一田和樹のメモ帳

広義の文筆家。小説家と呼ばれることが多い。明治大学サイバーセキュリティ研究所客員研究員…

一田和樹のメモ帳

広義の文筆家。小説家と呼ばれることが多い。明治大学サイバーセキュリティ研究所客員研究員 https://ichida-kazuki.com 連絡先 https://ichida-kazuki.com/post/650695238157058048/

マガジン

  • デジタル権威主義

    デジタル権威主義についての情報を発信してゆきます。 当面は備忘録代わりにニューズウィーク日本版などに発表した記事の資料を掲載します。余裕できたらオリジナル記事を書くかもしれません。

  • 民主主義の現在

    民主主義に関する資料や記事などを紹介します

  • 余談ですが……

    日常的なものごとです

  • ファクトチェックを取り巻く課題

    ファクトチェックを取り巻く課題をビジネスなどの側面。特にパトロンとなっているフェイスブックやグーグルの問題点を取り上げています。

  • 2022年ウクライナ関連

    ウクライナ関連のネット世論操作などの記事です

最近の記事

「ナラティブ戦争の国際政治学ーー標的になる民主主義」は学際的な視点で誤・偽情報の今を学べる貴重な連載

フォーサイトで昨年末から始まった連載「ナラティブ戦争の国際政治学ーー標的になる民主主義」(市原麻衣子、 https://www.fsight.jp/subcategory/ナラティブ戦争の国際政治学ーー標的になる民主主義 )は国際政治学、安全保障など学際的な視点で現在進行形の誤・偽情報、認知戦、デジタル影響工作を解説している貴重な連載だ。 いまのところ、下記の3本を読むことができる。 ・イスラエル・ハマスを巡る虚偽情報とナラティブにみる国際政治の変容(2023年12月8日)

    • 「From Coercion to Capitulation」が描く非軍事手段による台湾併合シナリオ

      The American Enterprise Institute (AEI) と the Institute for the Study of War (ISW)の共同プロジェクト Coalition Defense of Taiwan によるレポート「From Coercion to Capitulation」( https://www.aei.org/research-products/report/from-coercion-to-capitulation-how-c

      • これまでの誤・偽情報、認知戦、デジタル影響工作に関する見直しのまとめ

        目についたところから誤・偽情報、認知戦、デジタル影響工作に関する見直しを取り上げてきたが、人に説明する機会が増えてきたのでここまでのところをまとめてアップしておきます。 過去記事を全て網羅しておらず、重要なもののみになっているので、全部知りたい人はすみませんが、過去記事を麻ってください。 ●要約中露イランが行ってきた誤・偽情報作戦、認知戦、デジタル影響工作の効果は検証されていないため、その脅威の程度や優先度は明らかではない。対策についても同様でほとんどのものの効果は検証され

        • 「戦略研究34 認知領域をめぐる戦略」を読んだ。認知戦に関しての概念、定義および事例などをコンパクトに概観するにはとてもよい特集

          戦略研究学会の「戦略研究34 認知領域をめぐる戦略」を読んだ。認知戦などの研究をリードする下記の3人の研究者が寄稿していた。 「認知戦に鑑みる対日本の攻撃アプローチの検討」(長迫智子) 「ハイブリッド戦争と認知領域の戦い」(大澤淳) 「認知領域における偽情報対策 ー カナダのアジェンダ・セッティング分析 ー 」(桑原響子) ●概要まず、長迫と大澤の論文が認知戦を概観しているのに対し、桑原の論文はカナダのアジェンダ・セッティングに特化している。そのため、全2者の論文は言葉の

        「ナラティブ戦争の国際政治学ーー標的になる民主主義」は学際的な視点で誤・偽情報の今を学べる貴重な連載

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        • 民主主義の現在
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        • ファクトチェックを取り巻く課題
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        • 2022年ウクライナ関連
          81本
        • 定期資料置き場
          21本
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        記事

          アゼルバイジャンがニューカレドニアに干渉

          ニューカレドニアで大規模な暴動が発生し、混乱が起きている。世界のあらゆる混乱はデジタル影響工作のターゲットになる。ニューカレドニアの混乱はアゼルバイジャンのデジタル影響工作のターゲットになった。 日本ではあまり知られていないが、アゼルバイジャンは中露イランには及ばないものの、デジタル影響工作能力では世界の中でも中より上に位置している。以前、ニューズウィーク日本版にこまごま書いたが、国内世論の統制と、国外への干渉の両方を行っている。 ロシア、アゼルバイジャン、アルメニアが入り

          アゼルバイジャンがニューカレドニアに干渉

          DFRLabによる中国の対台湾デジタル影響工作の実態

          DFRLabが中国による台湾に対するデジタル影響工作をまとめたレポート「Targeting Taiwan: China’s influence efforts on the island」( https://dfrlab.org/2024/05/06/targeting-taiwan-chinas-influence-efforts-on-the-island/ )が5月6日に公開された。 ●概要台湾では1994年以降、中国との統一を望む声は減少しており、現状のままを望む声

          DFRLabによる中国の対台湾デジタル影響工作の実態

          バチカンの異端審問所が奇蹟の認定を開始 神のファクトチェック?

          ローマカトリック教会の総本山バチカンの教理省(Dicastery for the Doctrine of the Faith、旧異端審問所)は、ローマカトリック教会においてバチカンのみが超自然的な出来事を奇蹟と認定できると発表した。 Vatican tightens rules on supernatural claims in the digital age https://www.washingtonpost.com/world/2024/05/17/vatican-s

          バチカンの異端審問所が奇蹟の認定を開始 神のファクトチェック?

