見出し画像

ローズ・グラス『Love Lies Bleeding』セックスとドラッグと筋肉と

ローズ・グラス長編二作目。1989年、ジムのマネージャーであるルーは、ボディビル大会を目指してニューメキシコを通りかかった放浪者ジャッキーと出会い恋に落ちる。ルーは自身の後ろ暗い過去と最低な男家族に悩まされており、その根源たる有害男性性を内面化していた。彼女の父親が郊外の砂漠で射撃場を経営しつつ、メキシコへの武器密輸で財を成しており、FBIにも目をつけられていたのだ。ルーが生身での勝負に拘るジャッキーにステロイドを勧め、彼女が薬物中毒になっていくのは、本作品のボディホラー的な側面を支え、『TITANE』においてステロイドによって家父長としての尊厳を支えていた父親をも想起させる。銃や薬物(ステロイドも煙草も)といった男性的なものに染まっていた、或いは染められた二人が、それらを一緒に跳ね除ける作品だった。また、二人が初めて得た愛の喜びをある意味で大袈裟に演出することで、世界の醜さや二人の弱さなどを浮き彫りにしていくのも非常に良かった。個人的にはゲロ吐いた次の瞬間に血が横から飛んでくるシーンが好き。

・作品データ

原題:Love Lies Bleeding
上映時間:104分
監督:Rose Glass
製作:2024年(アメリカ)

・評価:70点

この記事が参加している募集

映画感想文

よろしければサポートお願いします!新しく海外版DVDを買う資金にさせていただきます!