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ちはるのファーストコンタクト

ファーストコンタクトは相互理解への第一歩。このマガジンでは、私が考えていることの第一歩をできるだけそのままの形で公開していきたいと思います。話題は、アドラー心理学、教える技術、研… もっと読む
毎週月曜と金曜にブログを書いています。それ以外の曜日では、過去記事の切り抜き、質問受け付け、本の紹… もっと詳しく
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2017年1月の記事一覧

【連載】教える技術講座#03:教えることは協力すること。

2017年1月27日 (金曜日は現在開講中のオープンカレッジ講座「教える技術」をネタにして連載しています) 前回は「キャロルの時間モデル」を取り上げました。もし自分が学ぶのに必要な時間が与えられているならば、全員が100%習得できるはずです。これを「キャロルの時間モデル」と呼びます。 一見して当たり前のことのように思えるキャロルの時間モデルですが、学校というシステムではこれが実現されていません。クラス全体が決められたスピードと順番で学習を進めていきます。そのスピードがち

【連載】教える技術講座#02:必要な時間をかければ誰でも習得できる。

2017年1月20日 (金曜日は現在開講中のオープンカレッジ講座「教える技術」について連載しています) 教える技術の最終的な目標は、すべての人が自分に必要な技能を習得できるようにするにはどうしたらいいのかを明らかにすることです。それは可能なことなのです。 「でも、学校で習うことは100%できるようになるわけではない」と反論するかもしれません。もしそうならテストは全員が満点を取れるはずです。しかし現実には満点を取る人はごくわずかで、それ以外の大部分は満点ではありません。落

【連載】教える技術講座#01:「ダメ」と言う必要はないのです。

2017年1月14日 毎週金曜日は何か連載ものを書こうと決めました。なんの連載にしようかと少し考えたのですが、現在開講中のオープンカレッジ講座「教える技術」について書くことにしました。この講座は全部で4回で完結しますので、連載回数もそれくらいの回数になります。 毎回の授業をしてみて感じたことや、質問をもらって考えたことなどを書いていこうかと思います。読んでいただくと私がどういう意図で授業のデザインをしているかということについても、それとなくわかるかもしれません。 第1回

研究テーマを「自分のもの」にすること

2017年1月31日 (火曜日は「教えること/研究すること」のトピックで書いています) 先日今度退職される教員の歓送会が開かれました。それぞれのスピーチが面白かったのですが、その中で次の話は特に印象的でした。 大学教員がゼミで果たすべき重要な仕事のひとつは、ゼミ生に「ここを深く掘れば意味のある研究ができるよ」というような研究テーマを提供できることです。その目標が明確に決まりさえすれば、学生は一連の研究プロセスに乗せることができるのです。 というわけで大学教員の資質は石

自分の関心をコントロールすること。

2017年1月30日 (月曜日はアドラー心理学のトピックで書いています) 前回は「勇気づけの操作的定義」ということで書きました。 自分が相手に勇気づけをしようと意図しても、相手が勇気づけられるかどうかは、自分と相手の信頼関係次第です。「こう言えば勇気づけられますよ」というような魔法の言葉はありません。ですので、勇気づけという行為をこのように定義します。 「ある行為をして、その結果、相手が勇気を持てる状態になったとき、その行為を勇気づけと呼ぶ」 これを操作的定義と呼び

【お題拝借】アドラー心理学を知ってどう変わったか/社会人への授業や講演をするときの喜び

2017年1月29日 (日曜日は皆さんからの質問にお答えしています) 今回は「お題」を2ついただいております。 私がアドラー心理学を知ったのは、野田俊作先生を通じてです。もし私が変わったとしたら、それはアドラー心理学によってというよりも、野田先生の影響だと思います。野田先生はアドラー心理学にとどまることなく、科学を含み、科学を超えたあらゆるものの見方について教えてくれました。それは当時、実験心理学の一学徒であった私の考え方を大きく広げてくれるものでした。 当時に比較す

それは「努力」と呼ばれる形の完成形なのです。

2017年1月28日 (毎週土曜日は昔のブログ記事を振り返って書いています)  暑くても閉め切った体育館の中で、昼休みにバドミントンをしている。やはり休みを取っている人が多いのか、集まる人数も少なくなってきた。きょうは、たまたま一面に四人ちょうどのメンバーがそろったので、休憩なしに4ゲームを続けてやった。ばてばて。ふらふら。こんなにしんどい思いをしたのは、中学時代にテニス部に所属して、しごかれた時期以来のことだ。自分の限界を感じるまで身体を動かすということは、それ以来なか

