金大地(金属恵比須)

作曲家、ライター。 Greco / Zemaitisオフィシャルユーザー。 プログレッ…

金大地(金属恵比須)

作曲家、ライター。 Greco / Zemaitisオフィシャルユーザー。 プログレッシヴ・ロック・バンド「金属恵比須」リーダー。ギター、キーボード担当。 故・渡辺宙明より作曲指導を受ける。 雑誌『モノ・マガジン』にて「狂気の楽器塾」連載中。web『SPICE』では6年連載。

最近の記事

プログレ変態作曲法(プログレッシヴ・エッセイ 第21回)

曲がなかなかできない。 ということで、そもそも自分がどのように曲を作っているかを今一度見直して糸口を探してみようかと。 まずはルーティンから。曲作りには直接的に関わることはないが、日々の蓄積として行なっていることである。 この積み重ねのもと、大きく分けて2つの軸から曲を組み立てていく。「テーマ決め」と「作曲方法」。 「テーマ決め」には3パターンある。 続いて「作曲方法」も3パターンある。 Iは、曲の初めから終わりまで頭の中で組み立てて完成した上で表出するやり方。割

    • プログレバンドのリーダー論(プログレッシヴ・エッセイ 第20回)

      レッド・ツェッペリンのジミー・ペイジに憧れてギターを始め、同時期に金属恵比須の前身バンドを結成した。以来33年間、バンドのリーダーを務めている。 それから、さまざまな音楽を聴くときには、 「リーダーは誰なのか」 を必ず意識していた。そしてリーダーは何をするのかを、解説書や図書館の蔵書などで学ぼうとしていた。 最初はやはりジミー・ペイジ。ケチという噂を知り、小学校6年の時、自販機の下を覗いては小銭を集めてジュースを買っていた。のちに“ケチ”の噂の原因は、新人メンバーとの

      • ジミー・ペイジとフランクフルト世代(プログレッシヴ・エッセイ 第19回)

        ロックの歴史において代表的なイギリスのバンド「レッド・ツェッペリン」。 リーダー、ジミー・ペイジのギタープレイの姿は魔術的。それに魅了されギターを始めた人も多いと聞く。かくいう私もその一人である。小学校5年でロックに目覚め、ギターをやりたいと思ったのがペイジの影響だった。 ツェッペリンを知ったきっかけは、父親が録画したビデオ。1988年、ニューヨークのマジソンスクエアガーデンで催されたアトランティックレコード40周年記念コンサートがフジテレビの深夜に放映されていた。そこに

        • プログレは曲の長さでゲームチェンジ(プログレッシヴ・エッセイ 第18回)

          去る2024年4月27日。 主宰するプログレバンド「金属恵比須」のワンマンライヴを吉祥寺シルバーエレファントにて催した。 ゲストでお呼びしたのがキーボードの塚田円さん。1990年メジャーデビューのプログレバンド「プロビデンス」のリーダーで、現在は「那由他計画」で活動中。10年前に金属恵比須『ハリガネムシ』発表直後から気に入っていただいていたのが縁で今回の出演に至る。 ライヴのMCでこう語る。 80年代のシンフォニック系、90年代以降のドリーム・シアター系という音楽性が

        プログレ変態作曲法(プログレッシヴ・エッセイ 第21回)

          豚汁と児童館プログレ(プログレッシヴ・エッセイ 第17回)

          金属恵比須1年ぶりのワンマン・ライヴ。メンバーの5人中2人がガラリと変わる。2000年生まれのベーシスト埜咲ロクロウが正式加入し、ゲスト・キーボードには那由他計画の塚田円が参加する。金属恵比須史上最大の年齢差である。 が、金属恵比須。元々は1980年生まれの同級生バンドが母体。 「ザ・フォーク・ライス(The Folk Lice)民謡蛆蟲樂團」という名前だった。 1991年に結成して1992年に「The Lice」と名乗り始めた。ELPの前身バンド「The Nice」の最初

          豚汁と児童館プログレ(プログレッシヴ・エッセイ 第17回)

          お茶の間プログレ (プログレッシヴ・エッセイ 第16回)

