鹿ヶ谷街庵

鹿ヶ谷街庵(ししがたにがいあん)という名で短歌を作っています。電子書籍の短歌集『いかさ…

鹿ヶ谷街庵

鹿ヶ谷街庵(ししがたにがいあん)という名で短歌を作っています。電子書籍の短歌集『いかさまばくち』あり〼。

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第五十六回短歌研究新人賞最終選考通過作『冬、サイレント・クライ』

数年前、短歌研究新人賞の最終選考通過した連作です。今、読み返すと直したいところがたくさんあります。お読みいただけるとうれしいです。 追記、第五十六回でした。2013年です。 選考委員は、栗木京子/米川千嘉子/加藤治郎/穂村弘の四氏でした。 木製の列車に乗っているようだ からだをきつくしばられたまま 頭髪のすべてが白い人たちがやまいのことを長くながくはなす ほほえみが医師の仕事のほとんどで、プラタナスの葉こんなにもおおきい ニトロペン、医師携帯の数列をしずかに渡すふくよ

    • NHK短歌テキスト2024.6月

      あいさつをいつも忘れる新人のういういしさにいいねをつける 枡野浩一さんの選でなんとか一首載りました。 「来月も載りますように」短冊に書いておきたい気分の5月

      • うたの日の薔薇〜48まで

        あたたかいミルクセーキは胃に落ちて月の匂いを伝えてくれる 鼻糞を指ではじいてゴミ箱へ I love me とつぶやきながら 食べちゃったプリンのかわりにマカロンを司法取引みたいに渡す フカヒレを食べた呪いのせいなのか海馬に鮫が群がってくる 愛だった キャラメルコーンを真夜中に買いに走った頃のすべてが ていねいに海老の背わたを取るように黒い歴史を消した履歴書 逆むけを何度もさわるようにしてひとを愛してしまってばかり 草原でクローバー摘むおさな子を帆船にする一陣の風

        • NHK短歌テキスト5月号

          吉川宏志選、テーマ『組織』 命とは手漉き和紙より軽いもの労働組合なきわが社では 岡野大嗣選、テーマ『続く』 休職をするほど病んでいる僕を回復させる母の肉じゃが 一年間NHK短歌に投稿してみました。四人の選者、(川野里子、山崎聡子、吉川宏志、岡野大嗣、敬称略)にすべて選ばれた月もありましたが、全没の月も一度ありました。入選なし、佳作秀歌一回、佳作多数でした。 今年で投稿はやめようと思っていましたが、新たな選者に短歌界のキング(*私の主観です)である枡野浩一さんが就任さ

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        第五十六回短歌研究新人賞最終選考通過作『冬、サイレント・クライ』

          三月自選短歌

          閏日に生まれた人が聴いている冬と春とがすれちがう音 AIにあだち充の絵をみせて見分けられたら人類の負け 不同意で抱きあいながら不同意であなたの耳に愛をささやく 男梅みたいな顔のおじさんが錬金術を語る立ち飲み 家猫はただただ眠る春の日の性の目覚めを知らないままに 生きたさと生きたくなさをつめこんだリュックを背負い吊り橋をゆく 逆むけを何度もさわるようにしてひとを愛してしまってばかり ふしだらな男でしょうかゆっくりとアイスのふたを舐めるわたしは

          三月自選短歌

          2024/03/30穂村弘

          真夜中にひとりジェンガをやりながらひかりの糸を待っている日々/鹿ヶ谷街庵 きょう03/30に日経歌壇に穂村弘選で掲載されました。

          2024/03/30穂村弘

          NHK短歌テキスト2024.4月号『コンプリート』

          NHK短歌テキスト2024.4月号 川野里子選 題「顔」 顔色をうかがいながら野良猫はひかりの速さでエサを咥えた 本名での投稿でした。初めて佳作秀歌に選んでいただきました。 山崎聡子選 テーマ「傷ついたこと」 欠落を人間だから責められる月ならそれも愛されるのに 吉川宏志選 題「さえ(助詞)」 ボンネット軽く叩けば猫がでるそんなことさえ冬のやすらぎ 岡野大嗣選 テーマ「コンビニ」 スーパーに寄る同僚はコンビニでコーヒーをすする僕にはまぶしい 今月は四人の選