          緊縮財政がポピュリズムを台頭させる、という調査結果

          2024年5月15日に公開された「Austerity, economic vulnerability, and populism」( https://doi.org/10.7910/DVN/1OPRYA )は、財政政策とポピュリズムの台頭の関係を調査した論文である。1990年代以降のヨーロッパにおける財政政策が政治に与える影響を自治体の選挙結果と個人の投票行動の2つをもとに分析している。 ●概要経済環境の悪化がポピュリストの台頭につながることはよく言われている。この論文では

          緊縮財政がポピュリズムを台頭させる、という調査結果

          気になった論文や記事2024年5月17日

          5月11日から5月17日の間で気になった論文や記事を簡単に紹介。なお、私が先週気づいたということであって、先週公開されたとは限りません。 ●セネガルでジャーナリストと政府批判者に猛威をふるったフェイクニュース法セネガルではフェイクニュース法によってジャーナリストや政府批判を行った人々が投獄されている。この法律にはフェイクニュースの定義が書かれていないため、恣意的な運用が可能となっている。 Senegal’s Fake News Law Crushed Dissent an

          気になった論文や記事2024年5月17日

          偽情報を特定するのは中立的な仕事ではない #偽情報の神話 #2

          「誤・偽情報対策を見直すために読むべき論文や記事のガイド」( https://note.com/ichi_twnovel/n/n06d3fda04ac2 )で紹介したDan Williamsの偽情報にまつわる神話をデバンキングするシリーズ。神話は全部で5つ。 1.私たちは前例のない「偽情報の時代」あるいは「ポスト真実」の時代を生きている 2.偽情報を特定するのは政治的に中立な仕事である 3.フェイクニュースは蔓延し、大きな影響力を持つ 4.人々は偽情報に簡単に騙される 5.

          偽情報を特定するのは中立的な仕事ではない #偽情報の神話 #2

          ロシアの情報ロンダリングについての解説記事

          ロシアが行っている情報ロンダリングについての解説記事「How the Kremlin launders disinformation around the globe」( https://www.info-res.org/post/how-the-kremlin-launders-disinformation-around-the-globe )が公開されていた。 ●概要通常の誤・偽情報やナラティブの拡散が単層的であるのに対し、情報ロンダリングは多層的なプロセスを経て情報を

          ロシアの情報ロンダリングについての解説記事

          現代は偽情報の時代ではない #偽情報の神話 #1

          以前の記事「誤・偽情報対策を見直すために読むべき論文や記事のガイド」( https://note.com/ichi_twnovel/n/n06d3fda04ac2 )で紹介したDan Williamsは自身のサイトで偽情報にまつわる神話をデバンキングするシリーズを掲載している。対象となった神話は下記の5つであり、現在2までが公開されている。 1.私たちは前例のない「偽情報の時代」あるいは「ポスト真実」の時代を生きている 2.偽情報を特定するのは政治的に中立な仕事である 3.

          現代は偽情報の時代ではない #偽情報の神話 #1

          個人レベルの誤・偽情報対策のツールボックス公開

          27人の世界の研究者が参加した誤・偽情報対策のツールボックスが公開された。 Toolbox of Interventions Against Online Misinformation https://interventionstoolbox.mpib-berlin.mpg.de/index.html ●概要81の論文で取り上げられた誤・偽情報への対処方法のConceptualツールボックスと、裏付けとなるEvidence(対策をテストした方法と実験など)ツールボックスが

          個人レベルの誤・偽情報対策のツールボックス公開

          日本の情報エコシステムの構造からフェイクニュースと誤・偽情報対策について論じた論文

          考えてみれば当然のことだが、フェイクニュース=誤・偽ニュースと、誤・偽情報は似て非なるものだ。ニュースはメディアから発信され、誤・偽情報はSNSを始めとしてどこから誰でも発信できる。近年、フェイクニュース・パイプラインなどが横行するようになり、両者の違いは曖昧になってきたものの、そこにはまだ違いがある。 今回、ご紹介する藤代裕之の論文はその違いと、分けて考えなければならない理由からフェイクニュース=誤・偽ニュース対策としての「信用」の重要さを紹介している。 フェイクニュース

          日本の情報エコシステムの構造からフェイクニュースと誤・偽情報対策について論じた論文

          EFFによる政治キャンペーンの解説 数千億円のデータ市場、コネクテッドTVから視聴履歴に合わせた政治広告

          EFFがアメリカの選挙において、どんなデータがどこから集められてどのように利用されるかを解説している。 How Political Campaigns Use Your Data to Target You https://www.eff.org/deeplinks/2024/04/how-political-campaigns-use-your-data-target-you ●概要中露イランが行っているデジタル影響工作(合法なもののみ)に似ている一方、政党や政治家だか

          EFFによる政治キャンペーンの解説 数千億円のデータ市場、コネクテッドTVから視聴履歴に合わせた政治広告

          イーロン・マスク効果でXでQAnonの存在感が約130倍増加

          イーロン・マスクによるモデレーションの緩和(というか放置?)と、QAnonインフルエンサーの復活によってXにおけるQAnonの存在感が急激に大きくなっている。 最近のXでのQAnon のハッシュタグや関連用語の投稿が2023年5月1日から2024年5月1日の1年間に比べて1,283%増加したことがNewsGuardの調査で判明した。 QAnon Claims on X Soar by 1,283% https://www.newsguardrealitycheck.com/

          イーロン・マスク効果でXでQAnonの存在感が約130倍増加