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万博パビリオンの歩き方

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「2025年の大阪・関西万博って、どんなパビリオンができるの?」 このマガジンは、そんなあなたの疑問を“少しだけ”解消するために作られました。 開幕は2025年4月。海外の国… もっと読む
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「万博パビリオンの歩き方」始めます!

2025年大阪・関西万博開幕まで500日を切りました。共同通信大阪支社では、普段は大阪の行政や経済を担当している記者が中心となって万博についても取材をしています。 万博を巡っては、2度の会場整備費の上振れや、海外パビリオンの建設遅れなど、マイナスイメージのニュースが多いですよね。取材する私たちも、次々と舞い込む「バッドニュース」に忙殺される日々です。政府や大阪府・大阪市が主体的に関わり、多額の税金が投入される万博について、課題や税金の使われ方を取材するのは、報道機関としての

帆船モチーフ、白い幕で包まれたカタールパビリオン (隈研吾さん設計!)

カタールはアラビア半島にある中東の国です。首都ドーハは、日本のサッカーファンには「ドーハの悲劇」(さらには「ドーハの歓喜」)でおなじみです。 木造の建物全体を真っ白な幕で包むデザインのカタールパビリオンは、ダウ船と呼ばれるカタールの伝統的な帆船がモチーフです。設計したのは東京の国立競技場を考案した建築家隈研吾さん。隈さんは「ペルシャ湾に面したカタールは、日本と同じ海に近い国。両国を象徴する船をモチーフにした」と4月に行われた起工式で話しました。 パビリオンは池に囲まれ、ま

赤い糸が結ぶ「愛の賛歌」~フランスパビリオン~

ボンジュール! 今回お届けするのは愛と美食の国、フランスパビリオンです。(冒頭画像は©Coldefy & Carlo Ratti Associati)。 パビリオン紹介の前に、ちょっとした豆知識をご紹介。みなさんはフランスの一大観光名所であるエッフェル塔が、万博をきっかけに作られたということをご存知でしょうか。 フランスで初めて万博が開催されたのは第1回のロンドン万博から4年後の1855年。そして、フランス革命100年を祝う年である1889年のパリ万博に向けて建築されたの

砂漠に覆われた「神秘」の国がもたらす出会い~トルクメニスタン館~

中央アジアに位置するトルクメニスタンは旧ソビエト連邦を構成していた国の一つです。 パビリオンは3階建てで、黄色や緑の電飾が華やかに外装を彩ります。国土のほとんどを覆うカラクム砂漠の自然をイメージしています。大きな白馬をあしらったがデザインが印象的です。 国力を支えるのは豊富な天然ガス。首都アシガバートにもパビリオンさながらの白亜の大理石建造物が建ち並んでいます。荘厳な街並みは、近未来SFのようです。 大統領による強権的な国家運営で「中央アジアの北朝鮮」と呼ばれることもあ

巨大スクリーンでK-POP鑑賞も~韓国パビリオン~

今回紹介するのは、日本でもなじみ深い韓国のパビリオン。最近は文化や料理だけでなく、音楽(K-POP)やファッションの分野でも注目が高く、旅行先としても大人気ですよね。 筆者の私も実は大の韓国オタク。落ち込んだときには弘大(홍대、韓国・弘益大学)近くのライブカメラを動画サイトでぼーっと見るのが習慣になっているほどです。交換留学の経験もあり、新型コロナウイルス禍の前は何十回(!)も現地を訪れていました。 あのピリ辛の韓国風屋台おでん、特大サイズのアイスアメリカーノ、学生街のフ

生態系のつながりを体験し、感受性を呼び覚ませ~河森正治プロデューサーの「いのちめぐる冒険」~

万博の8人のプロデューサーによるテーマパビリオン第3弾です! 今回の万博の至る所に掲げられている「いのち」 そもそも「いのち」って一体なんでしょう。 アニメーション監督の河森正治さんは、発展途上国の子どもたちの輝く目を見た時、「いのち」を感じたそうです。(冒頭画像© 2022 Shoji Kawamori/Office Shogo Onodera, All rights reserved.) 「現代人が眠らせている観察力や感受性を呼び起こしたい」 そう願う河森さんが手が

鏡で覆われた“変幻自在”のパビリオン~落合陽一プロデューサーのnull²~

「ぬるぬると動く巨大な生き物みたいなパビリオン」 メディアアーティストの落合陽一さんは自身の手がけるパビリオンを、そう表現しています。(冒頭の画像©2023 Yoichi Ochiai / 設計:NOIZ All Rights Reserved.) 来場者は、鏡のような膜で覆われた建物の前に立つと、自分の姿や会場の風景がゆがんで映し出され、未知の感覚を体験できるそうです。 なぜ、ゆがんで映し出されるのでしょうか。仕掛けは、鏡面仕上げの膜の裏側に設置された機械で、それによっ

