見出し画像

【大学野球】3回戦 慶大5ー7立大(5月6日 1勝1敗1分)を考察

1.はじめに

 5月6日(月曜)に行われた、慶大ー立大(3回戦)の試合について、見どころを踏まえて印象的な場面や選手について掘り下げてみたい。

2.試合の見どころ

【表1】両チームのスタメン

【表2】前日まで慶大が20連勝中(5引き分けを挟む)の対立大戦のスコア一覧

2018秋 2回戦 慶大3-4立大(立大勝利)
2018秋 3回戦 立大0-2慶大(慶大勝利)
2019春 1回戦 慶大4-1立大(慶大勝利)
2019春 2回戦 立大1-7慶大(慶大勝利)
2019秋 1回戦 慶大4-3立大(慶大勝利)
2019秋 2回戦 立大0-2慶大(慶大勝利)
2020春 1回戦 立大4-6慶大(慶大勝利)
2020秋 1回戦 慶大11-6立大(慶大勝利)
2020秋 2回戦 立大2-4慶大(慶大勝利)
2021春 1回戦 立大4-11慶大(慶大勝利)
2021春 2回戦 慶大4-1立大(慶大勝利)
2021秋 1回戦 立大5-8慶大(慶大勝利)
2021秋 2回戦 慶大2-2立大
2022春 1回戦 立大2-4慶大(慶大勝利)
2022春 2回戦 慶大3-3立大
2022春 3回戦 立大4-7慶大(慶大勝利)
2022秋 1回戦 立大0-0慶大
2022秋 2回戦 慶大2-1立大(慶大勝利)
2022秋 3回戦 立大1-4慶大(慶大勝利)
2023春 1回戦 慶大3-3立大
2023春 2回戦 立大3-6慶大(慶大勝利)
2023春 3回戦 慶大7-2立大(慶大勝利)
2023秋 1回戦 立大2-3慶大(慶大勝利)
2023秋 2回戦 慶大11-7立大(慶大勝利)
2024春 1回戦 慶大2-0立大(慶大勝利)
2024春 2回戦 立大4-4慶大


2.(A)立大相手に20連勝中の慶大は勢いあり

 【表2】にあるように、前日まで慶大が立大に20連勝中(5引き分けを挟む)のカード。慶大が立大相手に19連勝中で戦った1回戦は、慶大・外丸投手(3年・前橋育英高)と立大・小畠投手(3年・智弁学園高)がお互いに8回まで得点を与えない投球だったが、9回に慶大が好機を得点につなげて2-0で先勝。前日の2回戦は、2-2で迎えた9回に立大が二死から2点を奪って逃げ切るかと思われたが、その裏に二死から連続適時打で同点に追いつき引き分けに持ち込んだ。

 前日は最終回に立大が2点を勝ち越し、慶大の敗戦が濃厚の中、土壇場で適時打2本で同点に追いつき、負けを逃れた。逆に近年の相性がここまで影響するのかと思うほど、立大は絶好の勝利のチャンスを逸した。ロングリリーフとなった投手(4年・磐城高)の状態も悪くなく、同点に追いつかれた最終回の続投も逃げ切りを期待できた。ここまでの戦いで、慶大は先発陣に比べてリリーフ陣に手薄感が否めなかったが、その中で立大打線が着実に勝ち越して場の空気も味方していても勝ち切れず。おそらく、この年代の立大野球部の卒業生は、社会人になって取引先に慶大出身の人が出てきただけで、全て相手のペースで言いくるめられるのだろう。ここまで、同じ相手に5〜6年間も負け続け、勝つための策を講じてこなかった溝口前監督(現・杏林大監督)が残していった負の遺産は大きい。流れは完全に慶大に傾いた。

2.(B)立大が慶大にリードしてゲームセットするイメージがわかず

 昨日の流れで立大が勝てなかったら、他にどのような方法があるのか?選択肢は相当狭まった。私なりに思いついたのは、
①嫌なイメージが染み付いていない新入生を多数抜擢する
②2点差では追いつかれてしまうため、得点力を上げるため、バットの先をくり抜いてコルクを詰め込む
③みんなでお祈りする

しかし、①は逆に戦力が低下して返り討ちに合うので却下、②は目先の1勝を手に入れる可能性より、バットが折れてバレたリスクが高すぎるので却下、③は気持ち悪いし周りを誘わず個人でやってくれと思うので却下。結局、正攻法で慶大から勝利するしか方法はなく、それぞれの選手が神宮のグランドで力を発揮する事が、勝つための最善策なのかもしれない。

