コラム用

データだけでもダメですが、人間くささだけではもっとダメです。

2017年3月22日

水曜日はフリーテーマで書いています。

Netflixで「マネーボール」という映画を見たのですが、これがすごく面白かった。アメリカの球団アスレチックスのジェネラルマネジャー(GM)が主人公です。彼が予算のない球団で「野球統計学」を使って球団を20連勝させ、地区優勝まで導くという話です。

野球統計学は正式にはセイバーメトリクス(SABRmetrics)と呼ばれています。SABRとは「アメリカ野球学会」の略称です。そんな学会があるんですね。

セイバーメトリクスでは、試合における様々な指標、例えば、出塁率、長打率、選球眼などの数値のどれがどれくらい勝率に貢献するかという分析を行います。統計学でいうと勝率を目的変数とした重回帰分析をするわけです。そうすると、バントや盗塁は、常識に反して、勝率を下げる方向に作用することがわかりました。

それでアスレチックスのGMはこの理論を採用するわけですが、初めは監督との食い違いがあって全くうまくいかない。やっぱりこれはダメかというところで、試合を見ないのが習慣のGM自身が、選手たちにハッパをかける。そこから快進撃が始まるというストーリーです。

「データと人間くささ」がうまく絡んだ映画です。データだけでもダメですが、人間くささだけではもっとダメです。両方が絡むところに妙味が生まれます。

最近は、テニスやサッカーの試合の中でも、サービスエース数やボール保持率などの細かい指標が紹介されますが、このような変数がどのように勝利に貢献するかということが、裏で分析されているのでしょう。

GMは選手の売り買いをするのが職務なのですが、「選手を買うのではなく、勝利を買うのだ」というセリフが印象的です。そして「野球というのは、塁に出て点を取るという一連の動作なのだ」というセリフも出てきます。これこそが野球の「もうひとつの見方」であり、このような視点を取ったときにセイバーメトリクスのような考え方が生まれてくるのです。

この上に立って感動的な勝利(統計学では確率的な勝利)を呼び込んだとき、「野球はロマンなのだ」と言えるのですね。

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