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名店とは、なにか。



予約○年待ち、グルメサイトの点数が○点、ミシュランの星がいくつ

みたいな定量的な評価が人気店を生み出して、予約が予約を呼び、今の世の中の予約困難店と言われる店を生み出しているように思います

これはSNSやグルメサイトが産んだ功罪で、誰もがその簡単に数値化された情報に触れることができるようになったからこその事態だと思っています
(そのすべてを否定するものではありません)

もちろん簡単なことではないにせよ、8席、10席の大将本人が切り盛りする小型店でその評価の波に乗れば、あっという間に予約困難店が出来上がります。情報の伝播の速さゆえ、です

口コミサイトやInstagramによる影響はとても大きく、期待値のかけ算が盲信的なファンを持つ予約困難店生み出してきたと言っても過言ではないかと思います


ただしぼく自身は、飲食店というものは”定量的ではなく定性的な評価”によって成り立つものだと思っています

飲食業界のアニキ、大先輩である肉山創業者の光山さんがこのようにツイートされていて


それがこのしとしとと夜に降る雨の中、外で傘を片手に立ち止まりこのnoteを書くに至った経緯であります
(久しぶりにnoteを書くきっかけになりました)


さて、

口コミ(これは本来の意味での伝聞による、噂による評価)というものが飲食店の価値を作る時代がほんの少し前までは確かに存在していて、その時代の人気店にはその店独自のリアルなコミュニティが形成されてきました

飯倉のキャンティとか、麻布十番のピッコロ・グランデなどがそういう意味での名店です


残念ながら口コミサイトの点数はさほど高くなく予約は比較的取り易いのですが、そのコミュニティに入るのはとても困難です

そこには長い歴史とともに作り上げられてきた、真の意味での店も客との信頼関係、そこに集まるお客さんたちの人間関係が存在するからです


びっくりするようなビッグネームが短パンにサンダルで休日の早めの時間から家族と食事をしていたりするわけです

有名人であっても、お金持ちであっても、いわゆるインフルエンサーであっても、彼らにはまったく関係ないのです

彼らにとっての良い客というのは、長年通い続けてくれていて、店のことを愛し、料理を知り、スタッフを可愛がってくれている身内のような客なのです

これは、店と客ではなく、人と人との関係で

老舗の名店と聞くととっつきづらいように感じますが、実際はそんなことはなく彼らは常に客目線、お客様主導の店づくりをしています

子どもにも温かいし、好き嫌いがあるお客さんにも寛容です

料理はおまかせコース一本などではなく、アラカルト中心です

アラカルト(単品料理)は季節によって変わり、もっというとお客様によっても変わります



これはお店側にとっては食材の管理も困難だし、技術も必要だし、もちろん手間もかかればオペレーションも崩れやすい

店側にとって良いことは一つもありません

おまかせコース一本

一斉スタート2回転

の方が店側にとっては全てにおいてコントロールしやすく、遥かに都合が良いのです

(もちろんそれ自体が悪いということではありません、お店としての在り方とスタンスの違いです)

サービスマンの立場からいくと、決まったおまかせコースを完璧に説明して演じ切るよりも、どんな客が何をどれくらい求めていて、どのようにメニューを組み立てていくのかを考える方が遥かに困難なのであります

そう、サービスマンにとって一番難しい接客というのは実は

「オーダーテイク」

なんです

いかに的確に素早くストレスなく注文を受けて、それをシェフに伝え、
より良い順番で求められているスピードで提供する

これがサービスマンの腕の見せ所です

そんな店がとんと、少なくなりました

ですから、老舗の名店には必ず名物マダムや名サービスマンがいます

彼らは客の好みを把握しているのみならず、客の目線によってその日求めているものをストレスなくキャッチすることができます

好みを把握と書きましたが、初めてのお客様であっても彼らはそれを成し得ることができます

サービスマンの観点からいくと、(はじめての)お客様を最もよく観察する瞬間というのは入店時です

お店への入り方、目線、言葉遣い、歩き方、そして身のこなし、最後に服装や持ち物。
服装や持ち物から人を判断するということはありません

まずは目線です

少し話がそれましたが、ぼくにとっての名店というのはそんなお店で、それは決して店主導のお店ではなくて、混乱と混沌の中を情熱をガソリンにして駆け抜けるような人間たちの作り上げる不器用なお店

それこそが、文化として何十年も残るものだと思っています
(もちろんおまかせコース一本のお店でもそのスタンスで店づくりをされている名店も沢山あると思います)

だからそんな店を作りたいなと、切に願い

それを実現するために尊敬する大好きな人に応援いただいて、

実はいままさに動き出しております

これまで作り上げてきた人間関係を土台にして、泥に塗れる必要があります

長く続く文化を作ろうと思えば、飲食店経営はとても困難です

※お客さんは自分が好きな店に行けば良いと思います。そこを否定するものではありません。

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