          NHK短歌テキスト2024.4月号『コンプリート』

          『うたそら』第19号「犬の名は」

          湿ってる、健康だねって俺の鼻さわって笑うきみが好きです 永久に気球が浮かぶ奇跡でもあればうつむくこともないのに フカヒレを食べた呪いのせいなのか海馬に鮫が群がってくる ファミコンのソフトに残る噛み跡がわが家の犬の遺品になった 愛だった キャラメルコーンを真夜中に買いに走った頃のすべてが うつくしいソ連映画を観たあとにテレビが映す燃えるひまわり ていねいに海老の背わたを取るように黒い歴史を消した履歴書 コーヒーをこぼしたいつも暗がりで飲むからいつもこぼしてしま

          『うたそら』第19号「犬の名は」

          二月の自選短歌です(写真付き)。

          二月の自選短歌です(写真付き)。

          NHK短歌テキスト2024/03

          岡野大嗣さんの選で一首載せてるいただきました。 亡き母がホットケーキを焼いている古いブログを保存しておく 今月のテキストは松村正直さんの連載「こころ以上ことば未満」が興味深かったです。「句切れとはなにか」「句割れと句またがり」などの記事。実践的でわかりやすい短歌入門ですね。過去の記事も読み返そうと思いました。

          NHK短歌テキスト2024/03

          岩倉曰さんに他選していただくの巻

          湿ってる、健康だねって俺の鼻さわって笑うきみが好きです 凄まじい魔力をもったユンケルも癒やせなかった僕のさびしさ ひきこもる僕に「空飛ぶ円盤を見よう」と誘う友がいたこと 岩倉曰さんの#いわくのたせんにてうたの日の一月分から三首選んでもらいました。コメントもいただけてうれしかったです。

          岩倉曰さんに他選していただくの巻

          辰年に穂村弘に。

          2024年2月10日 日経歌壇に載りました。 どんどんと抽象画めく日々のなか君のくちびるだけがリアルだ あとの方に載ったので評はもらえませんでした。 今年初の成果がでました。投稿はたくさんしているのですが。

          辰年に穂村弘に。

          日経歌壇穂村弘選掲載記2022-2024

          ある朝のサーカス団に虎はいず警官たちが集まっている 2022年11月19日 変人と思われたかなお花見で口に入ったさくらを食べて 2023年3月25日 祭りの夜 猿はすべての檻を開け動物たちをあつめて踊る 2023年6月3日 日向へと集まる亀は子どもらの手の届かない場所を知る亀 2023年9月30日 心臓がガラスケースに飾られていると思えば良いりんご飴 2023年10月28日 どんどんと抽象画めく日々のなか君のくちびるだけがリアルだ 2024年2月10日 真夜中にひ

          日経歌壇穂村弘選掲載記2022-2024

          一月の自選短歌です。

          ファミコンのソフトに残る噛み跡がわが家の犬の遺品になった 病室の小さなテレビでみちのくの太宰の生家へゆく旅をみる フカヒレを食べた呪いのせいなのか海馬に鮫が群がってくる 百頭のジュゴンをひきつれ泳ぎたい珊瑚が光る夜を選んで 湿ってる、健康だねって俺の鼻さわって笑うきみが好きです

          一月の自選短歌です。

          NHK短歌テキスト2024.2月号/枡野浩一さんの選歌

          NHK短歌テキスト2024.2月号 岡野大嗣選 テーマ「着る/脱ぐ」 忘れかけ渡されたときもう一度もらったような気になるマフラー 話は変わりますが、4月から枡野浩一さんが選者になられますね。 枡野さんの選歌についての参考に、過去に「うたよみん」でいいねがつかなかった短歌とそれをなおしたらいいねがついた短歌を並べてみます。 ❌こんなにもカレーとナンの配分がちがう男が部下なんた、ああ ⭕️弟のカレーとナンの配分があまりにちがうことが心配 枡野さんには行間を読んでもら

          NHK短歌テキスト2024.2月号/枡野浩一さんの選歌

          「うたそら」第18号「冬、賀茂川にて」

          あかぎれにニベアの青缶ぬりながらあるべき世界の夢をみていた 練乳をチューブから吸い怒ってるわけを言わない君のくちびる もうきみが残していったセーターの柄のトナカイみな死にました 家庭科で習ったカレーをつくってた 母の帰りが早まる気がして 見る前に跳べ、と留学したけれど今は家から一歩もでない 雪の日にお湯に浸かったカピバラも日本情緒のひとつと思う 泣きながら蟹とたわむれ啄木はそのあと蟹を食べただろうか あみ棚におにぎりひとつ置いてあり爆弾をみるように見ていた

          「うたそら」第18号「冬、賀茂川にて」