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谷崎潤一郎『小さな王国』

全国的に、ゴールデンウィークの真っ只中ですが、我が家は娘の陣痛待ちのため、遠出することもできず。

日曜日、散歩に出掛けるフリをして、一人でお茶してきました。


ケーキセット
ケーキはピスタチオ


持参したのは眼鏡とこちらの本。

吉行淳之介『文章読本』

この本のp.101 に谷崎潤一郎の『小さな王国』(大正7年)という作品が紹介されていましたが、初めて聞くタイトルでした。

そのうち図書館で借りて読もうとメモしたのですが、
待てよ…
我が家には「日本の文学」全80巻(中央公論社)があったはず。

案の定、物置部屋の本棚にありました。
昭和39年初版、43年25版発行となっています。
この文学全集は、夫の実家から譲り受けたものですが、我が家の子どもたちはまったく関心を示さず、わたしも危うく存在を忘れるところでした。

宝の持ち腐れ
灯台下暗し
とはこのことです。

谷崎潤一郎だけで、3巻あり、幸運にも『小さな王国』も収録されていました。

短編なので、ということを差し引いても、あまりの面白さに一気読みしてしまいました。

谷崎潤一郎の文章の美しさには強く惹かれますが、今まで読んだどの作品とも違う、何とも形容しがたい趣きがあります。
登場人物は小学校の教師と生徒たち。
男女の色恋沙汰は一切ありません。

見かけは愚鈍にさえ見える一人の転校生が、次第に隠然たる力を持つようになり、一種のカリスマ性を発揮します。
一人の生徒に生徒たちが翻弄され、のみならず教師まで……。

何とも不思議な余韻の残る物語でした。

全集に入っているぐらいですから、きっと有名な作品なのでしょう。
間違いなく、異色作です。


温故知新じゃないですが、これからは、文豪といわれるような人の作品もどんどん、読んでみたいと思いました。

調べてみたら、青空文庫でも読めるようです。(分量1時間0分)



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