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It’s the single lifeとは?25

〇〇:ん…んん…

耳に入る小鳥のさえずり

カーテンの隙間から入る陽の光

睡魔をまだまだ強敵と認めつつも、どこか心地の良い

心地の良い

心地の…

〇〇:…何故手枷で固定されている?

何度目かの整理をしよう

ここは俺の部屋だ。間違いない。

そしていまは朝。

今日はあの遠藤さくらさんと、プライベートでお出掛け。

〇〇:…それだけ聞いたら神イベだが…

いかんせん嫌われている。
とてつもなく嫌われている。

これ以上なにかをしでかせば、間違いなく職業欄がニートかパチンカスの二択

遅刻なんて絶対に許されない。

それだけは避けねばならない…

〇〇:…おい!!和!!これを外せ!!

こんな狂気じみた馬鹿をやるのはあいつしかいない。

和:おはよう〜。
パンとご飯どっちにする?

〇〇:なぜ人に手枷をつけておいて、平然と朝食の問いをかけられる?

和:いらないの?

〇〇:ご飯で。

和:炊くのめんどくさいからパンね。

聞くな。

〇〇:じゃなくて!!
なんだこれは!!

和:え?見て分からないの?

〇〇:え?
見て分かるから聞いてるのが分からないの?

和:え?見て分かるから聞いてるのが分かってるから聞いてるって分から…

〇〇:もういいわ!!
とにかく外せ!!

和:なぜ?

〇〇:時間がないんだ!!
早く行かないと遠藤さんに…

あれ。待てよ。
俺、和にこの話した覚えが…

和:ふーん。
やっぱり本当だったんだ。
さくらさんとお出掛けに行くって話。

…オーマイガーー。

〇〇:和。
人には会話という選択肢がある。

和:そして殺めるという選択肢もある。

〇〇:…

和:お義兄ちゃんは私の彼氏だよね?

〇〇:いや、違…

和:だよね?

〇〇:…親しい仲ではある。

和:チッ。

なんて露骨な舌打ちだこと。

和:そして、さくらさんは私の天使だよね?

〇〇:天使なんてものは存在し…

和:ね?

〇〇:…仰る通りです。

和:つまり…
彼氏が天使に浮気するって許される?

〇〇:その理屈で言えば、彼女が天使に…

和:なに?

〇〇:なんでもないです。
なにも言ってないです。

和:お義兄ちゃん「が」誘ったの?

〇〇:違う違う違う!!
俺「が」誘われたんだ!!

和:なんかその言い方は腹立つ。

〇〇:ごめんなさい…
とにかく!!俺は一切提案してない!!

和:ふーん。
もし嘘ついてたらどうする?

〇〇:その時は喜んで心の臓を捧げよう。

和:…分かった。
とりあえず足枷は外してあげる。

そうそう。分かってくれれば…

〇〇:なぜ足枷だけ?

この際、足枷もしてんのかよ!!
なんてツッコミは時間の無駄だ。
決して怖すぎる現実に目を背けたわけではない。

和:よくよく考えたんだけどさ。

〇〇:…ほぉ。

和:お義兄ちゃんが誘ってようがさくらさんが誘ってようが、どちらにせよ私的には許せないなぁと思って。

〇〇:和…
現代人の悪いところは考えすぎることだぞ?
考えるな感じろ。

和:いいの?
感情のまま動いたら、たぶん食パンを切るナイフがお義兄ちゃんの心の臓に刺さると思うよ?

〇〇:和。お前は昔から頭が良かった。
これからも存分にその脳をフル回転して考えてくれ。

和:褒めてくれてありがとう。
このまま一緒に寝る?

〇〇:それも悪くは…じゃない!!
和!!マジで頼む!!
早く行かないと殺される!!

和:さくらさんがそんな事するわけないじゃん。

いいやするね!!
君のこと溺愛してるあの狂気じみた性格ならするね!!類は友を呼ぶね!!

