札幌でおいしいお酒とごはん #3「炭焼きジンギスカンいし田」（佐々木禎子）

2023年2月2日 12:02

　最高気温がマイナスで不要不急の外出を避けるようにとニュースが流れたとても寒い日、凍えて痛い耳をごしごしと手で擦りながら、私は藤沢チヒロさんと札幌大通り公園であひるを作った。
　作りたかったので!!

　いい感じにあひるに隊列を組ませ写真を撮ったところで満足し、
「お酒飲みたい。寒い。どっかあったかいところ入りたい」
　と、ぐだぐだいいながら薄青い色に染まる雪道をてくてくと歩きだす、私たち。
　子どもじゃないので寒さを忘れて外遊びを続けられないし、すぐにおうちに入りたいし、酒も飲みたい。
「火鉢とか炭火とかそういうのがいい。指冷たい。かじかんだ手を火であぶって、さすさすってしたい。そうだ。ジンギスカン食べたい」
　思いついたことをそのまま口にしてたら、
「あ、いいジンギスカン屋さん近所にありますよ」
　チヒロさんが即答した。あなたは動いて歩けるOKGoogleですか。
　というわけで、心の声をだだ漏らしてたら隣で返事してくれる立体化したOKGoogle藤沢チヒロさんが美味しいジンギスカン屋さんに連れていってくれました。

　士別のサフォーク種の羊を取り扱っている「炭火ジンギスカン　いし田」さん。

あんまり寒くて指がもげそうで、外観の写真を撮り忘れていました。ごめんなさい！（藤沢）
これはGoogleストリートビュー。1階には人気のグルメバーガー店があります。

　ビールで乾杯し、士別サフォークのコースをお願いしました。お通しはポテトサラダ。ピンク色がかわいい。つまみながらビールをごくごく飲んでいると、どーんと野菜の大盛りが先に到着です。

野菜どん。マッシュルームとかプチトマトとか、ジンギスカンにしてはちょっと変わった野菜も盛られてくる。

「ジンギスカンってさ、野菜が美味しいんだよね」
　テーブルの真ん中に火鉢を据えてそこにジンギスカン鍋。ジンギスカン鍋ってうまく作られているなあって見るたびに思う。中央が盛り上がって山になっていて、そこで焼かれた肉の脂が鉄鍋の溝を伝って、鍋縁の裾野になだれ込む仕様。考えついたひと天才だ。

　まず、鉄鍋に脂固まりを押しつけてじゅわーっと溶かし、鍋を脂でてらっと光らせる。
　裾野にあしらうのは、当然、野菜。もやし。タマネギ。かぼちゃ。オクラ。キャベツ。じゅうじゅうと流れてきた肉の脂を野菜が吸い取る。じゅわっ。焦げ目も旨いので、キャベツとかカリッと焦したりもして。
　野菜に、にこにこしていたら肉も到着です。
「え。グットルッキング肉きた。なにこれ」

　肉たちそれぞれが名乗り出ていらっしゃる。お名前つきでいらっしゃる。めでたい感じに紅白な肉。羊のロースとかカルビとか脂が旨そうに白いくて、綺麗な赤身を引き立てている。
「タンとレバーです」

　つやっつやぴかっぴかでレアでもいいんじゃないかこれっていう羊のタンやらハツやらレバーも来た。
「……赤ワイン飲んでいいですか」
　確認をとると「もちろん。ボトルいきましょう」と、飲酒に積極的なOKGoogle藤沢チヒロさんはワインを私に選ばせてくれました。実は、わたし、誕生日が近いので前祝いということで。
「おめでとうございます」
　お誕生日さまは、北海道をたたえたいので小樽ワインの赤をチョイス。軽くてフルーティ。

「ジンギスカンで一番好きなの、もやしとタマネギなんだよねー」
　などと野菜をむさぼり食いつつも、もちろん肉も食う。どんどん食う。
　労働に疲れて閉じかけた目がカッと見開く美味しさよ。
　噛み応えがあるけど柔らかい肉! 肉の脂! 羊なんだけど、一般にみんなが思う羊の臭みというのはなく、でも「味と香りの強いもんかが口んなかにあるぞー」って感じ。そんなすべてを受け止めて、ちょっとついた焦げ目のビターさも味わい深い野菜。肉の脂の甘みと、野菜の甘みが、舌のなかで一体化。それを小樽ワイン赤でリセットしつつ、次の肉。野菜。肉。野菜。ワイン。こんなの、ボトルなんてあっというまに空ですよ。
　続いていただいたのはグラスのオレンジワイン。爽やか～。
　メニュー見てたら気になるものがちらほらと……。
「この羊のユッケ食べていいですか」