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NHKマイルC 有力馬血統考察


ジャンタルマンタル

 父のパレスマリスは現役時代にベルモントS(ダ12F)を勝った馬。その弟にはアイアンバローズ(ステイヤーズS)、ジャスティンパレス(天皇賞・春)がいます。この血統の最大の長所がスタミナにあることは間違いないでしょう。それだけに本馬がデイリー杯、朝日杯とマイルで強い勝ち方をしたことに驚きはあります。
 ただしパレスマリスはベルモントSのほかにも、メトロポリタンH(ダ8F)を勝っており、スタミナ一辺倒というタイプではありません。また本馬は上半身こそ筋肉質ですが、脚先の捌きはしなやか。走りの雰囲気が3代父のスマートストライクに似ているように感じます。配合をみると、ミスタープロスペクター4×5、シアン6×6のクロスを内包。スマートストライクの構成要素を強めに刺激しています。この部分が表面化しやすいかたちであることはたしかです。スマートストライクはマイラーとして活躍した馬。この影響が強い競走馬だと考えれば、マイルでのパフォーマンスについても納得できます。
 皐月賞はスピードをいかした積極的な競馬。最後の最後で甘くなってしまいましたが、力を出し切る良い走りでした。距離がほんの少し長かったでしょうか。純粋なマイラーではなく、1800m寄りにシフトしている印象を受けます。道中で少し緩むくらいの流れが走りやすそうです。


アスコリピチェーノ

 父のダイワメジャーはノーザンテーストの影響を受けた種牡馬。サンデー系のなかでもパワーに優れたマイラー型です。一方、母の父のデインヒルダンサーは現役時代に6~7FのGⅠを勝ったスプリンター。パワーで突進力を生み出すことで、スピードに昇華させる血統です。父のパワーを母の父のパワーによって後押しした、タフな配合といえます。またダイワメジャーらしいタフな競馬をするうえで、底力のサポートは欠かせません。その点で2代母の父にサドラーズウェルズがあることにも大きな意味があります。母方にデインヒルダンサーとサドラーをセットで併せもつダイワメジャー産駒といえば、本馬とおなじく阪神JFを勝ったレシステンシアがいます。
 母のアスコルティは現役時代に1200~1400mで2勝を挙げた馬。8戦中4戦で逃げる競馬をしています。血統の字面も加味すると、さきほど比較対象として挙げたレシステンシアのような、後続をふるい落とすスタイルが似合うタイプです。しかし実馬の走りは、想像していたものとは違いました。むしろ柔軟性があり、しなやかなフットワークが目を引きます。前進気勢も許容範囲。気負いすぎずに走れています。将来の完成図はさておき、現状は東京の長い直線でも決め手をいかす競馬ができます。
 桜花賞のまえは放牧中に熱発があり、帰厩を延期した経緯がありました。レースで2着に好走したように、影響は軽微だったようですが、やや順調さを欠いたことは事実です。それにくらべて今回は予定通りに調整が進んでいます。1週前の追い切りをみる感じだと、状態は上向いていそうな雰囲気です。楽しみは大きいのではないでしょうか。


ゴンバデカーブース

 父のブリックスアンドモルタルは、セクレタリアトやシアトルスルーの影響が大きく、ゆったりとしやかなフットワークで走る競走馬でした。一方、母のアッフィラートはリアファンやフォーティナイナーの影響が強く、パワフルなピッチ走法が持ち味です。対極的な個性をもつ父と母の組み合わせといえますね。本馬自体はメリハリのきいたピッチ走法寄り。どちらかと言えば、母に似ているように感じます。ただし母ほど脚さばきに突っ張るところがありません。父のしなやかさもしっかりと根付いているようです。両親のいいとこ取りのようなかたちで表現されたことが、成功を後押ししたのではないでしょうか。
 新馬戦では逃げた馬ですが、サウジアラビアRCは差す競馬で勝利。しっかりと我慢がきいたことで、戦術の幅が一気に広がりました。ただしブリックスアンドモルタル産駒は揉まれる競馬が苦手なイメージです。レースを投げ出すような気難しさはないと思いますが、根性で馬群を割るかたちは避けたいところでしょうか。
 あとは何よりも、年明けに受けた喉の手術がどのくらい良い方に作用しているかですね。1週前追い切りは、まだ休みボケしているのかなという感じに映りました。今週どのように仕上げてくるのか注目したいと思います。


ボンドガール

 ダイワメジャー牝駒は一般的に、ヨーロッパ血統基調の配合馬が活躍しやすい傾向があります。ところが本馬の母はシアトルスルー5×4、ミスタープロスペクター5×4などアメリカ血統が豊富。これまでのセオリーとは少し違うタイプです。もっと言うと、アメリカ血統であれば馬格に恵まれたほうが筋肉の質を活かしやすいのですが、本馬は前走時で450キロ。大柄でもありません。この馬が活躍するようだと、ダイワメジャー牝駒としてはいろいろな意味で珍しい存在になりそうです。
 走りにはしなやかさがあります。セリフォスの登場あたりから感じていたことですが、ダイワメジャーは種牡馬の晩年になって、以前とは違うタイプの活躍馬を多くだしますね。今回のレースに一緒に出走するアスコリピチェーノもおなじようなところがあります。
 前走のニュージーランドTは序盤で折り合いに苦労。そのぶん最後で脚が止まってしまいました。直線で馬場が荒れた内側を走ったのも影響したでしょうか。溜めれば鋭い切れ味を使えますが、そのためにはいかに前進気勢をなだめられるかが重要になりそうです。


ノーブルロジャー

 この世代はパレスマリス産駒が大活躍ですね。今回はジャンタルマンタルと本馬の2頭が出走します。2頭ともに言えることですが、上半身は筋肉質でも脚さばきはなめらか。パレスマリスの祖父にあたるスマートストライクの影響が濃くでているように感じます。“パレスマリス産駒”というより、“スマートストライクのひ孫”というイメージで捉えるべきかもしれません。
 ただしスマートストライクらしさが前面にでたジャンタルマンタルとくらべて、本馬は母の父にモアザンレディ、2代母の父にクリスエスを据えたパワー中心の血統。ロベルトのクロスもあり、その特徴を強める構成になっています。字面だけをみれば、ダート馬にでても不思議ではありません。シンザン記念はタフな馬場、毎日杯は重馬場でした。時計のかかる条件のほうが戦いやすそうです。


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