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ナンバーツーを見た時点でこれは戦う前に負けていると悟った件

いつも急にやって来るのだが、今日はふらっと敵の大ボスがやって来た。組織のナンバーツーだそうだ。ブルーのブレザーに真っ青な本革の薄型ランドセルみたいな鞄。あんなの見たことねえ。職人に札束を渡して作らせたのだろうか。ボタンダウンシャツをラフに着こなし、柔らかめのスラックスにエグく光った革靴。背は低め、髪は短くまとめて、口元には笑みを浮かべるも目は笑っていない。即座におれたちは緊張した。ジョイマンの相方流に言うなら「なんだこいつ〜」である。ナンバーツーはこちらに何も語らせず、隣にピッタリ付き添う部下の的確な説明を聞きながら質問を幾つかして、最後に「分かった」と言った。これで終わり。上長たるもの、部下や兵隊の言うことを即座につぶさに理解して自分のものにしてしまうのだろう。さもないと瞬時的な判断が出来ないからだ。それは蛇が獲物を丸呑みするのに似ていると思った。物事の細かいことはさておき、とりあえず鵜呑みにしてしまう。そして、時間をかけて反芻しているのだろう。そうやって最善の布陣で固める敵と、成り行き任せのおれたち。そもそも追い込まれている事に気付かないおれたち。戦いの場である事すら理解していないのだから。急な眠気を覚えた。戦力外という三文字が頭をよぎる。ああ、おれたちは戦うべきじゃなかったんだ。こんな意味の分からぬ文章を書いているくらいなら、さっさと糞でもして寝てしまった方が良いのだから。