数学も音楽も芸術もカオスから生まれる~中島さち子プロデューサーのクラゲ館~

1996年、インド。17歳の中島さち子さんは、世界中の高校生らが数学の超難問に挑む国際数学オリンピックインド大会で、日本人女性初の金メダルを獲得しました。金メダル獲得者の中には、その後に数学界のノーベル賞「フィールズ賞」を受賞したり、世紀の難問「ポアンカレ予想」を解いたりした人もいます。 中島さんの興味は数学だけにはとどまらず、ジャズピアニストや教育専門家など多様な肩書を持ちます。万博で手がけるテーマパビリオンは「いのちの遊び場 クラゲ館」。海で刺されると痛いアイツです。ク

未来社会の作曲家はアナタです♪~オーストリアパビリオン~

モーツアルトやシューベルトなど多くの有名作曲家を輩出し、ウィーン交響楽団やウィーン国立歌劇場がある「音楽の都」ウィーンが首都のオーストリア。まさに音楽の国にぴったりな、音符が弾む楽譜に見立てた真っ赤なリボンのオブジェが印象的です。 パビリオンのテーマは「Composing the future(未来を作曲する)」。館内には音符型の画面が並び、オーストリアの技術や研究を通して「未来への解決策」を学ぶことができます。終盤には「未来のための大聖堂」という部屋があり、中央の大きな楽

ともに並び、肩を組んで歌って踊ろう!~アイルランドパビリオン~

アイルランド。名前を聞いたことはあっても、行ったことがある方は少ないのではないでしょうか。私もその1人です。そんな私のアイルランドの原体験は、何と言っても2019年のラグビーW杯日本大会! 国花のシャムロックをあしらった緑色の衣装に身を包み、欧州からはるばるやってきた大勢のアイルランドファンを日本の各地で見かけました。スタジアムではハイネケンのビールを文字通り底なしに飲み、代表チームのために作られた特別な歌「アイルランズ・コール」を熱唱する彼ら。あのとき同じスタジアムにいた私

東西文化の集束地を表現「知識の庭」~ウズベキスタンパビリオン~

中央アジアに位置するウズベキスタンは古くからシルクロードを通じて、東西の思想や商業が集まる場所でした。パビリオンは「知識の庭」というテーマで、古くからの文化と現在の技術を体験できる内容になっています。(冒頭のイメージはATELIER BRUCKNER & NUSSLI Switzerland) 外観は伝統的な刺繍や装飾品の模様をあしらっていて、パビリオン内に入ると砂漠のオアシスのような庭が目に飛び込んできます。 展示の目玉となるのは中央部のムービングステージ。来場者を乗せ

食べて、旅して、免疫を高めよう~タイ パビリオン~

東南アジアのタイは高い医療技術や伝統的な診療を求めて世界中から人がやってくる「医療ツーリズム」が盛んだそう。パビリオンが掲げたテーマは「免疫力」です。 木造の大きな屋根が特徴の館内に入ると、免疫力を高める食材や成分を学べる展示が並び、実際に試してみることもできるそうです。 タイ料理にはハーブや健康的な食材がたくさん使われているため、タイの担当者は「タイ料理は世界で最も美味しい薬」と話します。 3月13日に大阪で記者会見したタイ政府の保健大臣は「大阪・関西万博のタイパビリ

共に築こう!持続可能な未来~イギリス パビリオン~

ついに出ました! 今回ご紹介するのはイギリスです。 日本では「イギリス」でおなじみですが、正式名称は「グレートブリテン及び北部アイルランド連合王国」。歴史的な経緯からイングランド、スコットランド、ウェールズと北アイルランドの4つの国がつくる連合王国です。サッカーW杯ではなんと、それぞれの国の代表チームが出場することができます。 イギリスは18世紀半ばから「産業革命」が始まり、世界に先駆けて石炭を動力とする工業化が進んだことでも有名です。19世紀半ばからは「パクス・ブリタニカ

翼を広げた大きな鳥が歓迎~クウェートパビリオン~

中東にあるクウェートのパビリオンは、正面玄関の屋根が左右に跳ね上がった特徴的なデザインです。モチーフは翼を大きく広げた鳥。パビリオンのテーマは「先見の明かり」で、夜間にライトアップされると、浮かび上がる姿が印象的です。 設計した担当者は「誰に対しても開放的なクウェート社会を表していて、訪れる人を歓迎するという意味を込めました」と話します。 クウェートはペルシャ湾に面し、サウジアラビアとイラクに挟まれた国。日本の外務省のHPによると、面積は四国とほぼ同じで、約446万人が暮