『最強姉妹の末っ子』第23話
「アハハハハッ!! アーーーハーーー!!」
ムーニーは高らかに笑うと、パフパフとサイズの大きい靴を鳴らしながらティーマスの方に向かった。
「どう? そろそろ言う気になった?」
ムーニーがニヤニヤしながら聞くと、ティーマスがキッと首だけを動かして睨みつけてきた。
「黙れ! この略奪者!」
剣士の言葉にムーニーは首を傾げた。
「略奪者? 私のどこが?
私はお前らを人にさせたんだ。人と同じようにご飯を食べ、人と同じような快楽を得させたんだ!
略奪者じゃなくて、神様の間違いでしょ?」
「お前は我々の心を奪った! お前らに逆らえないように改造させた!
それに僕と王女様の身体を好きに調べやがって! それが神様のすることなのか?!」
「ぐぅ……」
図星なのか、ムーニーの顔が強張った。
「黙りなさい! 早く王女と職人達の居場所をいいなさい!」
すると、ティーロがフンッと鼻で笑った。
「……何がおかしいの」
ムーニーの声が鋭くなった。
ただならぬオーラがあの部屋を支配しているが、ティーロは気にせずに話を続けた。
「おかしいも何も。お前も俺達と似た者同士じゃないか?」
「似た者同士? どこが?」
「お前が職人達に命じて魔物の人形を作らせているのと同様に、お前も人の命令で魔物の人形を作らされている……立場が違うだけでシステムは同じだ」
ティーロの指摘にムーニーは呆れたような顔をして溜め息をついていた。
「あのね。それが商売なのよ。魔機を大量に売ればかなりのお金が入る。
それで材料などにあてれば、さらに強い魔機が作れる。そしたら、もっと注文が入って……」
「本心じゃないだろ」
ティーロの一言で、ムーニーの顔が石像みたいに固まっていた。
「はぁ? 何を言って……」
「お前はお姉さんに怯えているんだ。魔機もイヤイヤ作っているんだろ?
色々とお前の事は調べているんだ。
そしたら、結構な悪名高き姉がゴロゴロいる事に気づいてな……ある姉の中に、魔機を大量に所持して大暴れしている情報を掴んだ。
お前はそいつに命じて作っているんだろ?
金貨と引き換えに……」
「黙れ」
ムーニーの声色が明らかに今までと異なっていた。
その証拠にティーマスの顔がサァと青ざめていた。
だが、ティーロの喋りは終わらない。
「姉達はお前の技術力を高く評価しているように見せかけて、良いように利用しているんだ。自分の戦力を向上させるために……」
「黙れ、黙れ、黙れぇえええええ!!!!」
ムーニーがティーロの話をかき消すぐらい叫ぶと、持っていたフラスコを地面に叩きつけた。
バリンと激しく割れ、残っていたラムネがこぼれた。
この光景を前に見たことがある。
確かロリンが私に『最愛の妹』と変な事を言った時だった。
ムーニーはスイッチを押したのだろう、二人の椅子が再び起動していた。
「お前に何が分かる?! 部外者のくせに!
よく知りもしないで、身内のようにペラペラと……そういう奴に私達の家庭環境に口を挟まれるのが一番腹立つのよ!
クソ末っ子に言われるよりもなぁあああああああ!!!」
ムーニーが雄叫びにも近い怒声を浴びせた後、ティーマスとティーロの椅子がさらに火花を散っていくのが分かった。
激しくし過ぎたのだろう、ティーマスの髪が燃えている事に気づいた。
「あっつ、あつ!!」
ティーマスがは足をバタバタさせているが、ムーニーは気にも止めないといった様子だった。
「もう研究なんかやめよ! お前ら二人ともガラクタになっちゃえ!」
ムーニーはそう叫んで、二人の背後から何かが現れた。
ゆっくりとドラゴンの頭が見えたかと思えば、鋭い爪のある手足が見えた。
三ツ頭のドラゴンだと直感した私は覗くのを止めて、ドアを蹴破った。
「す、すえぷっ!」
ムーニーがすぐに私に気づいたので、顔面に蹴りを入れ、気絶させた。
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