文江

小説|詩|短歌など

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最近の記事

短歌 夜は長いし悩める乙女

久々に人間してたと彼が言う 私と過ごした1年2ヶ月 世の中はトレードオフだと上司 君が去ったから猫を飼ったよ しょっぱいも甘いも辛いも分からない 人と食べれば涙が出るけど 世界などくれてやるからただ愛と 死を一瞬でここに描いて 死に方を調べたことのない彼と AM2:00に啜るラーメン 輝いて沈んだマグロに憧れて アルキメデスを殺して飛び込め search 楽な死に方 ほんとは誰も知らないはずで

    • 短歌 また/まだ優しくなれない

      いついついつ 優しく強く風になる 神が笑ってまた風が吹く どうせ皆 鈴木か佐藤になるんだから 不思議な名前の君が好きだよ 私には優しい詩が書けなくて もらって溢れてまた書けなくて 雨を好く小洒落な人が詩を書いて 晴れ好く私はひらがな投げて

      • 短歌 サンデーナイト月鬱

        パステルの好きなものだけ摂取して いつかパァンって弾けたらいい 有り余る今世の有給消化します 猫になるまで出社しません 教室が変われば楽になるけれど できるわけなくてHelloWorld

        • 短歌 シティガール

          枠内の人物として生きてきた 本日本屋にレモンを置いた スーパーで千切りキャベツと卵買う 隣の街で人が刺されて あれ私いつ当事者になったっけ 恋も仕事も死の身近さも 丁寧な暮らしもくそもないけれど 自分を慰めるだけの歌たち

        短歌 夜は長いし悩める乙女

          短歌 きっと夏

          4限理科 ぺこぺこなびく下敷きが 風をまわして夏が巡って ビー玉をのぞけば花火が見えるって 10才に教わる迎え火と夏 雷がいろんな街をキャプチャして 誰を殺すか決めてるみたい 裏切れば小さく生まれる愛だとか クーラー、オフィスの男と女

          短歌 きっと夏

          短歌 タヨウ星

          タヨウ星 欠如ある者移住せよ 残りは地球という星で死ね 女には経血洗う朝がくる 女になりたいあの子は知らない 一部品欠けると人は愛されて 二になると嫌われるからむずい 吐き出せぬ毒素が身体を巡回し 心の端がぼろって取れた

          短歌 タヨウ星

          短歌 死にたい夜に限って

          12時に更新止まるインスタを 一生ひらいて社会と断絶 つらいです死にたいですと呟いて わたしは何に救われたいの 公立公立大企業 私立短大アルバイト 距離は孝行させてくれない 高く伸び自分の重さに負けていく 花がやめろと言ってる気がした とうきょうさ行ってまうんかと言うばあに 私は何を買ってやれるか カレンダー赤バツの意味を失って これからもきっと延びてく命日

          短歌 死にたい夜に限って

          短歌  都心と雨

          雨の匂い 割と好きだよという典型文 それアスファルトの湿った匂いだよ ベージュの服ですか ロングスカートです もう着いてますか  不在着信不在着信 1発で当てて欲しかったのに

          短歌  都心と雨

          絶望のボタン悲しみの原液

          とにもかくにも消えてしまいたい日がある ベランダに吸い寄せられる日がある きっと絶望のボタンなんかが身体の数箇所に付いていて さっきぶつけた拍子に作動してしまったのかも それとも雨の中に溶かしきれなかった数滴の悲しみの原液が 傘から少しはみ出た肩に触れてしまったのかも 感情なんて そのくらい単純に 前触れもなく 動機もなく作動する 理由を求められても 持ち合わせの答えも答える力もない だって足首をぶつけた拍子にボタンを押してしまいましたなんて あなた

          絶望のボタン悲しみの原液

          求む

          求めすぎれば枯渇する 求められすぎれば溺没する ちょうどいい場所もバランスの保てる点も見つからず いつもどちらかに傾いている 日が長くなって夕方の空も青いままになった 徐々に侵食していくグラデーションを眺めながら あの薬局の看板までオレンジが来たら今日は引き返そうと誓う 間延びした約束は効力を失い ただの習慣となり宗教と化した 曇りが好きだという人が好きです 曇りが好きだという人になれなかった私は 今日も少しの安堵と失望の思いで 雲一つない青をなぞって

          我儘

          自由を望みながら 少しの束縛と嫉妬を期待する 自身にお金をかけながら 人肌が恋しいと眠る 好きではないと知りながら いつまでも手放せずにいる 素直が一番美しいと知りながら プライドを固めて生きている 私が私であることを願いながら 誰かのものになるいつかを想像する 我儘な自分を命がけで愛していく 誰かの我儘になりたいとほんの一瞬よぎったけれど

          選択

          毎日何本もナイフとフォークを使うなら 鍋一杯のカレーを何日もかけて食べ尽くしたい シャンデリアの下で地震に怯えて寝るくらいなら ろうそく1本が溶け切るのを見つめながら寝たい 永遠に享受するくらいなら 何かを与え続けていたい この世の全てを知ってしまうくらいなら 何も知らずに妄想を膨らませていたい 自分を押し殺すくらいなら 何も持たずに愛したい ビルの屋上で春とも冬とも言えない風に吹かれながら、男は期限切れの宝くじを何時間も見つめていた

          カレー

          じっくりことこと ことんことん はじめてたべた ママのカレー あしたあさって 濃くなるカレー じっくりことこと ことんことん お鍋の中は グリーンカレー 不思議とふつふつ 知らない味 じっくりことこと ことんことん なんだかパラパラ ドライカレー じっくりことこと ことんことん 今日はさらさらスープカレー じっくりことこと ことんことん やっぱり最後は母のカレー 明日明後日 なくなるまで

          カレー

          天気

           携帯のアラームが鳴った。起きているとも寝ているとも言えない頭で手探りで携帯を探す。 視界の悪い目で右下に固定された天気予報のアプリを開いた。 「小雨時々曇り」 私の頭上は今日も雨らしい。最近私は雨が降りやすい。  外に出ると少しずつ頭上に雨が降り始めた。晴天のカップルとすれ違って少し恥ずかしくなり、私はヒールの音を強めつつ足を早めた。 「佐浦ー」 後ろから声がして振り返ると、信号の向こうに高そうなスーツとシンプルな黒のコートに身を包んだ城田さんが見えた。城田さんは

          あと1日だけ生きる

           努力は報われないし、平等な事象は存在しないし、願いは大体叶わない。私の中には歪んだ軸がある。  どんなに練習したって優勝できなかった中3の夏、努力は報われるという言葉は嘘だと知った。努力はいつか実を結ぶと大人は言ったけれど、いつかを待てるほど長く生きてはいなかった。 無駄じゃなかったと思えるのは今に諦めをつけて過去を振り返った未来の自分だけだ。そんなのはいくらでも後書きできる美化された言い訳で、私は今を生きていて、その今が苦しい。いつでもないそのいつかを待つうちに自分は

          あと1日だけ生きる