          近頃、牛丼チェーンの松屋でジョージア料理を提供し話題となった。専門店でしか頼むことのできなかった馴染みの薄い料理を、好みの味に調整して人気を博した。 音楽でも似たようなことが。 聖飢魔II。 ヘヴィ・メタルという70〜80年代では偏狭の音楽ジャンルを、キャラクター(人柄ではなくいわゆる「悪魔柄」)によって世間に浸透させた。お茶の間にヘビメタを浸透させた功績は大きい。 プログレ・バンド「金属恵比須」のパーパスはこれに倣い、 「お茶の間にプログレ」 としている。 幸いにし

          お茶の間プログレ (プログレッシヴ・エッセイ 第16回)

          新曲づくりと武満徹 (プログレッシヴ・エッセイ 第15回)

          金属恵比須は、来るワンマンライヴに向けて新曲を作っている。 コンセプトは「火曜サスペンス劇場の主題歌」。 プログレバンドが火サスとは頭でにわかには結びつかないかもしれない。が、プログレ的手法が使い尽くされている現在、どうすればプログレッシヴ(進歩的)になるかと考えた結果だ。 「もしも金属恵比須に火サスの主題歌の依頼がきたら?」 というコンセプト。 企画がプログレ。 そのために、わざわざ火サスのエンディング風の動画を作成し、それに合わせて作曲した。 視覚を想起させるよう

          新曲づくりと武満徹 (プログレッシヴ・エッセイ 第15回)

          同じCDを買う優越感と恐怖 (プログレッシヴ・エッセイ 第14回)

          同じアルバムCDをあえて何枚も買うのがプログレリスナーの習性だ。 私もピーター・ガブリエル『II』『プレイズ・ライヴ』『So』はそれぞれ5枚以上持っている。“違いのわかる男”という承認欲求だけのための購買心理。 (そして大抵違いがわからない) だが、それが無意識の購買行動だと途端に恐怖となる。 「もしかしてアルツハイマー?」 と疑い、自分を責め出す。40歳手前で多くなってきた。 それだけでない。上司の苗字を忘れる、朝のニュースを昼には覚えていない。子供との遊ぶ約束をす

          同じCDを買う優越感と恐怖 (プログレッシヴ・エッセイ 第14回)

          『シン・仮面ライダー』とプログレ〈庵野監督と金属恵比須〉【後編】(プログレッシヴ・エッセイ 第13回)

          『シン・仮面ライダー』公開1周年だが、公開1ヶ月にして興行収入20億円を突破。歴代「仮面ライダー」シリーズでトップに躍り出た。 50年前のコンテンツを再構成し新たな世界を作り出し、なぜこんなにヒットしたのだろうか。 エグゼクティブプロデューサーの白倉伸一郎氏はこう語る。 前号で取り上げたオリジナルのリスペクト作業は、目的ではなく手段にすぎない。企画プロデュースの紀伊家之氏はこういう。 造形はクリエイターとして、「映画体験は何ぞや」と考えるのはプロデューサーとして、それ

          『シン・仮面ライダー』とプログレ〈庵野監督と金属恵比須〉【後編】(プログレッシヴ・エッセイ 第13回)

          『シン・仮面ライダー』とプログレ〈庵野監督と金属恵比須〉【中編】(プログレッシヴ・エッセイ 第12回)

          さて『シン・仮面ライダー』の話。 一視聴者がバンドを運営するにあたりどのような影響を受けたか。50年前の題材を現代でどう表現するかというのが、プログレという50年前の音楽を再現している金属恵比須にとっての共通点である。 この映画には50年前の素材が散りばめている。クモオーグとの戦いは、オリジナルの蜘蛛男と戦った奥多摩の小河内ダムがロケ地だ。マニアが唸るギミックも随所に。  庵野監督はこういう。 まずは古き対象を「分析・検証」することから始めている。 准監督の尾上克郎氏

          『シン・仮面ライダー』とプログレ〈庵野監督と金属恵比須〉【中編】(プログレッシヴ・エッセイ 第12回)

          『シン・仮面ライダー』とプログレ〈庵野監督と金属恵比須〉【前編】(プログレッシヴ・エッセイ 第11回)

          2023年3月18日公開の『シン・仮面ライダー』。あれから1年。 金属恵比須のバンド運営に多大な影響を与えた映画だったのでその点を書いていきたい。なお、プログレ・バンドの視点からの意見であって、映画評ではないことを留意いただければと思う。また、私自身が仮面ライダー世代ではなく、マニアックに語ることはできないので、あくまで「ライダー初心者」の視点であることをご容赦いただければと思う。 『シン・仮面ライダー』と金属恵比須。共通するのは1970年代前半のものを題材として新しいもの

