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小説

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読み切り小説、月イチ程度で更新します
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記事一覧

小説「カムサハムニダ」

ヨリコが結婚するという。 相手は同期の翼くんで、来月末には退職して名古屋へ行くそうだ。 …

真夜中野マヤ
3週間前
28

小説「沖田くるみと11人のスター」

沖田宗四郎は十二人居た— 昭和の名優・沖田宗四郎(享年八十二)の孫で女優の沖田くるみが、…

真夜中野マヤ
1か月前
41

小説「夢見るくせっ毛ちゃん」

太郎の髪は細く飴色で、しかしその繊細な見た目からは想像も出来ないほど強いコシを持つ。くる…

真夜中野マヤ
2か月前
107

小説「女神の結婚」

「ねぇ、その髪さ、和式でウンコする時どうしてんの」 サチの髪は長い。いや長いどころの話で…

真夜中野マヤ
3か月前
30

小説「耳を喰む」

「耳を食べてほしい」と、すみれさんは言った。 退屈な飲み会をこっそり抜け出した夜。地下街…

真夜中野マヤ
4か月前
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小説「それ」

我が家には僕が物心ついた時から「それ」が在った。 母の「それ」は、トランプのジョーカーの…

真夜中野マヤ
4か月前
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ショートショート「空の布のハスカップ」

社長が「食べ飽きた」と言うので、有り難くいただいた金曜日のご褒美デザート、空の布のハスカップ。 なんたって空の布に包まれている。普通のハスカップは野ざらしで、固くてすっぱい。でも空の布に包まれたハスカップは、布の天気で味が全然違う、らしい。 晴れだったら香り高く。雨だったら、しっとりと。 夏だったら甘く熟れ、冬は冷たく凍る。 ここ数日の酷暑で、きっと甘く、それはそれは甘美に熟れているはずだ。 わたしはワクワクしながら自分の部屋に入る。 あまりにムッとした暑さに窓を開け、

小説「神の子の親友」

セカイがうちに来たのは僕が八歳、母さんが亡くなってすぐの頃だった。塞ぎ込む僕を見兼ねて父…

真夜中野マヤ
6か月前
4

小説「汗をかくアイスコーヒー」

「結婚するんだ」 わたしの隣で婚約者がそう言うと、目の前のコーイチは「おめでとう」と嬉し…

真夜中野マヤ
8か月前
10

有料小説「古稀来い、恋来い」

角 冴子、まもなく古稀である。そこそこ裕福な家に生まれた。同世代の友人には怒られるが、オ…

200
真夜中野マヤ
10か月前
2

有料小説「鍵穴チョコレイト」

ヨシくんとは別々のクラスだったけれど、家が近かったのでよく遊んだ。ヨシくんは背が低く色黒…

200
真夜中野マヤ
10か月前
3

小説「噂舞う夕餉」

H社の内定が決まったと言うと両親は泣いて喜んだ。僕の内定の噂はたちまち大学と近所に飛散し…

5

小説「走馬灯チャンネル」

「山本君って鈍臭いよね」 三年先輩の島崎あかりさんが、社内で僕にだけ何かとつっかかってく…

8

小説「イエス know 枕」

石田夫妻に子供は居ない。出来なかったのだ。 とはいえ子供が出来ないことに、いつまでも悩むふたりではない。ふたりしか居ないからこその暮らしに、結婚してから今の今まで、時間もお金も惜しみなく注いできた。 ふたりの寝室には所謂「イエスノー枕」が鎮座しており、白地に赤文字でYESとNOが裏表にプリントされている。石田夫の忘年会の景品か、石田嫁の女友達からの冷やかしか、既に記憶は定かではないが、その枕は結婚してからずっと、くまなくふたりを見てきた。涙でノーを濡らした夜も、イエスを抱え