〇〇:頼むって…
なんか一つ言うこと聞いて…

いや、待てよ。
ここで仮に脱出して、遠藤さんとのお出掛けを乗り切ったとして
和にそんな交換条件出したらどちらにせよ…

和:「あげるから。」
うん。分かった。
しょうがないからそこまで言うなら外すよ。

〇〇:待て待て!!
言ってない!!
何だその下手くそな低い声は!!
そこまで言う前に俺は止めました!!

和:無駄だよお義兄ちゃん。
お義兄ちゃんの言葉は私が貰ったもん。

〇〇:どこぞの零番隊の坊主になってんねん。

和:はい。外したよ。
いいよ、行ってきて。

こいつ…
笑顔で仕事に送り出す新妻みたいな顔しやがって…
分かってるぞ…
その笑みが最後の寿命を奪い取る死神だってことわ…

和:ほら。行かないの?

〇〇:行ってきます…

和:うん。
ちゃんと。ちゃーんと。
帰ってくるんだよ。

〇〇:…はい…

ーー

〇〇:はぁ…はぁ…
あぶねぇ…なんとか間に合った…

集合時間の5分前

とりあえず社会人としては…

遠藤:おはようございます。

〇〇:!?
え、遠藤さん…おはようございます。
は、早いですね。

遠藤:社会人として10分前行動を心掛けているので。

…あれぇぇぇ。
俺の読んでた妄ツイなら「いやいや。私もちょうどいま来たとこですから」的な展開になるはずなのに…
絶対許さないぞあの書き手。

遠藤:あの。無視ですか?

〇〇:い、いえいえ。
今日もお綺麗だなぁと…

遠藤:ごめんなさい。
やっぱり無視しててください。
虫唾が走りました。

〇〇:ハ、ハハハ。
無視だけにってねぇ…

遠藤:…

ごめん和。
君の言う事聞く前にお義兄ちゃん死んじまうみてぇだ。

遠藤:こんなことするために今日は来たわけじゃないんです。

ですよね。
俺もわざわざ死ぬために来たんじゃないです。

遠藤:とりあえず…
今日は井上さんの好きなところに行きたいです。

〇〇:…ぼ、僕の好きなところですか?

遠藤:はい。

〇〇:…

なんだこの展開は?
試されてるのか?
たしか前読んだ妄ツイなら「いやいや、せっかくならあなたの行きたいところに行きましょうよ。どこでも付いていきますよ。」が正解か。よし…

遠藤:勘違いしないでくださいね。

…そんな台詞はなかったぞ。

〇〇:どういうことですか?

遠藤:…和ちゃんの好きなものはなんですか?

〇〇:な、和の好きなものですか?

遠藤:はい。

和の好きなもの…
アニメ…漫画…遠藤さん…弓道…おはぎ…
あとは…

遠藤:あなたですよ。

〇〇:…

遠藤:非常に不可解ですが。

〇〇:僕もです。

遠藤:つまり、あなたの…
井上さんのことを知ることが、和ちゃんに好かれる第一歩だと思ってます。

〇〇:お言葉ですが…
和に好かれるという観点で話せば、遠藤さんは第一歩どころか、すでにゴールテープを切ってる気がするのですが。

遠藤:足りません。
もっと好かれたいんです。
後輩に慕われる、好かれる先輩になりたいんです。

なるほど…

〇〇:分かりました。
僕も新人も新人ですが、乃木坂のスタッフです。遠藤さんの力になれるよう全力を注ぎます。

遠藤:あ、ありがとうございます。
ちょっとだけ…ホンのちょっとだけ感謝します。

やべぇ。涙出そうなくらい嬉しい…
こうなったら頑張っちゃうぞ!!

〇〇:ではさっそく、僕が一番と言っていいほど大好きなところに行きましょう!!

ーー

綺羅びやかな室内

鼓膜を壊すのかというほど音の情報量の多さ

〇〇:フン♪フフン♪フンフフーン♫

遠藤:…の…

〇〇:フフン♪フフ…

遠藤:…あの!!

〇〇:はい!?

遠藤:…とで…いい…か!?

