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浦和レッズの試合を見てきた

10月15日、JリーグYBCルヴァンカップの準決勝を観てきました。実は、関東に住んでいながら、まだ浦和移籍後の岩尾憲*1の試合に行けてませんでした。

横浜F・マリノスとの好カードで、第一戦を浦和が僅差で落として迎えるホームでの第二戦という熱い展開。

高校サッカー選手権で訪れて以来、実に12年ぶり*2に埼玉スタジアム2002に足を踏み入れることになりました。

その日は新宿中央公園でイベントがあったので、少し早めに抜けさせてもらって、大江戸線で都庁前から春日駅へ。乗り換えて、南北線直通の埼玉高速鉄道埼玉スタジアム線で浦和美園駅へ。

試合の30分前くらいに駅に着くと、少し遅めということもあって そこまで混雑はしておらず、浦和美園から徒歩20分くらいの距離がいいバッファーになっていて、ストレスなくスタジアムへ到着。

17:00キックオフだったので、少しお腹に入れておきたいと思って、目についたケバブのキッチンカーに寄りました。

「明太マヨポテトください」と伝えると「オ〜ケイ〜 オニイサン〜 ポテト 10個?100個?」とターキッシュジョークをかまされ、不意のことだったので「アッ…ェ…デュフww イッイッコデ」と通常運転 インキャムーブをかましてしまうと、憐れみの表情  ┐(´ー`)┌  で、ソッとポテトを渡されました。

試合展開はほぼ互角ながら双方チャンスシーンも多く、見応えがあるゲームを引きました。

徐々に西川周作のキックと、憲くんが気の利いたタイミングでビルドアップに顔を出し、横に広げ 縦に刺すというでボール配りで陣地挽回。ミスのないほぼパーフェクトな彼の仕事ぶりもあり、浦和に形勢は傾いていきました。

浦和は VAR でゴールを取消しになるも、その後にエリア内でファールを受けてPKを獲得。第一戦からのスコアも合わせて振り出しに戻すと、今度は VAR で二度目のPKを獲得。まあ VAR なしでもPKの判断になってたかなという感じでしたが、これをしっかりと決めてトータル 2-1。浦和がひっくり返して、決勝進出を決めました。

僕のキャリアではあまり経験がありませんが、いわゆる1stレグをリードして迎える2ndレグは、その試合だけを見ると、リードしてる側にだけ「勝ちを狙う」か「分けを狙う」かの選択肢が発生します。

もちろん大枠の方針は決まっているでしょうが、プレーごとのディティールが揺れ、微妙に噛み合わないシーンが出てくる。そういうやりにくさをマリノスから感じる内容でした。

さて、僕は埼スタのバックアッパー北というところで試合を観ていました。浦和のゴール裏にほぼ隣接といった位置で、応援の様子がよく見えました。そして、その応援は素晴らしいものでした。

・・・

浦和レッズは、8月2日の天皇杯での件で、JFAから来季天皇杯参加資格を剥奪されました。処分が妥当か妥当じゃないかはわかりませんが、その処分自体が厳しいことには間違いないと思います。

その後に、クリアソン新宿が「観戦ルール」を発表したことで「クリアソンは、こうした問題に先手を打った」という噂が流れました。

しかし、リリースの通りですが、特に本件を意識したわけではありません。津々浦々 古今東西、こうした問題は定期的に起こるので、いつ発表しても何かの後になってしまうし、そもそも暴走する人が暴走しちゃうのを「観戦ルール」で止めるの無理ですよね。

またクリアソンのトピックで言えば、その後 9月26日にJ3クラブライセンスが交付され、一部では これを先の件と絡めて「ライセンス交付の条件には、観戦ルールの制定が含まれていた」とか、果ては「Jリーグはクリアソンの観戦ルールを推奨している(いく)」という陰謀論が流布されたわけです。

こうした文脈のもと、クリアソンがローカルに展開していた世界観が拡散し、観戦ルールをはじめ、クラブが応援というものに対して介入をしているという点で「官製応援」とか揶揄されてしまうことになったわけです。

この表現について少し考察すると、サッカークラブは「官」ではなく、当たり前なんですが めっちゃ「産」です。だから、真の官たる組織とは違って、関係しない人の生活に侵入していくような力はありません。

さらに、経営がうまくいかなくなれば、ここでも関係しない人から集めた公金のようなものが投入されるわけではなく、倒産するだけです。そして実際、サッカークラブはしばしば倒産します。

だから、当初 こうした蔑称は芯食ってない気がしてたんですが、いろいろと考えていると、サッカークラブは「産」として経営戦略とかを展開する以前に、「スポーツ」そして「ホームタウン」という概念を背負っている公共性からか、「民」の声に耳を傾けなければならないという点で「官」的な振る舞いはむしろ期待されているものであり、その中で応援は丸っと「民」にひらかれるべき権利であるということなのかと思いました。