【本】キース・E・スタノヴィッチ『心理学をまじめに考える方法』

2017年1月26日 キース・E・スタノヴィッチ『心理学をまじめに考える方法』(誠信書房, 2016) ■要約マスメディアから伝えられる「心理学的な知識」は大部分が幻想であり、自己啓発書としても売られる「心理学の本」の大部分は心理学者が書いたものではない。それらは「レシピ的知識」として使い方を表面的になぞるだけであり、「仕組みの知識」ではない。そうしたものに踊らされないために、実証的アプローチと批判的思考力をつけよう。 ■ハイライト科学の本質とは、「人前で失敗を犯すこと

マガジン記事を書く丁寧さは本の原稿を書くプロセスに近いものがあります。

2017年1月25日 (水曜日はフリーテーマのコラムを書いています) noteでこのマガジンを書き始めて1ヶ月になろうとしています。最初は自分の文章に値段をつけることに抵抗がありましたが、やっているうちにこれは良いシステムだということに気づきました。 読んでくれる人が確実にいるという意識のおかげで「書こう」という気持ちがわいてきます。 ブログですと、自分がわかっている部分はつい書き飛ばしてしまうのですが、そういった部分を丁寧に書こうという気持ちになります。この丁寧さは

発表を聞いたらコメントシートに書くというシステムを参加者全員が共有しているということが文化なのです。

2017年1月24日 (火曜日は「教えること/研究すること」のトピックで書いています) 数日前にゼミ生の研究発表会が終わったところです。研究発表会では他のゼミ生の発表を聞くだけではありません。発表を聞いたら必ず「コメントシート」に記入して、発表者に渡すというシステムがいつの年からか確立しました。 コメントシートは下のように印刷されたA5判の用紙です。これを参加者が十数枚持って、発表を聞くたびに記入します。そして発表者に渡すのです。 どんなコメントであっても書いてもらう

勇気づけの操作的定義

(月曜日はアドラー心理学のトピックで書いています) 2017年1月23日 前回は「「勇気づけ」ってなんなんですか?」ということで書きました。 勇気づけ(Encouragement)はアドラー心理学のキーワードのひとつです。褒めたり叱ったりすることをやめて、勇気づけをするといいですよ、という主張をします。 そうすると「私は褒められて伸びる人です」とか「叱られて気づくこともあります」という反論を受けるので、こう答えます。 「いや、褒めてもいいですよ。相手が勇気づけられる

【お題拝借】学生の頃の映画/『嫌われる勇気』のドラマ化

2017年1月22日 日曜日は「お題拝借」ということで、皆さんからの質問にお答えしております。今回は2つお題をいただいております。 子供の頃に見た映画は、世代的に「ゴジラ」や「ガメラ」のシリーズでした。怪獣ものの中では「サンダ対ガイラ」というのが記憶に残っています。ストーリーは覚えていませんが、やたら怖かったのを覚えています。 大学生になってからは、「早稲田松竹」という映画館に、授業の空き時間を利用して足繁く通っていました。早稲田松竹はまだ現役の映画館で、名画を二本立て

ブログに限らずどんな文章でも書いた瞬間に報われているのです。

2017年1月22日 ブログ歴20年の私もそう思いますね。 そうなんです。ブログに限らずどんな文章でも「書いた瞬間に報われている」。書いた瞬間に元は取れているのです。もし書かなければ、それだけです。損も得もしない。 しかし書けば必ず得をします。いつの日にか。いつ、得という形になるかはわかりません。しかしいつか形となってあなた自身に返ってくるでしょう。 私自身を作っているものは、自分自身が書いてきたものなのです。私が書いた文章が私自身を作っているのです。文章を書くという

【本】リッチ・カールガード『グレートカンパニー』

2017年1月20日 (木曜日はお勧めの本を紹介しています) リッチ・カールガード『グレートカンパニー』(ダイヤモンド社, 2015) ■要約会社が存続し続けるためには、戦略とハードエッジとソフトエッジの3側面で優位に立つ必要がある。システムとプロセスであるハードエッジは『イノベーションのジレンマ』で示されたように、優位性は長くは続かない。人間らしい価値としなやかさであるソフトエッジが鍵である。ソフトエッジとは、信頼、知性、チーム、テイスト、ストーリーである。 ■ポイ