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シラノ・ド・ベルジュラック

TYPE-MOON Fate/Grand Order イベントストーリーで取り上げられた、フランスの戯曲。なにか妙にそそられるものがあったので、それを原作とする映画を観た。

美しい言葉と美しい顔。ロクサーヌが求めるものを与えるには一人では叶わず、二人で協力して捧げる。シラノは言葉を、クリスチャンは顔を。騙されながらとはいえ、ロクサーヌは二人ともを愛した。しかし、彼女は人間を愛さなかった。不細工な男を愛さなかった。無粋な男を愛さなかった。林檎の実を齧って芯を捨てるように、けして人間の醜悪さには見向きもしなかった。(ゲームイベント内で、フォーリナーがロクサーヌを演じていたのも頷ける。そして、彼女が演じるのでは決してハッピーエンドに辿り着けなかった)一人の女に翻弄される男たちの喜劇とも言えるが、二人の死によって真の愛を知る女の悲劇とも言える。また同時に、騎士の在り方、詩人の在り方についても語り聞かせてくれる、多角的なストーリーだ。
届かぬ愛の、儚さ。儚さとは強いが故に生まれる美。弱弱しい思いや存在の上には表れないものだ。シラノが散り際に語る言葉は、とても美しかった。

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