それについての是非は長くなるのでやらないとして、さておき、実態は「産」なので、そして我々は背後に大資本も抱えていないので、すべって人が集まらなければ倒産します。

もちろんBtoBに振り切って いわゆるスポンサー費だけで飯を食っていくという手もなくはないですが、集まってくるBは、サッカークラブに付いているCを見ているので、いずれにせよ持続可能性はありません。

こうした逃れられないビジネスモデルの果てに課題になるのは、結局、たくさんの人がスタジアムに集まった時に、どう楽しんでもらうかという点です。

楽しんでもらうとか言うと つっこまれそうですが、クラブからの一方向的な提供に限らない意味で、です。

その要素として応援があるわけですが、それに対するクリアソンの思想が宗教的だとか、社会主義国家だとか、オーウェルの『1984』だとか言われて、いい加減に全体主義のメタファーもアプデしてシビュラシステム*3(も古いか)とかにしてよ!と思ったわけですが、それはおいといて、この日 埼スタに行った僕は「浦和の方がよっぽどだろ!」と思ったわけです。

各クラブごとのスタイルまで解像度を持てていませんが、少なくとも日本サッカーの最上位リーグの応援として、その統率、熱量、そして体力、本当にすごかった。狂信的でした。

縁あってゴール裏の人とも話したんですが、彼は彼なりのスタイルでこの日も やり切って、へとへとになって帰っていくのでした。彼はサッカーの試合を楽しんでいました。彼は僕より少し歳下で、つまり、生まれた頃から地元浦和には浦和レッズがあった。30年かけて紡いできた文化です。

それが官主導でなかったことが重要、みたいな話だと思うのですが、はたから見ると、単に「すげ〜」となったわけです。

・・・

それで、クリアソンは スタジアムでどう楽しんでもらいたいのかというところに話を戻すと、最終的には この日 すごかった埼スタと別に大きくは変わらないんだと思います。

もちろん、クラブの特徴とか地域性とかはあるかもしれませんがそれは周辺のトピックスです。中心にはサッカーがあり、揺れ動く感情があって、その幅は大きい方が良くて、それに共感する人の数は多い方が良くて、最低限の安心安全がある。一緒にされるのは嫌だと思うんですけど、勝手に一緒だなと思ったわけです。

今日、僕がここに書くことで覚えておきたいのは「違う」と思っていたことは「違わなかった」ということです。

この日 試合に行くまでは、僕らも批判されるたびに ご丁寧に "官製ではない" とされる応援の画像やら映像やらが添付されていたので、こっちも意地になって 例えば浦和とかの応援について斜めに見てしまっていたわけです。

でも、実際に足を運んでみると そうやって敵対視するものではなかった。

「行って(来て)からものを言え」ということではありません。そんなことを言ったら、誰も何も言えなくなります。想像力を働かせて、今、自分がいる場所から言葉を発することが、僕が好きなインターネットです。

ただ、断片的な情報を操作し、何かしらの意図を持って または単に憂さ晴らしで 誰かと誰かが憎しみ合うように対立させるのは、これはめっちゃ良くないですよね?!いや、そういうのもインターネットなのか??!

浦和と新宿が「違わない」とか言ってしまうと、怒られそうなので言いませんが(言ってるんですが)、実際に浦和の試合を観に行って「今のは明らか浦和のファールやろwブイーングすんなしw」とかは思ったけど、そういうのも含めて楽しかった。

どうしても僕は、ヘイトを撃ち合うほどには違わないと思ったわけです。少なくとも僕は、憎まれることはあっても 憎むことはやめようと思ったわけです。

すっごく飛躍させると ウクライナもロシアも、イスラエルもハマスも同じだと思うんです。彼らの場合、本来 大切な人の身の安全が保障されて、暖かいところで暖かいご飯を食べて、喋ったり踊ったりしたいだけなんだと思います。ただ、その手段が違うということで 大変なことになってしまっている。手段が違うことはある。だとしても、ミサイル撃ち合うほど違うかと言われると、本当はそんなには違わないはず。

すいません、知りもしないくせに話を広げすぎました。でも、大事な学びになりました。

ネクストアクション:
またチケットを買って観戦にいきたいと思います。あと、ケバブのキッチンカーのアイツに今度は気の利いた返しをしたい。


*1: 元チームメイト
*2: 井筒がベンチを温めている間に負けてしまった試合
*3: シビュラシステムとは、アニメ『PSYCHO-PASS』に登場するコンピューター、またはそれによって運営される社会制度
*4: お察しの通り、タイトルはこちらのnoteからのインスパイア


最後まで読んで頂き、ありがとうございました。