2.(C)立大はエースの小畠投手、慶大は連投となる渡辺和投手の先発

 両チームの先発は、立大がチーム9試合目で5度目の先発となる小畠投手、慶大は前日にロングリリーフとして3イニング投げている渡辺和投手(2年・高松商高)投手。立大は既に、早大と法大に勝ち点を落としており、今日負けると3カード連続で勝ち点を取ることができない。一方慶大は、東大と法大から勝ち点を獲得し、優勝に向けて順調な戦いができている。1回戦で完封勝利をあげた外丸投手(3年・前橋育英高)は、登録メンバーに入っているが先発を回避。

 立大の1番打者には、前日初めてスタメン出場し、5打席で4出塁した小林隼選手(1年・広陵高)を起用。2死球を受けたが慶大投手陣に22球を投じさせた。得点力の乏しいチームを活性化できるか注目だ。対する慶大の1番打者には、前日の試合で最終回に追撃の適時打を放った佐藤駿選手(4年・慶應義塾高)が抜擢された。両チームの好調な1番打者の活躍が、勝敗に大きく関わってくる可能性も出てきた。

3.立大が着実に得点を加え、終盤の猛反撃に耐えて慶大戦の連敗ストップ

【表3】東京六大学野球春季リーグ戦 5月6日(月)
慶大ー立大 3回戦 スコアボード
【表4】ボックススコア(慶大)
【表5】ボックススコア(立大)

 中盤まで競った試合展開。5回に立大が集中打で慶大を突き放し、一方的な展開になるかと思われたが、終盤に6点のビハインドでも諦めない慶大は凄まじい追い上げで2点差まで詰めたが、最後は立大の細かい継投に抑えられ、立大戦の連勝が20でストップした。この結果、1勝1敗1引分となり、第4戦で勝利したチームが勝ち点獲得となる。

 ようやく立大が慶大戦の連敗を止めた。通常ならば、終盤に6点リードしていれば、安心してアウトを一つずつ積み重ねていけばいいが、この日も慶大は「立大相手ならいつでも得点できる」の雰囲気が出ていて、最終回も本塁打が出れば同点になるシチュエーションにもなった。立大の投手陣はプレッシャーがあったと思うが、小畠投手を筆頭に良く踏ん張っていた。小畠投手は中1日での登板で、終盤は苦しかったと思うが、力む事なく、丁寧に自制して投球できたのは素晴らしい。7回まで投げた事によって、慶大に流れを渡さずに済んだ。

 8回に慶大に許した4失点は、この連敗の流れでは責められない。犠牲になったのは小林誠投手(2年・日大二高)で、打者5人に対し3失点の内容は悪く見えるかもしれないが、前回も感じたがこの投手はマウンド上で周りが見えていて、自分の役割を理解していると感じた。木村監督が大事な8回に小林誠投手に託した気持ちが分かる。6点リードの場面で、リリーフ投手がすべき事は、とにかくペース良くストライクゾーンに投げる事。投球間隔が空けば空くほど、慶大に流れを持っていかれるからだ。小林誠投手は10球投げたうち8球をストライクゾーンへ投じ、ペースも非常に良かった。失点しないのがベストだが、どんどんストライクを投げる事によってアウトカウントも稼げた。

 立大・木村監督の容赦ない選手起用も選手に厳しさを与え、勝利の要因となった。今季は試合に出続けていた主将の田中選手(4年・仙台育英高)を5回の好機でベンチへ下げた。代わりの打者はリーグ戦無安打の打者だったが、初球の球を強く叩き初安打が打点付きとなった。昨年までの甘い野球から脱却の糸口が見えた気がした。おそらく、木村監督と田中選手の信頼関係が築けているからこそ、主将を下げる事でチーム全体に厳しい空気を流せた。

 慶大は終盤の追い上げは見事だったが、投手陣が心配だ。この日先発の渡辺和投手は、連投だったため出力が出せなかったが、エースの外丸投手以外で短いイニングを安心して任せられる投手が見当たらない。外丸投手で2つ勝てればいいが、明大戦と早大戦を控えて、初戦を落とした場合は勝ち点も苦しくなる。打線が相当頑張らないと、この日のような展開を繰り返す可能性もある。制球力のある投手が1人でも出てこないと、苦戦を強いられそうだ。

 最後に、打者で目立ったのは立大の丸山選手(2年・大阪桐蔭高)。この日は4打数無安打だったが、3打席目のライトフライの打球は回転が与えられており、対空時間の長い素晴らしい軌道だった。安打は出なかったものの、スイングも鋭く、木製のバットに完全に慣れてきた。投球コースの得手不得手が極端にならなければ、残り2カードでの本塁打の期待が高まる。




参照:【表1】一球速報.com

【表3】〜【表5】東京六大学野球連盟HP

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?