狩野誠

落語大好き、音楽大好き、読書大好き、お酒大好き、女房まあ好き

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最近の記事

400字で分かる落語「医者間男」

「い」の47:医者間男(いしゃまおとこ) 【一言】 三百数十年前、中国の馮夢竜は、編書“笑府”の中にこんなお話をのせている。  ある女房、あそこに腫れものができたので医者を呼びます。医者、その亭主がちょいと足りないのを知っているので「私がうまく薬を塗って進ぜよう」と、自分のものの先につけて女房のあの中へ……。亭主わきで見ていたが、しばらくして「もしあの薬が先っぽについていなかったら、疑うところだ」  この咄、やがて日本に渡来して上方咄<医者間男>となる。医者は、聖職、落ちは次

    • 400字で分かる落語「医者の礼」

      「い」の46:医者の礼(いしゃのれい) 【粗筋】 子供の病気で医者に治してもらったいさみの八兵衛。礼に来て、「先生のお陰ですっかりよくなりやした。礼と言っても何もできねえが、何かあったら遠慮なく八兵衛の子分だと言って下さい」 【成立】 安永2(1773)年『聞上手』の「親分」。「子分だ」ってのが笑える。

      • 400字で分かる落語「医者の妙薬」2

        「い」の45:医者の妙薬(いしゃのみょうやく):その2 【粗筋】 医者が腹痛を起こしてうんうん苦しんでいるので、介抱してやる。ようやく落ち着いて、 「お世話になりました。お礼といっても持ち合わせしかございませんが、これは私の妙薬で、どんな痛みもけろりと治ります」 【成立】 噺家さんから江戸の小噺にあると聞いたが、今のところ見付からない。天明頃の『鶯笛』にある「魔除札」が、狐に化かされた山伏が、助けられた礼に魔除けの札を出すというもの。

        • 400字で分かる落語「医者の妙薬」1

          「い」の44:医者の妙薬(いしゃのみょうやく):その1 【粗筋】 医者が引っ越して来て、近所を回っている。蕎麦でも配るのだろうと思っていると、家にもやって来た。 「この度ご近所に越して参りました竹庵と申す医者でございます。これはお近付きの印に、家伝の妙薬を一服持参しました」と言うから、腹立ちまぎれに「せっかくですが、私ゃ病人じゃありませんからね、お薬なんぞ要りませんや」  医者は少しも騒がす、「いえ、どうぞお上がり下さい。今病気が無くとも、わしの薬を呑めば、たちまち病気になり

        400字で分かる落語「医者間男」

          400字で分かる落語<お知らせ>

          毎日一席ずつ公開するという目標を持って生きて参りましたが、よんどころない事情で、明日から数日旅に出ます。明日朝の公開からしばらくお休みになりますので、ご了解いただけますよう、お願い致します。

          400字で分かる落語<お知らせ>

          400字で分かる落語「医者の屁」

          「い」の43:医者の屁(いしゃのへ) 【粗筋】 商家の主人が腹痛を起こして七転八倒、医者が駆け付けて薬を与えると少しは落ち着いた。 「今の薬はしばらくするとお腹がごろごろ鳴りますので、厠へお出で下さい。そうでなければおならが出ます。どちらにしてもそれで随分楽になりましょう」  と言うそばからブー。 「ほれ、おならが出ましたから、もう安心ですぞ」  と言うと側にいた番頭が、 「先生、今のは……実は私でございます」 「なるほど、噂の通り忠義一途の番頭さん。これでご主人も楽になられ

          400字で分かる落語「医者の屁」

          400字で分かる落語「医者の供」2

          「い」の42:医者の供(いしゃのとも):その2 【粗筋】 何をどう間違えたか、金持ちの家から医者の往診を頼みに来た。心得たりと供の者に薬箱を担がせて出掛けるが、帰り道に気付くと、供の者は手ぶらである。 「お前、薬箱はどこへやった」「へえ、どうせいらない物ですから、向こうへ預けておきました」 【成立】 安永7(1778)年『今歳笑』の「やぶいしゃ」。この供の者も信濃者とされている。

          400字で分かる落語「医者の供」2

          400字で分かる落語「医者の供」1

          「い」の41:医者の供(いしゃのとも):その1 【粗筋】 何をどう間違えたか、町家から医者の往診を頼みに来た。先生、質屋から一張羅を出して着込んだのはいいが、一人で行くのも見苦しいからと、近所の男を供の者に仕立てることにした。一緒に歩き出したが、この供があまりに汚い恰好。「どうにかならないか」と言うと、ほっかむりをして、「これならお前さんの供とは見えません」 【成立】 安永2(1773)年『聞上手』の「雇の供」、寛政8年『喜美談語』の「無精な供」。『しみのすみか物語』には雅文

          400字で分かる落語「医者の供」1

          400字で分かる落語「医者の富」

          「い」の40:医者の富(いしゃのとみ) 【粗筋】 梅木忠庵という医者が大阪見物に行き、買った富くじが千両の大当たり。ところが勘違いからくじを捨ててしまい、見ていた坊主が拾って千両を受け取る。これがばれて、「坊主ともあろう者が、人の当たりくじを自分のものにするとは何事や」 「医者が見放したものは、坊主のものや」 【成立】 上方噺で、粗筋だけが伝わっていると聞いた。何を勘違いして捨てたのか、分からないから説得力がないのかなあ…… 【蘊蓄】 落語では千両が当たるのが定番だが、千両富

