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「カレー移民の謎 日本を制覇する『インネパ』」〜カレー屋の秘密と日本の将来

室橋裕和著「カレー移民の謎 日本を制覇する『インネパ』」(集英社新書)、どこかの書評で目に入り読み始めたのだが、週刊文春、毎日新聞など、各所で続々と取り上げられている。

“インネパ“とは、インド・ネパールのことである。インドの人口が約14億人、ネパールは3000万人程度。それでは、日本で暮らす両国民はどの程度だろうか。本書に、「在留外国人統計」からの数字が掲げられている。

2023年の在留人数 インド46,262人 ネパール156,333人、ネパール人の方がはるかに多い。

どのような在留資格で、これだけのネパール人が日本に住んでいるのか。
「技能」14,020人 「投資・経営」2,493人 「留学」45,095人 「家族滞在」45,987人

本書によると、この中の「技能」のかなりの部分がカレー屋の料理人、「投資・経営」も多数がカレー屋経営のようだ。

私がレストラン探訪に興味を抱き始めた1980年代、インド料理店は特別な存在だった。本書でも紹介されている「アショカ」「モティ」、銀座の「ナイルレストラン」。今も健在だが、特に前2店は高級店のイメージもあった。

それがいつの間にか、“インド料理“店は増え、気軽にランチを取れる場所にもなった。多くのインドカレーは、日本人の口に合うように改良されたものだろう。私は一度だけインド・ムンバイに出張したことがある。現地スタッフに連れて行ってもらった比較的高級なインド料理店のカレーは、塩気が強すぎた。日本あるいはロンドンで食べる“インドカレー“の方が美味しく感じた。

そんな“日本風“インド料理店の大部分がネパールからの移民で支えられているのだ。

試しに、「食べログ」サイトで、地域に東京都、キーワードにXX料理と入れて検索してみた。結果は次の通りである。
インド料理 1,283店  ネパール料理 540店  タイ料理 849店  
ベトナム料理 341店 スペイン料理 462店

ネパール料理店のランキング上位には、ネパールの定食“ダルバート“や、ネパール式餃子“モモ“といった本格的なネパール・レストランが並ぶが、ランキングが下がるにつれ、カレーやナンの写真を前面に出した『インネパ』レストランが目立ってくる。

日本におけるインド料理店の起源から、それがなぜネパール移民による一大勢力外食産業となったのか、その“謎“について本書はせまっていく。

「カレーの謎」は、一つのテーマとして非常に面白い。ネパールという国を理解するための一助となる。と同時に、日本の置かれた現実を見つめることにも通じていく。さらに、日本でしばしば話題になる“地方消滅“という現象は、もしかしたらグローバル・ベースで起こっているのではないかとも感じさせられる。

もう一つ、先日ご紹介した「フィリピンパブの⚫︎⚫︎学」シリーズにも通じるのだが、移民を受け入れるホスト国としての日本、その責任についても考えさせられた一冊でもある


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