〇〇:す、すいません!!
音がでかいのでもう少し大きな声でお願いします!!

遠藤:一回外に出ていいですか!?

〇〇:は、はい!!

二人は入ってきた入口から足早に店外へと出る

一人は不思議そうに首を傾げ

もう一人は今にもぶち切れんばかりの表情を浮かべ

遠藤:一応お伺いします。
あそこはなんですか?

なにって…

〇〇:見ての通りパチンコ屋ですね。

遠藤:…なぜ?

〇〇:僕の好きなところに行きたいとのことでしたので…

遠藤さんと並びで打てる日がくるなんて、まさにこれは神イベントかもしれ…

遠藤:井上さんは今すぐにでも無職になりたいんですか?

!?

〇〇:な、なぜそうなるんです!?

遠藤:逆になぜそんなに驚けるんですか?

〇〇:だって要望に答えて…

遠藤:私があそこに行って、和ちゃんから慕われる、好かれる先輩になれると思いますか?

〇〇:実は和がパチンコ好きって可能性も…

遠藤:本当にあるんですか?
嘘ついたらその時点でクビですよ?

〇〇:1ミリもないです。
むしろ好きか嫌いで言ったら大嫌いです。

遠藤:別にパチンコを否定するわけじゃないです。
ただ。今回の目的を聞いたうえでパチンコ屋に連れて行った井上さんの信用度はマイナスの域に達しました。

わぁお。

〇〇:ここから挽回出来る可能性は…?

遠藤:…井上さんしだいですね。

〇〇:…遠藤さん。
ホンの少しだけ待っててもらってもいいですか?

遠藤:え?
なにを…って聞く前に電話し始めてるし…

〇〇はスマホをすぐに耳にあて、遠藤に聞こえない声量で言葉を発する

〇〇:もしもし!!聞こえるか!?

「聞こえてるよ〜
どうしたのお義兄ちゃん。」

〇〇:和。落ち着いて聞け。
俺はいま命の危機に陥っている。

和:ふーん。
忙しいから切っていい?

〇〇:待て待て待て!!
いいか!?今から聞くことを答えてくれ。

和:はいはい。
好きな食べ物はピーマンの肉詰めだよ。
じゃあ…

〇〇:好物は聞いてない!!
もしデートとか記念日とか特別なことをするなら、和はどこに行きたい!?

我ながらナイスアイデアすぎる。
ぶっちゃけ俺の好きなところ=和が喜ぶところって方程式は1ミリも当てはまらない。

ならば!!
そもそも本人に回答を聞けばいいのだ!!

和:え…
お義兄ちゃん…とうとう私とハネムーン行く気になったの!?

〇〇:行かない。
そもそも結婚してない。

和:じゃあもう電話切…

〇〇:待て!!
ハネムーンではないが、日頃頑張ってる和にたまにはご褒美でも…

和:お義兄ちゃん…
そうだね。結婚は婚姻届書けばいつでも出来るもんね。

しないがな。

和:そうだなぁ。
お義兄ちゃんが私のために考えてくれたところならどこでもいいや。
じゃあ楽しみにしてるね。バイバーイ。

ツーツーツー…

〇〇:…待て待て!!

あいつマジで切りやがった!!
こんなのノーヒントじゃねぇか!!

遠藤:あの。

!?

〇〇:お、お待たせしてしまい申し訳ございません。

遠藤:いえ。それより…

??
どうしたんだろう…
なんか周りをめっちゃ見てる気がする…

〇〇:どうかしましたか?

遠藤:いえ…
なんか視線を感じる気がして…

〇〇:視線ですか?
周りを見た感じ…
とくに僕たちのことを見てそうな人はいませんけど。

遠藤:そう…ですよね。
すいません。私の勘違いだと思います。
それより、行く場所決まりましたか?

ヤバイヤバイヤバイヤバイ。
こうなったら…

〇〇:遠藤さんの行きたいところに行きましょう。

遠藤:…はい?

〇〇:そこに答えはあるはずです。

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