          400字で分かる落語「医者の富」

          400字で分かる落語「医者の手遅れ」

          「い」の39:医者の手遅れ(いしゃのておくれ) 【粗筋】 何でも手遅れと言う手遅れ医者。治らなければ、最初から手遅れと言ってたなと納得してくれる。うっかり治ってしまったら、手遅れというのを治したと名医にされるというのである。そこへ怪我人が運び込まれて来た。「これはいかん、手遅れじゃ」 「先生、たった今松の木から落ちたんです。これで手遅れなら、いつ連れて来ればいいんですか」「落ちる前なら助かったかも」 【成立】 安永10(1781)年『民和新語』の「野父医者」、「みせようが一日

          400字で分かる落語「医者の手遅れ」

          400字で分かる落語「医者の手」

          「い」の38:医者の手(いしゃのて) 【粗筋】 1:医者が町で喧嘩。相手を蹴飛ばして転んだところを殴りつけようとすると、「待ってくれ、蹴飛ばすのはいいが、手は出さないでくれ。あんたの手に掛かると命がない」 2:同じ噺。間に入った人が「蹴飛ばすのはいいが、手を出しちゃいかん」 3:診察を頼まれた藪医者、慌てて飛び出すが、隣の子供を蹴飛ばしてしまった。わっと泣き出す声に驚いて母親が飛び出した。いくら医者でも子供を蹴飛ばすとは何事かと怒っていると、大家が来て訳を聞き、 「お

          400字で分かる落語「医者の手」

          400字で分かる落語「医者の聾」

          「い」の37:医者の聾(いしゃのつんぼ) 【粗筋】 耳がまったく聞こえない医者だが腕はいい。患者が医者の前に座って、 「この間からの病、かなり良くなりました」と元気な様子を見せて頭を下げると、「それはようございました」と言う。 体を洗う仕草を見せると、「ああ、風呂へ入っても構いません」 「ありがとうございます」と頭を下げつつ尻を上げると、「それはまだ早うございます」 【成立】 寛政13(1801)年『はなし売』の「間違」。うぶな私にはよく分からないが、最後の仕草を男女で行う何

          400字で分かる落語「医者の聾」

          400字で分かる落語「医者の水練」

          「い」の36:医者の水練(いしゃのすいれん) 【粗筋】 医者の不手際から患者が死んでしまい、家族の者に殴られ、簾巻きにされて川へ放り込まれた。幸い縄が切れたが、泳ぎを知らない。必死で岸にたどり着いて逃げ切った。家に帰ると息子が医者になるために勉強中。 「これ、医者としてはまず泳ぎを覚えろ」 【成立】 中国の『笑府』巻4にあり、江戸小噺にもそのまま引用されている。患者を殺して泳いで逃げるだけで、簀巻きにされるのは天保頃の『如是我聞』の「拍浮(およぎ)」。「畳水練(たたみすいれん

          400字で分かる落語「医者の水練」

          400字で分かる落語「医者と悪い病」

          「い」の35:医者と悪い病(いしゃとわるいやまい) 【粗筋】 掛かり付けの医者の所へ駈け込んで来た大家の御主人。 「大変でございます、うちの甚六が下女のお咲に手を出しまして……」 「まあ、落ち着きなさい。孕みましたか」 「それが、そのう……悪い病をうつしたらしいんで」 「いや、若い頃にはありがちなことで……」 「いや、そうこととは知らず、私がお咲と関係を持ってしまいまして」 「ははは、相変わらずお盛んですなあ」 「それだけならまだしも、うちの家内にもうつしたらしいんでございま

          400字で分かる落語「医者と悪い病」

          400字で分かる落語「医者泥」

          「い」の34:医者泥(いしゃどろ) 【粗筋】 医者のところに泥棒が入り、女房に刀を突きつける。目を覚ました医者が薬箱から匙(さじ)を取り出すと、盗人、これはいかんと逃げ出した。女房がびっくりして、 「いったいどうして泥棒たちは逃げてしまったの」 「この匙でどれだけ人を殺したことか」 【成立】 安永2(1773)年『聞上手』二篇の「庸医匕(やぶいしゃのさじ)」。昭和初期の演目一覧に「医者泥」とあるのがこれだと思う。原作に沿って本文のようにしたが、逃げ出した泥棒が、「なぜ逃げたん

          400字で分かる落語「医者泥」

          400字で分かる落語「医者と痰」

          「い」の33:医者と痰(いしゃとたん) 【粗筋】 どんな病気も痰がからんでいるという医者がいる。死因は全て痰に関連しているというのだ。首括りはタン(短)気、交通事故は油ダン(断)、強盗に殺されても大タン(胆)というこじつけ。終いには妊婦にも痰がからむと言い出したので、「妊婦は病気と違うがな」 「でも生まれて来る子はいとタンか、ぼんタンか」 【成立】 元禄11(1698)年『初音草噺大鑑』巻三の「病論はいひ勝ち」。落ちから見ると上方の噺ということになる。一般には「痰医者」という

          400字で分かる落語「医者と痰」