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 すぷーん

ひだりみぎひだりみぎひだりみぎひだりみギ
ふたつあるならふたつなくせ
やあらかいまぶたのうら
ぎんのすぷーんのうら
せかいときみをへだてるきょくせんをかさねて
ぐりゅ

かわいいお●●がひらいた

めにはかあなをめにはかあなを
めんたますくってはかあなを
ふたつあるならふたつなくせ
おいわいおしまいかげひなたゆるしふりくじつるしくび
なみだにふやけたものがたりじゃなきゃみもしねえんだろ
めをっめをっ
すぷーんにくりぬくよーぐりゅと

曝された目の底
反転しないまま世界が寝そべっている
そのあんぐり空いた目
墓穴ふたつ 馬鹿面ひとつ

事の彩度・六/諍井寄人

わたしはけっこうしつこく推敲しちゃう人なので、発表した詩であれ書き直すことがよくある。というか、ずっと書き直してばかりだった。そこで、もう過去は手放そうぜ! と編み始めたのが「事の彩度」。
まじで勢いのみで一から五まで詩集を作ったので、なんというか、見直すと青臭くてね……それはそれで良いところもあっただろうか。2021年頃にやっと自分の詩の手法が組み上がってきたので、過去作をすべて改めて、わたしはこれをやりたかったんだ! と言えるものを出したくなった。
べつに完璧とやらは目指していないし無理だ。良し悪しというのは刻々と変化していく。正義も悪も時代によってひっくり返る。この時点ではこれで良かった。そう信じて書き終えることを、したいだけだ。

あんまり自作を説明したくないけど、「集・一(これは無題の意、番号だけ振っておいた)」から「すぷーん」の推敲について話してみると。
スコップをスプーンに変えた。攻撃力が減っている。墓にはスコップの方が相性はいいんだけど、スコップは地方によってはシャベルのことだったりするのでサイズ感ぶれるし、目を刳り貫くにはちょっと相応しくないかなと。スコップだと眉から頬にかけて掘っちゃうけど、スプーンなら目だけ抜けるので、照準も変えた。攻撃力が減って、クリティカル威力が上がった。
この詩の要件は、目に対する怒りだ。わたしはわたしの目を通じて物事を見るしかない。ところが目は、どれだけ物事をじっくりと見ても見落とす。赤くて丸っこい果実が、林檎に見える。赤く塗られた梨なのに。ちゃんと見た気になって見落とすのが目だ。
元の詩は、てめえが見ている俺は俺じゃねーよって表現だったが、もっと範囲を広げた。きみが見ている世界は、きみが見たい世界に過ぎないよ。きみの目に世界をもっとクリアに映したいんだ。死ね。とまでは言わなくてもいいにせよ、怒りなので過激な表現をする。
わたしだから見える世界があって、わたしが見落としている世界を誰かが見てくれていて、そのことを忘れてはいけない。忘れたらすぷーんでくりぬくぞ。
詩のすべてを説明してはいないので、好きに読んでください。わたしの考えていないことが詩に含まれていることもある(無意識にやってることもある)し、もはや説明とはぜんぜん違う詩ということも有り得るので、聞き流して好きに読んでください。読んでくれるの? ありがとうございます。

https://sites.google.com/view/isakaiyorito

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