Masashi Takeshita

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Masashi Takeshita

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書評:岡野八代『ケアの倫理:フェミニズムの政治思想』を動物倫理の観点から読む

本記事は岡野八代『ケアの倫理:フェミニズムの政治思想』(以下「岡野の本」)を動物倫理という特定の観点からみた書評である。ちょっと特殊な書評なので、いくつか注意点がある。 私は以下で岡野の本に見られる人間中心主義を指摘する。 ケアの倫理の主流伝統には人間中心主義が前提にされており、岡野の本はそれを引き継いでしまっている、と私は考えている。そのため、それを指摘することは有意義であると考える。 私が「ケアの倫理の主流伝統」で指し示しているのは、ケアの倫理の典型的・代表的な研究

    • 【翻訳】「動物のためのベルモント・レポート?」(Ferdowsian et al. 2020)

      以下の文章は、Ferdowsian et al. (2020) A Belmont Report for Animals?の抄訳(注以外全訳)である。本論文は動物実験倫理の総まとめのような論文であり、これからの動物実験倫理の新しい基礎になるだろう。誤訳があったり、訳がこなれておらず読みにくかったりするかもしれない。コメント等でご指摘いただきたい。 なお原文のライセンスはCC-BY 4.0である。本翻訳もCC-BY 4.0ライセンスの元で配布する。 https://creat

      • 自著論文紹介:竹下&清水(2024)「効果的利他主義は道徳的義務なのか? --帰結主義とカント的観点からの正当化」

        先日出版された我々の論文、竹下昌志&清水颯(2024)「効果的利他主義は道徳的義務なのか? --帰結主義とカント的観点からの正当化」『Contemporary and Applied Philosophy』について、論文が30ページ以上あり、長いので、簡単に紹介する。 なお、本論文のもとになった発表はYouTubeで視聴できる。動画内容は本論文のコンパクト版になっているが、本論文は当時よりかなり発展したので、ぜひ論文の方も読んでいただけると嬉しい。 論文の構造論文の構造は

        • レイチェル・ハーツ『あなたはなぜ「嫌悪感」を抱くのか』を読んで:「嫌悪感」の文化依存性と進化心理学的説明のちぐはぐさ

          レイチェル・ハーツ『あなたはなぜ「嫌悪感」を抱くのか』を読んで、違和感があった部分があったので、それをメモしておく。 目次は次の通り 1章 さあ、食べよう 2章 嫌悪する瞬間 3章 脳における嫌悪感 4章 細菌戦争 5章 不快なのは他人 6章 ホラーショー 7章 性欲と嫌悪感 8章 法と秩序 9章 嫌悪感が教えてくれること この本は嫌悪感(disgust)に関する心理学的な知見を紹介する本である。目次からわかるように、かなり雑多にトピックを並べて、そのト

        書評:岡野八代『ケアの倫理:フェミニズムの政治思想』を動物倫理の観点から読む

        • 【翻訳】「動物のためのベルモント・レポート?」(Ferdowsian et al. 2020)

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          ヴィーガンのアライになること【実践編】

          本記事は前編の【理論編】の続編である。前編ではヴィーガンのアライとはどういう存在なのかを考えた。本記事【実践編】では、具体的な実践について述べる。(本記事は約7800字ある) なお、【理論編】で確認したように、ヴィーガンのアライであることは、非ヒト動物のアライであることを必要とする。そのため本来は、非ヒト動物のアライとしての実践についても述べる必要がある。しかし本記事は、あくまでもヴィーガンのアライとしての実践について述べる。 また、本記事と前の記事では、動物擁護的理由から

          ヴィーガンのアライになること【実践編】

          ヴィーガンのアライになること【理論編】

          ※途中、議論の都合上、不快な表現(人肉食など)が出てきます。ご注意ください。 本記事と、この続きの【実践編】では、「ヴィーガンのアライ」というものについて考え、実践するためのノウハウについて述べる。【理論編】(本記事)ではヴィーガンのアライということが何を意味するのか、どういうものなのかを述べる。【実践編】ではヴィーガンのアライとして何ができるかを考える。(本記事は約7500字ある) 前提本記事と続編の記事では、動物擁護的理由からのヴィーガンを前提にする。また「ヴィーガン

          ヴィーガンのアライになること【理論編】

          外延的にアローセクシュアルで、内包的にアセクシュアルである可能性、また「性的」とされるもの

          ※以下、性的な表現が何度も出てきます。 性的惹かれとムラムラ 最近この本を読んで、アセクシュアルについて勉強する中で、「性的」なるものがなんなのかわからなくなってきた。この本ではセックスとは何か、性的なこととは何かについて、あまり議論がない。セックスとレイプ、同意との関係などについての議論はあるが、セックスそれ自体、性的なことそれ自体についての議論が、私が読んだ限りではあまりなかった。 さて、アローセクシュアルは性的惹かれがあることで、アセクシュアルは性的惹かれがないこ

          外延的にアローセクシュアルで、内包的にアセクシュアルである可能性、また「性的」とされるもの

          ヴィーガンになったきっかけとその後

          最近ヴィーガンになったきっかけを聞かれるので、自伝的な話として書いておく。 きっかけは、ツイッター上でのヴィーガンフェミ論争と呼ばれる議論を見たことにある。以下の記事を読めばわかるが、この出来事は、フェミニストを自称している人が「アイスクリームを食べたい」みたいなツイートをして、それに対してヴィーガン論客が「フェミニストなのに乳製品を食べるのは一貫してないのでは?」とリプをしたことに始まる。 (一貫してない理由は、乳製品はメスの乳牛に対する悲惨な行為の産物であり、「女性」で

          ヴィーガンになったきっかけとその後

          『やがて君になる』読書感想

          最終巻までのネタバレを含みます。 『やがて君になる』(やが君)に出会ったのはたぶん5年ほど前で、友人と一緒に別の友人宅に泊まりで遊んでたときに、アニメイトに入って偶然見かけた。タイトルに惹かれて中身について全く知らずに買った。当時はAro/Aceについて全く知識がないし、やが君の宣伝文句も全然知らずに読んでいたので、百合漫画だな〜と素朴に思っていた記憶がある。 当時出ていた4巻まですべて買って、そこまで読んだが、それからしばらく続きを読まず、いつのまにかアニメが放映されてい

          『やがて君になる』読書感想