置などが想定されているようです。
これらは根拠の違う法律のもとに協議会が設置されています。非常にややこしいですね。これらを総合的に統括する法律としても、こども基本法は有効だと思います。
第十五条この法律及び児童の権利に関する条約の趣旨及び内容についての周知
第十五条はこども基本法や権利条約を周知する内容が記載されています。2019年に日本財団がおこなった3万人規模のアンケートでこどもの権利条約を聴いたことがない大人は約4割にものぼりました。
「内容までよく知っている」2.2%と「内容について少し知っている」が14.2%です。内容について知っている大人は合わせてもたったの16.4%です。今後、もっとこどもの権利やこども基本法について広く知られることを願っています。
あと少しでゴールです!ファイト~!
第十六条こども施策の充実及び財政上の措置等
第十六条は財政についてです。第十六条でしっかりとこども施策の充実と、その実施に必要な予算をつけるよう努力する義務があります。こども家庭庁の予算は年々増額しており、政府としても子育て支援はかなり力をいれようとしています。
前編でも記載しましたが、日本はこれまで、こどもへの支援にあまり力をいれてこなかった国です。これから、予算をつけ、子育て環境を改善しようとしていますが……今後の動向を注視していきたいですね。
第十七条~第二十条こども政策推進会議
こども政策推進会議の中で「こども及びこどもを養育する者、学識経験者、地域においてこどもに関する支援を行う民間団体その他の関係者の意見を反映させる」としっかり明記されています。
今後、こども大綱が推進され、子育てしやすい政策がどんどん行われていくと良いですね!
これで「こども基本法マラソン」ゴールです!おめでとうございます!よく頑張りました✨
お疲れ様でした!
ここまで、こども基本法の内容を確認しながら、解説してきました。
こども基本法について、国の考えている子育てについて、少し理解が深まったのではないかと思います。子ども達が健やかに育つために、大人がこども基本法を学び、守っていく姿勢が大切だと思います。今回の記事がその一助になれば、とても嬉しいです。
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