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「青いライオン ~Blue Lion 」(リーグ第13節・北海道コンサドーレ札幌戦:3-0)

バフェティンビ・ゴミスが試合に出始めた、去年9月のこと。

ある日の全体練習後、居残りでシュート練習に励んでいた彼に「シュートで大事にしている心得」について尋ねてみた。

返ってきた答えは「余裕を持つこと」

どういう意味なのか。ゴミスは言葉を続ける。

「フィジカル的にも充実した状態だとフィニッシュに余裕を持てると思います。余裕があればよりGKの位置も見れるし、余裕を持ってシュートが打てますし、より早くアクションを打つ助けになります。余裕を持つためにも、フィジカル的に良い状態になることが大事だと思います」

 余裕を持つことというのは、「落ち着いた状態を作ること」に近いニュアンスだろう。そのためには、フィジカルコンディションを上げていくこと。そうすれば、試合中に落ち着いて正確な判断も下せる。この両輪が噛み合えば、必ずゴールは生まれるというわけだ。

この日、等々力競技場で生まれたJリーグ初ゴールシーンは圧巻だった。

0-0で迎えた30分。右サイドの崩しで、回り込んでいた遠野大弥がペナルティエリア内にいるバフェティンビ・ゴミスの足元にパスをつける。

「外国人に体を当ててはいけない」

 これは日本人ディフェンダーにとって、外国人ストライカーとマッチアップする時の鉄則だと言われている。

 彼らは日本人と違い、少し体を当てたぐらいでは全くブレることはない。それどころか、その力を利用して簡単にターンしたり、キープするのがうまいのだ。

 相手と体を密着して守ることは、彼らに自分の位置や意志を感じ取らせてしまい、逆にプレーしやすくしてしまう危険性が伴う。だから「外国人に体を当ててはいけない」のである。

 バフェティンビ・ゴミスをマークしていた札幌のDFは家泉怜依だった。
流通経済大学出身で、去年までいわきFCでプレーしていた24歳。J1の出場はこれが4試合目だ。外国人ストライカーとのマッチアップする経験値が豊富とは言えないキャリアであることは想像がつく。

 実際、得点シーンで家泉を背負っていたバフェティンビ・ゴミスは、まるで動じずにキープしていた。そして自らの間合いを作りながら鋭く反転すると、右足を振り抜き一閃。シュートはGK菅野孝憲の手をすり抜けてゴールネットに突き刺さった。

 ついに生まれた、ライオンのJリーグ初ゴール。

まるでいとも簡単に仕留めたように見える得点だが、決してそうではない。そこには、このストライカーにとって「シュートで大事にしている心得」が凝縮されていたものだったのだ。

 では、そこから詳しく掘り下げていこう。 

※後日取材により橘田健人に関するコラムを追記で書きました。遠野大弥の躍動ぶりをどう見ているのか。そして、去年の主将経験をチームにどう還元しているのかの話です。

■(※追記:5月13日)「バフェが時間を作ることができるので、ダイヤもゴール前に入っていく時間が作れますし、本当にダイヤの特徴を活かしているなと思います」(橘田健人)。躍動する親友(?)の遠野大弥について語るとき、橘田健人が語ったこと。


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