読書記録「何者」
川口市出身の自称読書家 川口竜也です!
今回読んだのは、朝井リョウさんの「何者」新潮社 (2012) です!
・あらすじ
秋の学祭シーズンが終わると、部活やクラブを引退して就職活動を始める学生が多くなる。早いところでは、冬頃には募集を開始する企業だってある。
就職活動を控えた拓人は、同居人である光太郎が率いるバンドの引退ライブに足を運んだ。そこには、留学から帰ってきた、光太郎の元カノである瑞月が来るとも知っていたから。
大学1年生の頃に同じクラスだったことをきっかけに知り合った3人。これからの就職活動に向けて、瑞月の留学仲間の理香と、理香の彼氏である隆良の5人は一緒に就職対策をすることとなる。
最初こそ、お互い協力し合って就職活動に挑む5人だったが、一人が最終面接まで残ったと知るやあからさまに不機嫌になったり、一人が内定を貰うやいなや就職先の程度を下に見たり。
就職活動が進むに連れて、言葉の奥に潜む本音や自意識が、徐々に彼らの関係を変えていく。
何度か読書会で朝井リョウさんの作品の紹介を受けており、現実を突きつけられるという印象が怖くて未読だったが、たまたま近所の一箱古本市で見かけたのをきっかけに、ようやく紐解いた次第。
大学時代、友達がほぼ皆無だった私にとって、就活は孤独の闘いだと思っていた。
あの頃は実績も学歴も大したことないのに、一丁前にプライドは高かったから就活なんて余裕だと思っていた。
それゆえに、お祈りメール来たときの絶望感も半端なかった。
明らかに"落ちた"時は何となく察するけれども、最大限の自分を発揮できたにもかかわらず落ちた時の、一体何が悪かったんだよ感ね。
就職活動を思い返してみても、お世辞にも就活が上手く行った人間ではなかったからこそ、周りで内定者が出てくると、何かしら焦りというものを感じないこともなかった。
「就活が上手いタイプ」と言うか、世渡り上手な奴は何処にでもいるもので、そういう人が早々に内定を貰っていることを、妬ましく思わなくもなかった。
流石に他の人が内定を貰った企業の評判を調べようとまではしなかった(そもそも、それを語り合う友達がいない)けれども、順調に就活が進んだ人に対して、お前も俺と同じ様に苦しめと考えなくもなかった。
ここで上手く行っても、就職後に苦労したら意味がないだろって。……本当、今思えば、何様だよなって話だけれども。
何だかんだ、大学4年生の11月中旬まで就活して、ようやくまともな内定を貰ったけれども、もしあのまま内定が1つもなかったら、どうなっただろう。
就職しないことには「何者」かになれないと思い込んでいた当時だったら、きっとひどく憂鬱になっていたかもしれない。
話を朝井リョウの「何者」に戻すが、登場人物たちは頻繁にTwitterを更新する。就活でこんなことがあったとか、祝賀会をしてもらったとか。
中には「裏アカ」を持っている人もいて、文字通り表と裏を使い分けている。眼の前にいるこいつは、裏では内心こんなこと考えているんだって。
大前提、人に興味を持てない生き方をしてきたため、正直他人が何考えているかって、そんなに気になるものかなって思う。
もとよりTwitterやInstagramをそんな使わない。noteだって、言っちゃえば赤の他人の記事を見ているだけで、現実の知り合いの投稿を見ているわけではない。というか、やっているのかも知らないし。
でも、他人が何を考えているかを完璧に理解することはできないし、ましてやSNSの文章だけで、その先にいる人を理解することは不可能である。
それに、自分もまた、「何者か」になるために、文章を紡いでいることは否めない。
ライターとして働くためにnoteを更新し続けた自分の姿を、滑稽だ、面白くない記事だ、そもそもライターになるのには何の意味もないことだと、あざ笑っていた人も、もしかしたらいたかもしれない。
だけど、こうして実際にライターとして働いているわけで、少なからず書き続けた意味があったと思っている。それに、私には、それしか見せるものがなかったのだから。
就職活動が上手く行かなかったからこそ、その気持ちがわかる。
出せる手札は全て出してでも、傍から見たら「なに必死になってんのwww」と思われても、頑張らなきゃならない時があるんだって。
もちろん、就職したら終わりじゃないのが人生だけれどもね。私ももっと「ちゃんと」頑張らなあかんね。それではまた次回!
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