          『シン・仮面ライダー』とプログレ〈庵野監督と金属恵比須〉【前編】(プログレッシヴ・エッセイ 第11回)

          プログレの生産性(プログレッシヴ・エッセイ 第10回)

          「プログレッシヴ・ロック」はアンビバレントなジャンルだ。本来、プログレス(進歩・前進)しなければプログレではないのだが、実際にはプログレスしてしまうとプログレという音楽ジャンルではなくなる。 同様なジレンマを抱えるジャンルに現代音楽がある。20世紀にとっての「現代」的手法を用いるジャンルだが、今はもはや21世紀。 ハード・ロック(硬い)、ヘヴィ・メタル(重い)など、音そのものを形容するのではなく、プログレも現代音楽も時間を軸とした形容詞である。よって時を経るに従い意味が形

          プログレの生産性(プログレッシヴ・エッセイ 第10回)

          “日本のアネクドテン”の暗鬱〈オマージュ作品について〉(プログレッシヴ・エッセイ 第9回)

          金属恵比須はよく、70年代のプログレやハード・ロックの曲のオマージュをする。断っておくが、パクリではない、オマージュである。 キング・クリムゾンの名曲「エピタフ」「ポセイドンのめざめ」のような抒情的な曲をパクりたくて……否、オマージュしたくて「紅葉狩」という曲をつくった。20年前の今頃、2004年のことである。 そしてインディーズ・レーベルから発表される。 帯のキャッチコピーが、 “日本のアネクドテン” アネクドテンとは、いわずと知れた90年代デビュー、クリムゾンのカ

          “日本のアネクドテン”の暗鬱〈オマージュ作品について〉(プログレッシヴ・エッセイ 第9回)

          ファッションは音楽 (プログレッシヴ・エッセイ 第8回)

          音楽を聞くという行為はファッションだと思っている。 今、現在、聞いている音楽は、厳密にいうと体が欲するものではなく、少し背伸びしたものだったりする。自分の趣味を盛っているのだ。主義主張・宣言みたいなもので、時に誇張も含まれる。 3歳の頃はNHK教育「みんなのうた」を口ずさみながらも、NHK総合の演歌番組では細川たかし、TBS「ザ・ベストテン」では中森明菜が好きだった。 小3ではヨハン・シュトラウスII世を聞いていた。ロック好きの父がカーステレオでビートルズをかけるのだが

          ファッションは音楽 (プログレッシヴ・エッセイ 第8回)

          スティーヴ・ハウ・ライヴの海洋地形学おねえさん (プログレッシヴ・エッセイ 第7回)

          1995年の冬、渋谷クラブクアトロ、イエスのギタリストであるスティーヴ・ハウのコンサートを見に行った。 当時、中学2年生の私にとってはイエスのメンバーなんてヒーローそのもの。 否、「イエス」だけに神と崇めていたものだ。 クラブクアトロは狭い会場で立ち見。会場に入るや否や、こんな間近で見られるなんてと心が躍った記憶がある。 ハウ1人だけの正真正銘のソロ公演で、バンド演奏の曲にはバックにテープが流されていたように思う。バンド曲が始まるときには「サァー」とテープ独特のヒスノイズ

          スティーヴ・ハウ・ライヴの海洋地形学おねえさん (プログレッシヴ・エッセイ 第7回)

          海洋地形学おばあちゃんの追憶(プログレッシヴ・エッセイ 第6回)

          英国のプログレッシヴ・ロック・バンド「イエス」が1973年に発表したアルバム『海洋地形学の物語』は問題作といわれている。 理由は明快。長いのだ。 2枚組で収録曲がたった4曲。 どれも1曲20分前後。 そして大仰なタイトル。 「神の啓示」「追憶」「古代文明」「儀式」――宗教書の目次か。 私は好んで聞いた記憶はない。おばあちゃんにねだって買ってもらったゆえに、責任感にかられ、どんなに眠くなろうとも聞いて吸収しようとした。 小6の時、国語で詩を創作する授業があった。CD付属

          海洋地形学おばあちゃんの追憶(プログレッシヴ・エッセイ 第6回)