わかっちゃいるけどやめられない
街の通りで水道管が破裂すると、どうなるか。
水圧でアスファルトが持ち上がって道路に亀裂が入り、裂け目から水が噴出して周辺が冠水する。
周囲の住宅では蛇口から出る水道水が濁ったり、水道管からの漏水を止めるために断水したりといった被害を被る。
通行止めや周辺道路の渋滞により、物流に遅延が発生するケースも起きる。
日本では毎年、2万件以上の漏水・破損事故が起きているという。
たとえば、
2011年6月、京都市西京区で水道管破裂事故が発生。市道の地下を走る水道管が老朽化で破裂し、平行して通るガス管を水が突き破った。周辺の約1500世帯が断水し、約1万5000世帯のガス供給が最長10日間にわたって止まった。
2018年7月、東京都北区西ケ原1丁目で地下を通る水道管が破損して大量に水が漏れ出す。水漏れを起こした水道管は直径30センチの鉄製で、50年前に設置されたもの。破損の原因は老朽化と断定された。
2019年3月、千葉県旭市内の7割以上にあたる約1万5000戸が断水した。同市では2022年2月にも水道管破損によって断水し、小中学校が休校するなどの影響が出ている。
2020年1月、横浜市磯子区で水道管が破裂した。断水などで一時およそ3万戸に影響が出た。原因は1973年に設置した水道管からの漏水。車の通行で繰り返し荷重がかかったことや、経年劣化などで破損したとみられる。
2021年10月、和歌山市内を流れる紀の川にかかる水管橋と呼ばれる水道用の橋が老朽化のために崩落し、約6万戸が断水。その後の調査で、崩落の直接的な原因は水道管と橋の構造部をつなぐ部分の塩害や鳥の糞の蓄積などによる腐食とされたが、この断水は6日間続いた。
2022年は6月に札幌市の住宅街で敷設から48年経った水道管が、同年7月には北九州市で、敷設から56年が経った水道管が破裂した。北でも南でも商店街でも住宅街でも、こうした事故が規模はともかくとして、1日当たり50件以上起きている。
人間であれば血管の劣化は動脈硬化と呼ばれ、加齢とともに血管の壁が硬く厚くなり、弾力がなくなり脆くなる。
寿命を超えた配管も「動脈硬化」を起こし、あちこちで「血管」が割け、血しぶきを上げ始めているのだ。
外傷と異なり表からはなかなか確認できないため、被害が生じたときの度合いも大きくなる。
水道インフラの老朽化、人口減少に伴う水道事業の収支悪化、関わる職員の高齢化と人材不足。
「モノ・カネ・ヒト」の3分野が、ともに大きな課題を抱えている。とくに水道管路の多くは70年代に整備されたが、それらが耐用年数の40年を超え本格的な更新時期を迎えつつあるのに、作業は遅々として進んでいない。
なぜなら水道事業は「一般の需要に応じて水道により水を供給する事業で、市町村経営が原則（総務省）」だからだ。
人口減少が加速している地方自治体において、「水道事業の料金収入は、人口減少社会の到来、節水型社会への移行や産業構造の変化などにより減少傾向にある（総務省）」
他人事のような分析だが、こうなった責任は役所にも相当ある。
生命にかかわる基本的インフラの管理を国が担わず、一方では政官財ともに、首都一極集中の状態が形成されている。
霞が関の各省庁が東京を離れる気配などまるでなく、政府機能も国会議員も、居を構えるのは地元でなく東京だ。
リスク管理の見地からして、最悪である。
想定される首都直下型地震（30年以内【2020年1月24日時点】に70％の確率で発生すると予測）でも発生すれば、日本の主幹機能は失われ、荒廃著しい地方自治体のみが残される。
このままではまずいと「わかっちゃいるけどやめられない」。
誰もが今のポジションや利権にしがみつき、大災害に見舞われたとき、遅まきながら初めて後悔するのかもしれない。
（コスト優先から）見捨てられた感のある能登の惨状をみるにつけ、暗澹たる気持ちになるのを抑えることができない。
そのうえ国は、2018年12月に水道法を改正（？）し、民間事業者でも参入できるようにした。
すでに宮城県では、水道事業運営の民間委託を開始している。 委託期間は20年間で総事業費337億円の削減を見込む。 人口減による水需要の減少や老朽化施設の更新などによる水道料金の上昇を抑えられると、県はいう。
では、この「民間」とはどこの企業なのか。
フランスに本拠を置く環境サービス企業であるヴェオリア・ジェネッツ社の、日本法人である。
摩訶不思議な話ではないか。
宮城のライフラインを、儲かる間は請けておいて、何かあれば自国にトンずら可能な企業に託す神経が、とうてい理解できない。
国のトップも自治体の首長も、今だけ良ければあとのことは知らんというわけか。
終わんない。もう少し続ける。
イラスト hanami🛸|ω･)و
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